スタッフブログ

2017年3月29日 水曜日

A群溶血性連鎖球菌は、B群溶血性連鎖球菌とは違うのですか?

A群溶血性連鎖球菌(GAS)は、咽頭炎を主な症状とする小児に多い感染症の一つです。
GASは稀ですが、劇症的に全身性感染となり、死に至ることもあります。
「人食いバクテリア」という驚くような名称で報道されたこともあるので、ご存知の方も
いらっしゃるのではないでしょうか。

妊娠中の産道感染の原因となるB群溶血性連鎖球菌(GBS)(http://www.sanolc.com/blog/2014/07/bgbs-938953.html)とは全く異なる菌です。

妊娠していますが、GASは大丈夫ですか?

妊娠中も唾液や咳を介してGASに感染することがあります。
小児同様に多くは扁桃腺の腫れや発熱で済むのですが、稀に劇症型GAS感染症となることがあります。

妊娠中の劇症型GAS感染症とは?

妊娠・産褥期の血液中に入ったGASは、子宮筋層炎や敗血症、その後ショック、DICを引き起こすことが稀ですが、あります。

妊娠中に劇症型GAS感染症に感染した55人を調べた報告によると

38度以上の発熱 94%
上気道症状    40%  
下痢は吐き気、嘔吐などの消化器症状 49%
                                 (インフルエンザ感染に似ている症状なので注意が必要です。)
早期発症のショック症状 91%

常位胎盤早期剥離のような強い子宮収縮 73%

ベビーの死亡率 66%
お母さんの死亡率 58%    と極めて高いです。


日本では、年間約50人の妊婦さんが亡くなっているのですが、そのうち1〜2人がこの劇症型GAS感染症が原因ではないかと考えられています。


季節的でいうと3, 4月頃が多く、また経産婦の感染が多く、妊娠31週から40週が特に多いようです。









経産婦に劇症型GAS感染症が多いのは、上のお子さんから感染を受けやすいからかもしれません。





劇症型GAS感染症を予防するにはどうすればよいのでしょうか?

これといった有効な方法はありませんが、他の感染症の予防と同じように、うがいや手洗いや
マスク着用が勧められると考えられています。

特に経産婦では、上のお子さんの手洗い、うがいにも注意を払うことを勧めたいと思います。








院長 今野 秀洋

(参考文献)
1. Yamada T, et al; Invasive group A streptococcal infection in pregnancy ; J Infection; 60 ; 417-24 ; 2010
2.  板倉 敦夫 ;【妊娠と感染症-外来で聞かれてどう説明する?】 GAS/GBS ; 産科と婦人科  ; 83 ; 9 ; 1010-1014 ; 2016

3. 冨士田 祥子ら ; 持続的血液濾過透析(CHDF)により母体を救命し得た劇症型A群溶連菌感染症(分娩型)の1例 ; 現代産婦人科 ; 65; 1 ; 51-56 ; 2016
4. 熊澤理紗 ; 妊娠中期に発症した重症敗血症の一例 ; 静岡産婦人科学会雑誌 ; 5 ; 1 ; 41-46 ; 2016
5. 楠目 晃子ら ; 臨床経過を振り返り劇症型A群溶連菌感染症分娩型の可能性が考えられた1例 ; 日本周産期・新生児医学会雑誌 ; 50 ; 3 ;1009-1014 ; 2014.
6. 村上 幸祐ら ; 妊娠中期に発症したA群レンサ球菌感染症の1例 ; 倉敷中央病院年報 ; 76 ; 121-124 ; 2014
7. 村上 幸祐ら ; 【CAUTION!臨床検査値の落とし穴】 (CASE 11)A群溶連菌(GAS)敗血症と流産 発熱と腹痛を初発とした妊婦(16週) ; 日本医事新報 ; 4692 ; 42-45 ; 2014


投稿者 佐野産婦人科医院

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