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2015年6月 3日 水曜日

りんご病が流行しているようです。

りんご病とは?
伝染性紅斑のことです。ヒトパルボウィルスB19の感染による感染症です。

4〜5年毎に流行すると言われておりますが、昨年秋頃から本邦では感染者が増えています。


ヒトパルボウィルスB19とは?
1975年に英国の血液センターで、供血者の血液中の肝炎ウィルスのスクリーニング中に、肝炎ウィルスとは異なる新たなウィルスが発見されました。この5年後に、このウィルスと伝染性紅斑関係が判明しました。
パルボウイルスは自然界に存在するウイルスの中でも最も小さい部類に入り、ラテン語で「小さい」を意味する「 parvus 」から命名されています。
B19とは実はその血液センターでのロット番号でした。それを名前につけています。つまりヒトパルボウイルスはB19しかありません。B18とかA12など他の番号のついたパルボウィルスはいません。

ちなみにイヌパルボウィルスというウィルスもいますが、パルボウイルスは特定の種の動物と関連性があるので、自身と関連性のある種の動物にしか感染しません。つまり、イヌパルボウィルスはヒトには感染しません。


ヒトパルボウィルスB19に感染した場合の症状は?
小児期に感染することが多いですが、感染したことがない方は、年齢や性別に関係なく感染する可能性があります。
はっきりした症状がない不顕性感染もあり、弱いと誤解されていますが、患者と接触すれば容易に感染します。

典型的な経過では、感染後約7〜10日の潜伏期間を経て軽度の発熱、関節痛(四肢や腰の軽度痛みなど)といったインフルエンザのような症状や、成人では皮膚のかゆみを自覚します。
そのあと約一週間後に発疹を認めます。発疹は、小児ではりんご病と言われるように特徴的でありますが、成人では40%程度であり、不定形なものが多いです。



抗体保有率は?
日本人のヒトパルボウィルスB19に対する抗体保有率は、55〜64%です。
感染歴がある人は、再感染しないと言われています。


妊娠中に感染したらどうなるの?
理論上、日本人成人でヒトパルボウィルスB19に感染する可能性がある方は約3〜4割にいます。
しかし、実際妊娠中感染するのは、1.5%(流行時期で13%程度)と言われています。
そのうち35%以下に経胎盤感染します。

妊娠初期に感染すると流産する可能性あります(自然流産のうち、2.4%がヒトパルボウィルスB19感染が原因という報告がありました。)
流産を免れても胎児水腫(4〜12%)を生じたり、子宮内胎児死亡(5〜10%)をきたすことがあります。
胎児奇形との関連はあまり言われていません。

胎児水腫とは何ですか?
腹水や胸水の貯留や皮下浮腫などを生じることを言います。
つまり、赤ちゃんが全身"むくむ"状態になることです。






胎児水腫は、ヒトパルボウィルスB19が①胎児赤血球に感染し、破壊することによる貧血、②心臓に感染し、心筋炎を生ずること、③肝臓に感染し、肝障害を引き起こすことにより生じます。

胎児水腫発症時期は、平均妊娠21週(妊娠16週1日~妊娠23週6日)です。
お母さんが感染してから胎児水腫が発生するまで、約2ヶ月(14〜90日)かかります。
つまり時間がたってから判明します。

お腹の中の赤ちゃんに感染した場合の治療は?
自然経過で済む場合もあります。2-3割程度と言われています。
重度の貧血の場合は、胎児輸血をする場合もあります。

胎児輸血に関して、日本胎児治療グループのホームページがあります(http://fetusjapan.jp/method/method-99)。

予後は?
ヒトパルボウィルスB19感染し胎児水腫を生じて、その後、程度は様々ですが精神発達遅滞が生じる可能性が少し(11〜21%)あるようです。


対策は?
残念ながら予防接種はありません。

ヒトパルボウィルスB19の感染力がもっとも強いのは紅斑出現時ではなく、その1週間以上前のウイルス血症の時期であり、つまり紅斑が出る前に既に他者へ感染している可能性があり、実際上感染対策はむずかしいと思われます。

お腹の中の赤ちゃんに関しては、注意深く、超音波検査を行っていき、変化がないか確認ししていきます。
ご心配であれば、お母さんのウィルスの抗体の有無を調べることもできます。
(急性期にみられる抗体は約2ヶ月間は高めになります。)

東京都健康安全研究センターから配布しているパンフレット(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/fifth-disease/hitokuchi-joho.pdf)もあります。

咳やくしゃみなどによって感染するので、手洗いやマスク着用が大切だと思います。
また周囲で患者発生がみられる場合、妊娠中の方は、できるだけ患者との接触を避けるよう注意してください。

院長 今野 秀洋

(参考文献)
1.布上董;母子感染の現状と予防 パルボウィルスB19;Neonatl Care ;8秋増刊;
118-123;1995
2. 布上董;パルボウィルスB19と母子感染;小児内科;27;1448-1452;1995;
3. 布上董;出世前診断と胎児新生児管理の実際 先天感染 5)パルボウィルス;
NEW MOOK 小児科;8,177-181;1995
4.布上董;伝染性紅斑(パルボウィルスB19感染症);総合臨床;52増刊;198-203;2003
5.布上董;パルボウィルスB19感染症(伝染性紅斑);小児科診療;68;11;2228-2233;2005
6.布上董;パルボウィルスB19胎児感染症 10年間の検索;臨床とウイルス;26;129-135;1998
7.松永泰子;伝染性紅斑とヒトパルボウィルスB19;臨床とウイルス;23;99-102;1995
8.永井洋子;当科で 2 年間に経験した成人ヒトパルボウイルス B19 感染症 15 症例の検討
;感染症学雑誌;83;45-51;2009.01
9. Dijkmans, et.al:Parvovirus B19 in pregnancy: prenatal diagnosis
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11. Giorgio E,et al.;Parvovirus B19 during pregnancy: a review.; J Prenat Med;4;63-66;2010
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13.De Jong EP,et al.;Intrauterine transfusion for parvovirus B19 infection: long-term neurodevelopmental outcome.;Am J Obstet Gynecol;206;204.e1-5;2012
14. Lassen J,et al.;Parvovirus B19 infection in pregnancy and subsequent morbidity and mortality in offspring;Int J Epidemiol;42;1070-1076;2013
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16. Nagel HT,et al.;Long-term outcome after fetal transfusion for hydrops associated with parvovirus B19 infection;Obstet Gynecol;109;42-47;2007


投稿者 佐野産婦人科医院

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