タバコは、発がん性物質を含み、また高血圧や心疾患とも関係があるとも言われています。
日本の女性の喫煙率は、20代15.1%、30代16.0%、40代16.8%と少なくないようです。
妊娠中の喫煙率は、2.9%〜7%と言われています。
妊娠に影響が出ますか?
妊娠中に喫煙を続けた場合、妊娠に色々な影響が出ます。
1.不妊症
妊娠しにくくなると言われています。(相対危険度1.6(95% 信頼期間 1.34-1.91))
2.子宮外妊娠:(相対危険度2.2(95% 信頼期間 1.3-3.6))
3.自然流産
1日20本以上喫煙していると、非喫煙者と比べて自然流産の発生率は1.7倍になると推定されます。
4.早産
早産のリスクはオッズ比1.2〜1.6で、特に早期破水の頻度が多く、32週未満の早産が増えます。
5.前置胎盤:(相対危険度2.3(95% 信頼期間 1.5-3.5))
6.常位胎盤早期剥離:(相対危険度1.37(95% 信頼期間 1.10-1.72))
赤ちゃんにも影響が出ますか?
胎児にも影響が出ます。胎児タバコ症候群という言葉もあるようです。
1.先天性奇形
口唇口蓋裂のリスク比が1.2〜1.3で喫煙本数が増えるほどリスクは増えます。
また、先天性心疾患や四肢欠損、指趾欠損、内反足、顔面欠損、消化管奇形、鎖肛、腹壁破裂などの先天性奇形も増えます。
2.低出生体重児
在胎週数に比して体重は軽くなる傾向があります(オッズ比1.51〜2.9)。
母親のタバコ1本/日あたり、出生体重は10〜12g減少します。
3.死産
在胎20週以上の死亡のリスク比は1.2〜1.8であり、喫煙本数に依存するようです。
生まれてからの影響はありますか?
1. 乳幼児突然死症候群(SIDS)
リスク比は2.0〜3.0であり、1日10本あたり4%の死亡の増加を認めます。
2.気管支喘息
オッズ比1.8であり、これも喫煙本数に依存するようです。
3. 肥満
低出生体重で生まれますが、その後体重は急激にキャッチアップがみられ、小学生4〜5年生の時点で平均体重が増加し、思春期になると肥満になります(オッズ比1.6)。
そしてメタボリックシンドロームになると言われています。
4.注意欠損多動性症候群(ADHD)
オッズ比2.4
乳児期から感情や行動障害や集中力の欠如が見られます。
5. IQの低下
1日10本以上喫煙した場合、7歳と11歳の時点で、非喫煙者の子供と比べて3か月から5か月程度の読書、数学などの能力の遅れがみられます。
夫が喫煙してますが大丈夫ですか?
全妊婦のうち53%が受動喫煙していたという報告もあります。
受動喫煙も影響があるようです。
受動喫煙により、児の出生体重の減少や低出生体重のリスクの増加が認められました。
妊娠中にパートナーの1日当たりの喫煙本数が1本増えるごとに、出生体重が6.1gずつ減少します。
また早産のリスクも増えます。
父親が喫煙している家庭では、母親の喫煙率も上昇します。
また、産後の母親の再喫煙を促すことも明らかになっています。
まとめると
妊娠中の喫煙は子供にとって良いことはありません。
妊娠を考えている人は、子供のためにも夫婦揃って喫煙をやめるようにしましょう。
院長 今野 秀洋
(参考文献)
1. 木庭 有美子ら;妊娠前および妊娠期女性の喫煙状況と生活習慣・食生活との関連;比治山大学紀要 ;21号;221-231;2015
2. 小林 澄貴ら;胎児期の母の受動喫煙と児の出生体重に関する最近の研究動向;北海道公衆衛生学雑誌 ;28巻2号 ;37-48;2015
3. 横山 美江ら;母親の喫煙による子どもの出生時および出生後の身体計測値への影響 4ヵ月児健康診査のデータベースの分析から;日本看護科学会誌;34巻 ;89-197;2014
4. 鈴木 孝太ら妊娠中の喫煙が児の体格の変化に与える影響 母親の年齢別マルチレベル解析;日本小児禁煙研究会雑誌;4巻2号 ;114-120;2014
5. 井埜 利博;胎児性タバコ症候群の診断基準;日本小児禁煙研究会雑誌;4巻2号;75-81;2014
6. 井埜 利博;喫煙妊婦から生まれた児の生活習慣病;日本小児禁煙研究会雑誌;3巻2号;40-50;2013
7. 小西 郁生;ママ、たばこを吸わないで!産婦人科の立場から; 禁煙科学 ;7巻5号 ;1-9;2013
8. 川端 正清;【禁煙の推進と医師の役割】 妊婦の喫煙と胎児への影響;日本医師会雑誌 ;141巻9号 ;1963-1966;2012
9. 豊島 泰子;妊娠女性の喫煙による健康被害 胎児や新生児に対する影響も含めて; 聖マリア学院大学紀要;3巻;101-103;2012
2016.08.14更新
妊娠中の喫煙の影響について(受動喫煙も含めて)
投稿者:
2016.08.08更新
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)が流行っているようです。
今年は流行性耳下腺炎の感染数が、ここ数年で一番多いようです。
以前のブログでもお話ししましたが(http://www.sanolc.com/blog/2015/12/post-71-1237172.html)、妊娠初期に流行性耳下腺炎に罹患すると、自然流産が増加するという報告があります。(流産や早産率は変わらないという報告もあります。)
流行性耳下腺炎に対する抗体を持たない妊婦は、2割以上いると言われています。
おたふく風邪感染者との濃厚な接触はなるべく避け、手洗い・うがいに心がけるようにしてください。
院長 今野 秀洋
投稿者:
2016.08.07更新
妊娠を考えている方にお勧めの本があります。
妊娠を考えている方に読んでほしいと思う本が出ました。
浅田義正さん、河合蘭さん著「不妊治療を考えたら読む本」です。
本著によると、日本は、出産に至らなかった不妊治療件数が、世界1位だそうです。
これは、日本の不妊に対する医療技術が悪いのではありません。
なかなか妊娠しなくても、「そのうち、妊娠するでしょう。」と思い、年齢が高くなるまで治療を考えず、治療開始年齢が遅くなることと、「薬の使用はできるだけ控えたい。」と自然療法に時間をかけすぎて、すでに妊娠できる卵子が少なくなっていることに原因があるようです。
少し専門的な内容もありますが、妊娠に関する皆さんの感覚と実際とのズレに対する理解や、治療に対する疑問もわかるようになるのではないかと思いました。
当院ではこのような高度な不妊治療はできませんが、妊娠に至らないため、受診される方がたくさん来院されます。困っている方はきっと多いのだと思います。
ぜひ手にとってご覧になってください。
院長 今野 秀洋
投稿者:
SEARCH
ARCHIVE
- 2020年11月 (2)
- 2020年10月 (2)
- 2020年09月 (1)
- 2020年08月 (1)
- 2020年06月 (2)
- 2020年05月 (1)
- 2020年04月 (2)
- 2020年03月 (6)
- 2020年01月 (2)
- 2019年12月 (2)
- 2019年11月 (2)
- 2019年10月 (2)
- 2019年09月 (2)
- 2019年07月 (2)
- 2019年05月 (1)
- 2019年04月 (3)
- 2019年03月 (5)
- 2019年02月 (3)
- 2018年11月 (2)
- 2018年10月 (2)
- 2018年09月 (6)
- 2018年08月 (5)
- 2018年07月 (1)
- 2018年06月 (1)
- 2018年05月 (4)
- 2018年04月 (6)
- 2018年03月 (2)
- 2018年02月 (5)
- 2018年01月 (1)
- 2017年12月 (7)
- 2017年11月 (3)
- 2017年10月 (5)
- 2017年09月 (7)
- 2017年08月 (3)
- 2017年07月 (5)
- 2017年06月 (6)
- 2017年05月 (2)
- 2017年04月 (3)
- 2017年03月 (5)
- 2017年02月 (6)
- 2017年01月 (6)
- 2016年12月 (3)
- 2016年11月 (2)
- 2016年10月 (4)
- 2016年09月 (2)
- 2016年08月 (3)
- 2016年07月 (1)
- 2016年06月 (3)
- 2016年05月 (2)
- 2016年04月 (3)
- 2016年03月 (1)
- 2016年02月 (4)
- 2016年01月 (3)
- 2015年12月 (6)
- 2015年11月 (2)
- 2015年10月 (2)
- 2015年09月 (2)
- 2015年08月 (1)
- 2015年07月 (2)
- 2015年06月 (4)
- 2015年05月 (3)
- 2015年03月 (1)
- 2015年02月 (3)
- 2015年01月 (2)
- 2014年12月 (1)
- 2014年11月 (5)
- 2014年10月 (4)
- 2014年09月 (6)
- 2014年08月 (3)
- 2014年07月 (3)
- 2014年06月 (4)
- 2014年05月 (5)
- 2014年04月 (4)
- 2014年03月 (5)
- 2014年02月 (4)
- 2014年01月 (5)
- 2013年12月 (4)
- 2013年11月 (7)
- 2013年10月 (6)
- 2013年09月 (6)