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2018.11.25更新

成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:ATL)とは、ヒトT細胞白血病ウィルス1型(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)によって発生する予後不良な白血病です。

 

40歳以上の成人に発症し、発症平均年齢は67歳です。

 

我が国では九州・沖縄地方を含む南西日本に特に多く見られましたが、最近の調査では全国に広がっているようです。

 

残念ながら日本は先進国の中で唯一、HTLV-1の浸淫国です。
ちなみに日本以外では、カリブ海沿岸諸国、南米、中央アフリカ、アフリカ西海岸などです。

 

 

HTLV-1は、HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy: HAM)およびHTLV-1ぶどう膜炎(HTLV-1 uveitis: HU)などの疾患も引き起こします。

 

 


①成人T細胞白血病(ATL)
HTLV-1キャリアの方の生涯発症率は約5%です。
 ATLは、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型とタイプがありますが、生存期間中央値がそれぞれ、8.3ヶ月、10.6ヶ月、31.5ヶ月、55ヶ月といずれも予後不良です。

治療方法は、多剤併用化学療法を行います。また、年齢や全身状態により同種造血幹細胞移植を行います。

 

 

②HTLV-1関連脊髄症(HAM)
発症年齢は30〜50歳、平均40歳です。
HTLV-1キャリアの方の生涯発症率は約0.3%です。
進行性の両下肢麻痺、排尿排便障害を生じます。
抗炎症作用や免疫制御による様々な治療法が試みられています。
副腎皮質ステロイドが効果があると言われていますが、長期使用による感染症の誘発、糖尿病の悪化、骨粗鬆症による骨折など副作用が問題となるようです。

 

 

③HTLV-1ぶどう膜炎(HU)
多くは成人発症で、飛蚊症や霧視や眼の充血あるいは視力低下が生じます。
軽度の場合は自然治癒することもありますが、中等度以上の炎症の場合は副腎皮質ステロイドの点眼と内服治療を行います。

 

 


HTLV-1はどのように感染するのですか?

HTLV-1は感染力が弱いウィルスです。
乾燥、熱、洗剤で簡単に死にます。
一般的な日常生活でうつることはありません。
もちろん咳やくしゃみからうつることもありません。

しかし、主に以下の経路で感染すると考えられています。

 

 

①母乳によるの感染
主に母子感染、特に母乳からの感染と考えられています。これが一番多いです。

 母乳哺育1

 

 

母乳哺育2


長期間の母乳栄養により感染の可能性が上昇します。

 

(HTLV-1キャリアかどうか妊娠中にどの施設でもスクリーニング検査を行っています。)

 

 

②性行為による感染
多くは男性から女性に起こり、全キャリアの20%と言われています。

ちなみに1992年のペルーの報告によると、地域差はありますが性的な仕事に従事している方を調査した研究では、HTLV-1の感染率は3.2〜21.8%だったようです。

 

 


③輸血による感染
現在、日本では献血時にチェックが行われているのであまり心配はないと思います。

 

 

HTLV-1陽性の妊婦さんから赤ちゃんへの感染予防の対応は?

HTLV-1の母子感染の経路は、ほとんどが母乳からの感染です。
そのため母乳栄養の遮断が母子感染予防法です。

 

 

母乳感染を減らす方法として
①完全遮断、②短期母乳栄養、③凍結母乳栄養  があります。

 

原則として①が推奨されます。
しかしながら、完全母乳遮断でも感染例があり、母乳以外の感染経路も存在すると考えられています。
また、HTLV-1キャリアの方のATLの生涯発症率は約5%であり、HAMも3万人に1人と非常に少ないので、母乳を止めることのデメリットも考慮するという考えもあります。

 

母乳哺育3

 


分娩後の赤ちゃんの検査はいつですか?

今までの研究から、生後2歳時に検査をすればHTLV-1に感染しているかどうかわかるようになっています。

 

 

 

 

まとめると
HTLV-1は主に母乳から母子感染するウィルスであり、将来白血病になる可能性があります。
母乳哺育のメリットもありますが、感染予防を重視すると、母乳をやめることが現時点では一番推奨される方法だと思います。

 

繰り返しますが

HTLV-1は感染力が弱いウィルスです。
一般的な日常生活でうつることはありません。

 


このような情報があります。

HTLV-1情報サービス
http://htlv1joho.org/index.html

HTLV-1キャリアのみなさまへ、というパンフレットもあります。
http://htlv1joho.org/medical/medical_material.html


皆さんがHTLV-1に関する正しい知識を持つことを願っております。

院長 今野 秀洋

 

 


(参考文献)
1.伊藤 孝一:【産婦人科医が身につけたい新生児の診察法】 母児感染:周産期医学:48:8:991-994:2018
2.斎藤滋:【感染症に強くなる】 HTLV-1母子感染予防対策の変更点:産科と婦人科:85:8:928-932:2018
3.中西 美佐緒:【エキスパートに聞く 合併症妊娠のすべて-妊娠前からのトータルケア】 HIV、HTLV-1感染:産科と婦人科:85:5:557-561:2018
4.木内 英:【母子感染の検査診断】 母子感染で問題となるウイルス感染症 レトロウイルス感染症:臨床検査:61:11:1385-1392:2017
5.石塚 賢治:【HTLV-1関連疾患の診断と治療の進歩】 成人T細胞白血病の診断:日本内科学会誌:106:7:1397-1403:2017
6.斎藤滋:HTLV-1の母子感染予防:日本内か学会誌:106:1391-1396:2017
7.板橋家頭夫:HTLV-1母子感染:小児内科:49:11:1681-1685:2017
8.時田 章史ら:HTLV-1母子感染対策の現状;日本小医会報:53:94-96:2017
9.時田 章史:HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウィルス1型)感染症とその現状:チャイルドヘルス:20:7:520-522:2017
10.鎌田 勇平ら:HTLV-1と成人T細胞白血病・リンパ腫:臨床と研究:95:2:159-164:2018
11.日本産婦人科学会:産科診療ガイドライン 産科編2017
12.Hirata M, et al.:The effects of breastfeeding and presence of antibody to p40tax protein of human T cell lymphotropic virus type-I on mother to child transmission.: Int J Epidemiol:21:5:989-94:1992
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14.Ando Y ,et al.:Long-term follow-up study of HTLV-I infection in bottle-fed children born to seropositive mothers: J Infect:46:1:9-11:2003
15.Wingnall FS,et al:Sexual transmission of human T-lymphotropic virus type I in Peruvian prostitutes:J Med Virol:38:1:44-8:1992
16.Okochi K, et al.:A retrospective study on transmission of adult T cell leukemia virus by blood transfusion: seroconversion in recipients: Vox Sang:46:5:245-53:1984
17.HTLV-1母子感染予防対策マニュアル:厚生労働省研究費補助金・特別研究事業「HTLV-1の母子感染予防に関する研究」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken16/dl/06.pdf

投稿者: 佐野産婦人科医院

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