スタッフブログ

2019.03.03更新

この度、院内で母体救命の講習会を開催していただきました。

我々は、母体救命を必要とするケースが起こらないことように、いくつかの予防策を準備しております。

 

母体救命 

 

 

しかしながら万が一起こった際に迅速な対応できるよう、今回改めて勉強をする機会を設けました。

 

 

今回習得したことが必要としないことを願いつつ、安全対策を怠らないようにしていきたいと考えております。

投稿者: 佐野産婦人科医院

2018.11.25更新

成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:ATL)とは、ヒトT細胞白血病ウィルス1型(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)によって発生する予後不良な白血病です。

 

40歳以上の成人に発症し、発症平均年齢は67歳です。

 

我が国では九州・沖縄地方を含む南西日本に特に多く見られましたが、最近の調査では全国に広がっているようです。

 

残念ながら日本は先進国の中で唯一、HTLV-1の浸淫国です。
ちなみに日本以外では、カリブ海沿岸諸国、南米、中央アフリカ、アフリカ西海岸などです。

 

 

HTLV-1は、HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy: HAM)およびHTLV-1ぶどう膜炎(HTLV-1 uveitis: HU)などの疾患も引き起こします。

 

 


①成人T細胞白血病(ATL)
HTLV-1キャリアの方の生涯発症率は約5%です。
 ATLは、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型とタイプがありますが、生存期間中央値がそれぞれ、8.3ヶ月、10.6ヶ月、31.5ヶ月、55ヶ月といずれも予後不良です。

治療方法は、多剤併用化学療法を行います。また、年齢や全身状態により同種造血幹細胞移植を行います。

 

 

②HTLV-1関連脊髄症(HAM)
発症年齢は30〜50歳、平均40歳です。
HTLV-1キャリアの方の生涯発症率は約0.3%です。
進行性の両下肢麻痺、排尿排便障害を生じます。
抗炎症作用や免疫制御による様々な治療法が試みられています。
副腎皮質ステロイドが効果があると言われていますが、長期使用による感染症の誘発、糖尿病の悪化、骨粗鬆症による骨折など副作用が問題となるようです。

 

 

③HTLV-1ぶどう膜炎(HU)
多くは成人発症で、飛蚊症や霧視や眼の充血あるいは視力低下が生じます。
軽度の場合は自然治癒することもありますが、中等度以上の炎症の場合は副腎皮質ステロイドの点眼と内服治療を行います。

 

 


HTLV-1はどのように感染するのですか?

HTLV-1は感染力が弱いウィルスです。
乾燥、熱、洗剤で簡単に死にます。
一般的な日常生活でうつることはありません。
もちろん咳やくしゃみからうつることもありません。

しかし、主に以下の経路で感染すると考えられています。

 

 

①母乳によるの感染
主に母子感染、特に母乳からの感染と考えられています。これが一番多いです。

 母乳哺育1

 

 

母乳哺育2


長期間の母乳栄養により感染の可能性が上昇します。

 

(HTLV-1キャリアかどうか妊娠中にどの施設でもスクリーニング検査を行っています。)

 

 

②性行為による感染
多くは男性から女性に起こり、全キャリアの20%と言われています。

ちなみに1992年のペルーの報告によると、地域差はありますが性的な仕事に従事している方を調査した研究では、HTLV-1の感染率は3.2〜21.8%だったようです。

 

 


③輸血による感染
現在、日本では献血時にチェックが行われているのであまり心配はないと思います。

 

 

HTLV-1陽性の妊婦さんから赤ちゃんへの感染予防の対応は?

HTLV-1の母子感染の経路は、ほとんどが母乳からの感染です。
そのため母乳栄養の遮断が母子感染予防法です。

 

 

母乳感染を減らす方法として
①完全遮断、②短期母乳栄養、③凍結母乳栄養  があります。

 

原則として①が推奨されます。
しかしながら、完全母乳遮断でも感染例があり、母乳以外の感染経路も存在すると考えられています。
また、HTLV-1キャリアの方のATLの生涯発症率は約5%であり、HAMも3万人に1人と非常に少ないので、母乳を止めることのデメリットも考慮するという考えもあります。

 

母乳哺育3

 


分娩後の赤ちゃんの検査はいつですか?

今までの研究から、生後2歳時に検査をすればHTLV-1に感染しているかどうかわかるようになっています。

 

 

 

 

まとめると
HTLV-1は主に母乳から母子感染するウィルスであり、将来白血病になる可能性があります。
母乳哺育のメリットもありますが、感染予防を重視すると、母乳をやめることが現時点では一番推奨される方法だと思います。

 

繰り返しますが

HTLV-1は感染力が弱いウィルスです。
一般的な日常生活でうつることはありません。

 


このような情報があります。

HTLV-1情報サービス
http://htlv1joho.org/index.html

HTLV-1キャリアのみなさまへ、というパンフレットもあります。
http://htlv1joho.org/medical/medical_material.html


皆さんがHTLV-1に関する正しい知識を持つことを願っております。

院長 今野 秀洋

 

 


(参考文献)
1.伊藤 孝一:【産婦人科医が身につけたい新生児の診察法】 母児感染:周産期医学:48:8:991-994:2018
2.斎藤滋:【感染症に強くなる】 HTLV-1母子感染予防対策の変更点:産科と婦人科:85:8:928-932:2018
3.中西 美佐緒:【エキスパートに聞く 合併症妊娠のすべて-妊娠前からのトータルケア】 HIV、HTLV-1感染:産科と婦人科:85:5:557-561:2018
4.木内 英:【母子感染の検査診断】 母子感染で問題となるウイルス感染症 レトロウイルス感染症:臨床検査:61:11:1385-1392:2017
5.石塚 賢治:【HTLV-1関連疾患の診断と治療の進歩】 成人T細胞白血病の診断:日本内科学会誌:106:7:1397-1403:2017
6.斎藤滋:HTLV-1の母子感染予防:日本内か学会誌:106:1391-1396:2017
7.板橋家頭夫:HTLV-1母子感染:小児内科:49:11:1681-1685:2017
8.時田 章史ら:HTLV-1母子感染対策の現状;日本小医会報:53:94-96:2017
9.時田 章史:HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウィルス1型)感染症とその現状:チャイルドヘルス:20:7:520-522:2017
10.鎌田 勇平ら:HTLV-1と成人T細胞白血病・リンパ腫:臨床と研究:95:2:159-164:2018
11.日本産婦人科学会:産科診療ガイドライン 産科編2017
12.Hirata M, et al.:The effects of breastfeeding and presence of antibody to p40tax protein of human T cell lymphotropic virus type-I on mother to child transmission.: Int J Epidemiol:21:5:989-94:1992
13.Toji Y, et al:Prevention of mother-to-child transmission of human T-lymphotropic virus type-I: Pediatrics:86:1:11-71:1990
14.Ando Y ,et al.:Long-term follow-up study of HTLV-I infection in bottle-fed children born to seropositive mothers: J Infect:46:1:9-11:2003
15.Wingnall FS,et al:Sexual transmission of human T-lymphotropic virus type I in Peruvian prostitutes:J Med Virol:38:1:44-8:1992
16.Okochi K, et al.:A retrospective study on transmission of adult T cell leukemia virus by blood transfusion: seroconversion in recipients: Vox Sang:46:5:245-53:1984
17.HTLV-1母子感染予防対策マニュアル:厚生労働省研究費補助金・特別研究事業「HTLV-1の母子感染予防に関する研究」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken16/dl/06.pdf

投稿者: 佐野産婦人科医院

2018.09.27更新

すべての妊婦さんに対して、日本、米国におけるガイドラインでは、インフルエンザワクチン接種を推奨しております。

 

診療時間内は、いつでも接種が可能です。

 

接種回数1回 3500円

 

当院では、妊婦さんがより安心して頂けるように防腐剤の入っていないワクチンを準備しております。 

 

妊婦さんのインフルエンザワクチンについて以前書いたブログです。
http://www.sanolc.com/blog/2017/09/102-521387.html

 

 

是非、おなかの中の赤ちゃんの為にも予防しましょう。

 

院長 今野秀洋

投稿者: 佐野産婦人科医院

2018.09.06更新

 

幼少期の喘息のリスクファクターとして受動喫煙、アレルギー原因物質の暴露などが、報告されています。

今回、国立成育医療研究センターの小川浩平先生の調べたところ、妊娠初期に野菜をしっかりと摂取したお母さんから生まれた子の方が、2歳時の喘息症状が減るということがわかりました。

国立成育医療研究センターでは2010年から2013年の期間、妊娠女性を登録し女性とその児を継続的に追跡調査しております。
このデータベースより、対象となった511人を総野菜の摂取量の多い〜少ないで5群に分け、それぞれの群における喘息症状の発症率を比較しました。
また総野菜だけではなく、葉野菜、アブラナ科野菜、緑黄色野菜などのグループ別で対象者を5群に分け、追加で検討しました。

 

 

(今回の研究でわかったこと)

①妊娠初期の総野菜摂取量が多いほど、2歳の児の喘息症状発症率は低くなっていました。

 

最も総野菜を摂取している集団は最も総野菜を摂取していない集団と比較して喘息症状発症のオッズ比が0.59(0.34-1.03)でした。

 

 

②同様に妊娠初期の葉野菜(ほうれん草、ネギ、ニラ、小松菜、春菊など)の摂取量が多いほど2歳の児の喘息症状発症率は低くなっていました。


最も葉野菜を摂取している集団は最も摂取していない集団と比較して喘息症状発症のオッズ比が0.47(0.25-0.87)でした。

小松菜

 

③また、同様に妊娠初期のアブラナ科野菜(キャベツ、大根、白菜、小松菜、ブロッコリーなど)
の摂取量が多いほど2歳の児の喘息症状発症率は低くなっていました。

 

最もアブラナ科野菜を摂取している集団は最も摂取していない集団と比較して喘息症状発症のオッズ比が0.48(0.26-0.89)でした。

キャベツ

しかしながら、今回の研究で、妊娠初期に葉酸を多く摂取したからといって(葉酸は葉野菜に多く含まれます)、喘息症状発症が少なくなるようではないということもわかりました。

また今回の研究では、妊娠中期の野菜摂取と喘息の関係も調べていますが、関係はみられませんでした。(妊娠中期に野菜を摂取する必要はないという意味ではありません。)

 

(まとめると)
妊娠初期に、野菜(特に葉野菜やアブラナ科野菜)を摂取した方が、子供が喘息になりにくい可能性があります。
妊娠初期に呼吸器官が形成されるので、この時期に野菜に含まれる何らかの栄養素が関わっている可能性があります。
もちろん、小児喘息の発症原因は他にもいくつかの要素も考えられるので、野菜を沢山摂取したら、すべて予防できるというわけでもありません。

 

しかしながら、妊婦さんが食べるものが、おなかの中の赤ちゃんに影響する可能性はありますので、お母さんは食べることに少し気をつけるようにするとよいのではないでしょうか。

(参考文献)
Ogawa K et al.; Maternal vegetable intake in early pregnancy and wheeze in offspring at the age of 2 years. ; Eur J Clin Nutr ;72(5):761-771; 2018

 

 

 

 

 

 

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2018.05.16更新

最近、妊娠中の運動についての質問が多いです。

「妊娠前からテニスしていたのですが、継続してもいいですか?」、「体重増加が著しいので、運動しようと思います。」、「妊娠を契機にフラダンスを始めてもいいですか?」など。


今回は、妊娠中の運動についてお話ししたいと思います。

 

妊娠中に運動しても大丈夫ですか?

運動pic1

 

 正常な妊娠経過である健康な女性であれば、アメリカ産婦人科学会は「妊娠中の運動は、リスク最小限で有益である」という見解を出しています。

日本臨床スポーツ医会は、「妊婦スポーツは母体の健康の維持・増進などを目的として行われるものである。したがって、妊娠中のスポーツ活動により、母児に何らかの異常が生じては本末転倒である。そこで、母体と胎児に対する十分な安全管理による妊婦スポーツの実施が必要である。」と指針の中で述べています。

 

順調な経過で妊娠による何らかのリスクがなければ、医療管理やサポートがあれば運動することはできます。

 


妊娠中の運動するといいことありますか?

妊娠中に運動することによるメリットはいくつかあります。

①母体の体力の向上ができる
②母体の体重増加を(ある程度)抑制できる
③肥満の方の妊娠糖尿病の発症リスクを減らす
④腰痛予防になる

こうした身体面のメリットだけではありません。
⑤気持ちの面に良い影響を与える    という点もあります。

さらに分娩に関しても良い影響があります。
⑥帝王切開率を減らす
⑦鉗子・吸引分娩を減らす

そして、分娩の後も違います。
⑧産後の体力回復を早める

 

 


私は運動してもいいですか?

日本臨床スポーツ医会の指針では、条件の一つとして「妊娠12週以降」をあげています。
この理由は、妊娠初期は、つわりに伴う栄養や水分の摂取不足気味であったり、不正性器出血や流産などの心配もあるからだと思います。

 

また、以下の項目に当てはまる方は、運動することは勧められません。

 運動fig1

 

 

 

どういう運動はいいですか?もしくはダメですか?


勧められる運動と避けたほうが良い運動があります。

 

運動fig2

 


①(高強度の無酸素運動は避けて、)有酸素運動、かつ全身運動で楽しく長続きするもの。

 

②競技性の高いもの、腹部に圧迫が加わるもの、瞬発性のもの、転倒の危険があるもの、相手と接触したりするものは避ける。

 

③妊娠16週以降は、仰臥位になるようなものは避ける。
なぜかというと、仰向けでいると大きくなった子宮が太い血管を圧迫し、血流が急激に減ります。その結果、血圧が著しく下がり、呼吸困難やめまいなどの症状が現れるからです。

 

 

 

運動中の注意することはありますか?
妊娠中の運動に適した環境があります。

①真夏の炎天下に戸外で行うものは避ける。
胎児の正常な機能発達を阻害しないため、運動中の著しい体温上昇を避けることが大切です。
そのために涼しい環境で、ルースフィットなウエアを着ることが勧められます。

十分な水分補給も大切です。

 

②平坦な場所で行う。
徐々に大きくなるお腹により、姿勢やバランスが少しずつ変わります。
転倒を避けることも大事です。

 

 

妊娠中の運動であり、あくまでも体重を減らすことを目的としているわけではありません。
胎児のためにも、運動前後の適度なカロリー・栄養補給が必要となります。


当然かけられる負荷の程度があることにも注意してください。
アメリカ産婦人科学会では、運動強度を「非常に楽である」から「非常にきつい」の15段階のわけて、その真ん中ぐらいまでにとどめるべきだとしています。

自分でわかる目安として、運動しながら「普通の会話ができる」程度です。

また、日本臨床スポーツ医会において、許容できる運動負荷の評価として、母体心拍数で150bpm以下を推奨しております

例えば、フィットネスジムで心拍計がついているトレッドミルを利用するのもよいでしょう。

 運動pic2

 

 

 

 

 

 

またウェアラブル心拍モニターをつけて、自分で管理しながら運動するのも良いと思います。
高価な高機能なものでなくても、数千円くらいの比較的安価で購入出来るもありますので、そういうものを使用しながら運動するのも、色々と楽しめるかと思います。

運動pic3

 

 

 運動時間は、アメリカ産婦人科学会では、「毎日20-30分くらい」、日本臨床スポーツ医会では「週2〜3回で、1回60分以内」を目安としています。

 

 

しかしながらもし運動により、以下のような症状が出たら運動を中止して医療機関に相談してください。

運動fig3

 

 

最後に

合併症がなく妊娠経過が正常で健康な女性であれば、妊娠中に適度な運動をすることは、リスクも少なく、幾つかのメリットがあります。

 

ルールを守っていただきながら妊娠中に適度な運動をすることを、私は妊婦さんにお勧めします。

 

猶、各個人で異なる点もありますので、運動する前後に必ず医療機関に相談するようにしてください。


院長 今野 秀洋

(参考文献)
1.ACOG Committee Opinion No. 650:Physical Activity and Exercise During Pregnancy and Postpartum Period.:Obstet Gynecol:126:e135-142:2015
2. 臨床スポーツ医学会・産婦人科部会(編):妊婦スポーツの安全基準:2015
3. Dye TD et al:Physical activity, obesity, and diabetes in pregnancy.
:Am J Epidemiol. :146(11):961-965:1997
4. Price BB et al.:Exercise in pregnancy: effect on fitness and obstetric outcomes-a randomized trial:Med Sci Sports Exerc.:44(12):2263-9:2012
5. Stuge B et,al;The efficacy of a treatment program focusing on specific stabilizing exercises for pelvic girdle pain after pregnancy: a two-year follow-up of a randomized clinical trial.:Spine:15;29:E197-203: 2004
6. Kihlstrand M et,al;Water-gymnastics reduced the intensity of back/low back pain in pregnant women.:Acta Obstet Gynecol Scand. :78(3):180-5:1999
7. Ostgaard HC et,al;Reduction of back and posterior pelvic pain in pregnancy.:Spine :15;19(8):894-900:1994
8. Garshasbi A et,al.:The effect of exercise on the intensity of low back pain in pregnant women.:Int J Gynaecol Obstet.:88(3):271-5:2005
9. 梶原 由布ら;妊娠に伴う腰背部から骨盤周囲の疼痛の実態調査:健康科学: 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻紀要 :7巻:29-35:2011
10. 安藤 布紀子ら;妊娠に関連した腰痛と骨盤痛への介入方法における国外文献の検討:甲南女子大学研究紀要:6:77-83:2012
11. 難波 聡:妊娠中・産褥期の適切なトレーニングとは:産科と婦人科:85(4):454-458:2018

 

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2018.02.17更新

通常は、児が出生した後に胎盤が娩出されます。

しかし、分娩前に胎盤が一部もしくは全体的に胎盤が付着部から剥離が生じることがあります。
これを「常位胎盤早期剥離」と言います。

 

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 もし赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれるとどうなるかというと

①剥離面に出血します。出血で生じた血腫がさらに胎盤を剥がします。すると大量出血となり出血性ショックが起こり、続いて血液を凝固させる因子が消費されて、さらに出血が止まらなくなるという悪循環に陥ります。その結果、母体死亡につながることもあります。

②胎盤が子宮から剥がれると、胎盤・臍帯から胎児への酸素の供給が止まってしまうわけですから、重大な低酸素症を引き起こし、胎児(もしくは新生児)死亡に至ってしまうこともあります。

つまり常位胎盤早期剥離が生じた場合は、母子ともに命に関わる状況に陥る可能性があります。

その頻度は0.5%(200分娩に1件)です。

危険因子は?

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母体年齢により、常位胎盤早期剥離の発生率は上昇します。40歳以上の高齢妊婦さんは、35歳以下の妊婦さんと比較して常位胎盤早期剥離の発生率は2.3倍高いようです。

 

常位胎盤早期剥離の既往がある妊婦さんの、特に胎児死亡を経験している場合、再発率は非常に高いです。

愛知県にある半田市民病院の報告によると、再発率は22%であり、半分の方は初回の常位胎盤早期剥離より1〜3週間早い週数で再発を認めていました。


また2度の重症常位胎盤早期剥離の既往のある方は、3度目の再発リスクは50倍という報告もあります。


③その他、子宮筋腫が胎盤付着部の後方の子宮内膜表面の近くに位置する場合は、胎盤早期剥離を起こしやすいようです。

 


しかしながら常位胎盤早期剥離は突然生じるため、分娩前からいくら注意をしていても予測はできません。

 

胎盤早期剥離した場合、どのような症状がみられますか?

広島市民病院での43例をまとめた報告によると、
出血が15例、腹痛が15例、子宮収縮感が4例、胎動減少が4例でした。
(必ずしも外出血するわけでもありません。)

 

どのような結末になりますか?

常位胎盤早期剥離と判断した場合は、可能な限り急いで分娩とします。

 

同報告によると、

経産婦が25例(58.1%)とやや多く、発症週数は中央値34週(20週〜40週)でした。
母体死亡例はなかったのですが、輸血を要した例が15例、子宮全摘術を要した方が1例でした。

児においては、死亡例が11例(25.6%)、そのうち乳児死亡が1例、子宮内胎児死亡が10例でした。生存した中でも、脳性麻痺が2例、発育発達の遅れが6例にみられました。

 

 


成育医療研究センターが作成した、常位胎盤早期剥離のパンフレットもありますのでご覧になってみてください。
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/bunben/img/guide_15.pdf

 

最後に

常位胎盤早期剥離は突然生じるため、分娩前からいくら注意をしていても予測はできませんが、胎盤剥離してから、時間が経てば経つほど状況は悪くなりますので、いつもと違うなと思った場合は、早めに病院に連絡するようにしてください。

院長 今野 秀洋

 

(参考文献)
1. 関野 和ら;当院における常位胎盤早期剥離43例の検討;現代産婦人科;64;2;453-459;2016
2. 松川 哲ら;当院における常位胎盤早期剥離55症例の検討 内出血型は外出血型よりhigh riskか;周産期医学 ;46;1;117-120;2016
3. 中田 雅彦ら;【母体救命-産科医とともに】 産科救急疾患 常位胎盤早期剥離; 救急医学;40;9;1037-1043;2016
4. 小塚 良哲ら;当院での子宮内胎児死亡を伴う常位胎盤早期剥離症例の取り扱い;現代産婦人科 ;64;2;165-169;2016
5. 近藤 英治ら;【ここが知りたい 産婦人科周術期管理】 周産期領域 常位胎盤早期剥離; 産科と婦人科;84;2;127-134;2017
6. Furuhashi M, et al. ;Pregnancy following placental abruption.
;Arch Gynecol Obstet;267(1);11-13;2002
7. Willams Obstetrics, 24th ed

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2017.12.17更新

妊娠の兆しがみられ、うれしく思っていたのに、時として「流産」という悲しい出来事に直面することがあります。

今回は流産についてお話しします。

 

流産ってよくあることですか?

流産は、報告によりますが、約15%(8-20%)、決して低くはない頻度で起こります。

ごく初期の流産だと、月経と勘違いする可能性もありますので、本当の流産頻度はもっと多いのかもしれません。

 

流産しやすい人は、どういう人ですか?リスク因子は?

①35歳以上の高齢妊娠
年齢別の流産率です。

 

 SAfig1

 

SAtable1  

年齢が上がるにつれて、流産率は上昇します。

 

②流産の既往がある
以前一度流産経験がある方が、次に流産する可能性は、20%ぐらいです。
  (反対の言い方をすれば、次の妊娠がうまくいく可能性は、80%もあります。)

 

③極端に太っている、もしくは痩せている。

BMI 25以上もしくは18.5以下の女性は流産しやすいです。

肥満であればあるほど、流産しやすいです。
 肥満と妊娠についてhttp://www.sanolc.com/blog/2015/10/post-67-430712.html

24738人による統計によると、軽度肥満(BMI 25〜29)で11.8%、高度肥満(BMI 28以上)で13.6%の流産率でありました。

反対に、痩せすぎていても流産しやすいようです。(relative risk 1.08, 95%CI 1.05-1.11)


④妊娠中に喫煙している
1日あたり10本以上喫煙している方は、1.7倍流産する可能性が増えます。
 妊娠中の喫煙について(http://www.sanolc.com/blog/2016/08/post-91-430740.html

 

⑤よく飲酒している
週3回以上飲酒機会がある女性のほうが、流産しやすいという報告があります(odds rate 2.3 95%CI 1.1-4.5)。

 

⑥妊娠中にカフェインをよく摂取している

毎日8杯以上コーヒーを摂取していると、流産するリスクが約2倍以上に増えます。

 

⑦妊娠中に運動をしすぎている
毎週1〜2時間の運動をしている人は1.83倍、5時間以上の方は3.29倍も流産のリスクがあります。

 

⑧妊娠中の重い荷物を持ち上げている
毎日20kg以上の重い荷物を持ち上げている方は、1.31倍の流産のリスクがあります。

 

⑨子宮筋腫がある
特に粘膜下筋腫と言って、子宮内腔に突出しているタイプの子宮筋腫の場合は流産しやすいですし、繰り返す可能性があります。
妊娠と子宮筋腫について(http://www.sanolc.com/blog/2014/04/post-29-430658.html)

 


流産の原因は何ですか?

①胎児染色体異常
おおよそ流産の6割ぐらいの原因は、胎児の染色体異常だと言われています。

 

②先天性奇形
先天性奇形により、これ以上は育つことのできないような厳しい状態であったということではないかと思われます。

 

③感染症
妊娠中に感染すると流産することがあります。
例えば、リステリア、トキソプラズマ、パルボウィルス、風疹、サイトメガロウィルスなどが、代表的です。

リステリアhttp://www.sanolc.com/blog/2017/08/post-130-506296.html
トキソプラズマhttp://www.sanolc.com/blog/2014/10/post-1-430685.html
パルボウィルスhttp://www.sanolc.com/blog/2015/06/post-61-430702.html
風疹http://www.sanolc.com/blog/2016/11/post-97-430748.html
サイトメガロウィルスhttp://www.sanolc.com/blog/2015/05/post-1-430701.html

 

④母体疾患(甲状腺機能異常、副腎機能異常、抗リン脂質抗体症候群など)
もし母体疾患がある場合は、ちゃんと受診し治療をうけておくことをお勧めします。

 

流産したらどういう症状がありますか?

一般的な流産の場合に起こり得る症状は、不正性器出血、下腹部痛です。

子宮内で胎児死亡したものの、そのまま留まってしまうことがあります。こういったケースを、稽留流産と言います。稽留流産の場合は、ほとんど症状はないでしょう。

 

 

流産を予防する方法はありますか?

切迫早産と診断した場合は、自宅安静を勧めております。
また、ケースにより入院治療を勧める場合もあります。

また切迫早産の際、プロゲステロンというホルモンを補充する方法にて予防することもありますが、残念ながら完璧な予防方法はありません。

しかしながら、先に述べた体重や飲酒・喫煙など生活習慣はご自身で気をつけることができると思います。

 


流産の診断となったらどうなりますか?

月経が再来し、排卵をしないと、次の妊娠を期待できません。
つまりこの妊娠を終わらせなければなりません。

速やかに自然流産となった場合は、特に処置する必要はないと思います。

しかし、稽留流産や一部子宮内に妊娠組織が残ってしまう不完全流産などの場合は、対処が必要となります。

治療方法は、2つあります。
(1)自然に排出を待つ待機療法か、(2)流産手術(子宮内掻爬術)です。


(1)を選択することのメリットは、①手術を受けなくて済む、②手術費用はかからないという点です。
一方、デメリットは、①自然排出まで定期的受診が必要となること、②自然排出までの日数が予測困難であり、突然の出血が始まったが、コントロール不能にて緊急手術になる場合があることです。

ある研究では、診断から2週間待機した場合の排出率は、不完全流産は71%、稽留流産は35%でした。
また別の研究で、21日目までに大部分の症例で排出されており(80%)、さらに21日待機した場合と28日待機した場合の排出率はほとんど変わらないという報告がありました。


そうすると診断してから、14〜21日目ぐらいまでは待機療法で自然排出が期待できるのではないかと思います。

しかしながら、私の経験において3週間待機した方が高熱を出し、子宮内感染合併を考え急いで緊急手術としたケースがありました。

色々なご意見やご希望があるとは思いますが、今のところ、予測困難な突然の大量出血を避けたり、子宮内感染なども考慮し、待機治療のタイムリミットは2週間程度ではないかと私は考えています。


まとめ

残念ながら流産は、医療が進歩した現在でも決して珍しくはない現象であります。
幾らかの方法で未然に防ぐこともできますが、多くは自然に起こりうるものであると思います。

もし流産が判明した場合は、個々で対応が異なりますので、主治医とよく相談していただくと良いと思います。

院長 今野 秀洋

 

(参考文献)

1. 光田 信明ら:当センターにおける稽留流産の治療成績 待機的管理と外科的治療の比較:産婦人科の実際 :66:8:1051-1055:2017

2. 福原 健ら:【周産期医学必修知識第8版】産科編 流産:周産期医学:46:増刊:214-216:2016

3. 倉品 隆平ら:【周産期医学必修知識第8版】産科編 絨毛膜下血腫
:周産期医学 :46:増刊 :211-213:2016

4. 高森 亮輔ら:流産胎児の染色体分析結果(平成27年度):富山県衛生研究所年報:39:39-41:2016

5. 藤田 太輔:流産後の次回妊娠開始時期について(Q&A):産婦人科の進歩:68:4:396-397:2016

6. 大槻 克文ら:【周産期管理がぐっとうまくなる!ハイリスク妊娠の外来診療パーフェクトブック】 産科合併症の管理 切迫後期流産・切迫早産:産婦人科の実際:65:10:1233-1241:2016

7. 深見 武彦:【周産期管理がぐっとうまくなる!ハイリスク妊娠の外来診療パーフェクトブック】 産科合併症の管理 切迫前期流産・絨毛膜下血腫:産婦人科の実際:65:10:1225-1232:2016

8. 大内 望:周産期と死亡を考える】 流産・習慣流産の疫学:周産期医学:46:3:257-260:2016

9. Chatenoud L, et al.:Paternal and maternal smoking habits before conception and during the first trimester: relation to spontaneous abortion.:8:8:Ann Epidemiol:
1998

10. Wang X, Chen C, et al.:Conception, early pregnancy loss, and time to clinical pregnancy: a population-based prospective study. :Fertil Steril :79:577:2003;

11. Windham GC, et al. :Moderate maternal alcohol consumption and risk of spontaneous abortion.:Epidemiology:8:5:509:1997;

12. Li DK, Liu L, et al. Exposure to non-steroidal anti-inflammatory drugs during pregnancy and risk of miscarriage: population based cohort study.:BMJ:327:368:2003

13. Hekmatdoost A, et al. :Methyltetrahydrofolate vs Folic Acid Supplementation in Idiopathic Recurrent Miscarriage with Respect to Methylenetetrahydrofolate Reductase C677T and A1298C Polymorphisms: A Randomized Controlled Trial.:PLoS One:10:12:e0143569:2015

14. Krabbendam I, et al. :Pregnancy outcome in patients with a history of recurrent spontaneous miscarriages and documented thrombophilias.:Gynecol Obstet Invest. 2004;57(3):127. Epub 2003 Dec 23.

15. Shi H, et al. :NAD Deficiency, Congenital Malformations, and Niacin Supplementation.:N Engl J Med:10:377:544-552:2017

16. Jamieson DJ, et al. :Lymphocytic choriomeningitis virus: an emerging obstetric pathogen?:Am J Obstet Gynecol. :194:6:1532:2006

17. Tuuli MG, et al.:Perinatal outcomes in women with subchorionic hematoma: a systematic review and meta-analysis.:Obstet Gynecol:117:5:1205: 2011


18. Nybo Andersen AM, et al.:Maternal age and fetal loss: population based register linkage study.:BMJ:24:320:1708-12:2000

19. Levy B, et al.:Genomic imbalance in products of conception: single-nucleotide polymorphism chromosomal microarray analysis.:Obstet Gynecol. :124:202-9:2014

20. Feodor Nilsson S, et al. :Risk factors for miscarriage from a prevention perspective: a nationwide follow-up study.:BJOG:121:11:1375-84:2014

21. Haas DM, et al. :Progestogen for preventing miscarriage.:Cochrane Database Syst Rev. 2013

22. Gaskins AJ, et al.:Maternal prepregnancy folate intake and risk of spontaneous abortion and stillbirth.:Obstet Gynecol:124:23-31:2014

23. Aleman A, et al.:Bed rest during pregnancy for preventing miscarriage.:Cochrane Database Syst Rev:2005

24. Smith LF, et al.:Incidence of pregnancy after expectant, medical, or surgical management of spontaneous first trimester miscarriage: long term follow-up of miscarriage treatment (MIST) randomised controlled trial.:BMJ:339:b3827:2009

25. Abortion. In: Williams Obstetrics: McGrawHill-Education:2014

26. Nanda K, et al.:Expectant care versus surgical treatment for miscarriage.:Cochrane Database Syst Rev:2012

27. Luise C, et al.:Outcome of expectant management of spontaneous first trimester miscarriage: observational study.:BMJ:324:873: 2002

28. Schliep K, et al.:Trying to conceive after an early pregnancy loss: An Assessment on How Long Couples Should Wait:Obstet Gynecol:127:2:204-12:2016

29. Bhattacharya S, et al.:Recurrent miscarriage: Are three miscarriages one too many? Analysis of a Scottish population-based database of 151,021 pregnancies.:Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol:150:1:24-7:2010

 

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2017.11.26更新

妊娠は判明したけど不正性器出血がありますが大丈夫でしょうか?
こういうケースは、少なくないです。
今回は、絨毛膜下血腫についてお話ししたいと思います。


絨毛膜下血腫とは?

絨毛膜下血腫は、妊娠初期や中期にみられる胎嚢の周りにみられる血液が溜まった部分のことを言います。

 

 絨毛膜血腫

 

 

不正性器出血で気づき、超音波検査で診断がつきます。

報告によりますが、全妊娠の0.5%から22%ぐらいの頻度であるようです。

多くの場合が、安静などの自然経過で改善します。

しかしながら、中には流産や子宮内胎児死亡に至るケースもあります。

 


絨毛膜下血腫を発症した方1735人と対照群70703人を比較検討した研究があります。

この研究によると
絨毛膜下血腫を発症した方は、 約2倍の流産発症リスクや子宮内胎児死亡リスクがあります
(流産:OR2.18, 95%CI 1.29-3.68、子宮内胎児死亡:OR2.09,95%CI 1.20-3.67)。

また、妊娠初期だけではなく、その後の妊娠経過にも影響を与える場合もあります。


常位胎盤早期剥離:OR5.71, 95%CI 3.91-8.33
(常位胎盤早期剥離については、国立成育医療センターのパンフをお勧めします。https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/bunben/img/guide_15.pdf
早産:OR1.40, 95%CI 1.18-1.68
早産期の破水:OR1.64, 95%CI 1.22-2.21

もちろん絨毛膜下血腫を気にしすぎることはないのですが、妊娠初期に絨毛膜下血腫を指摘されたり、比較的長期に渡る不正性器出血がある場合は、少し注意が必要ではないかと思われます。
ご心配なことやご不明なことは、ぜひ主治医に相談してください。

院長 今野 秀洋


(参考文献)
Tuuli MG,et al.; Perinatal outcomes in women with subchorionic hematoma: a systematic review and meta-analysis. : Obstet Gynecol ;117(5):1205;. 2011

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2017.10.24更新

以前のブログで妊娠高血圧症候群(HDP)が、将来生活習慣病になる可能性が高いので気をつけてましょうという話をしました。

今回は妊娠糖尿病(GDM)のお話です。

妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常のことです。(妊娠前から糖尿病と診断されている場合は妊娠糖尿病には含めません。)

日本産婦人科学会のホームページによると、頻度は7〜9%ぐらい(当院で出産した方のデータでは1%くらい、これはおそらくハイリスク妊娠の方は、高次施設に紹介させていただいているのではないかと思います。)

お母さんが高血糖であると、おなかの中の赤ちゃんも高血糖になり、さまざまな合併症が起こります。

GDM合併症

赤ちゃんが大きくなりすぎた場合や、お母さんの合併症が重度な場合は、お母さんや赤ちゃんを守るために、帝王切開が選択されることもあります(GDMの方は19.3〜30.9%と帝王切開率が高いです)。

 

実はGDMは妊娠高血圧症候群と同じく、妊娠・出産時だけでなく、出産後にも注意が必要です。

幾つかの調査報告があります。

(1) GDMと診断された方が将来糖尿病になる危険率は、GDMではなかった方の約7倍だった。

675455人の女性を調べた英国の報告によると、

2型糖尿病の発症数/GDM発症数       3997人/31867人
2型糖尿病の発症数/GDM発症しなかった数 6862人/643588人

GDMと診断された方が将来2型糖尿病を発症した割合とGDMでなかった方が2型糖尿病を発症した割合を比較したところ、GDMの方が7.4倍糖尿病を発症することがわかりました。

(2) GDMと診断された方が、分娩後5年の時点で糖尿病に進展しているケースが20%だった。

日本の1041名を調べたデータ解析によるとGDMと診断された方が、分娩後5年の時点で、糖尿病に進展しているケースは20%でした(GDMでなかった方が、糖尿病に進展したのは1%)。
GDMから糖尿病に進展するリスク因子は、

①妊娠前BMI≧25kg/㎡
②GDM診断時のHbA1c(過去1-2ヶ月の血糖値の平均を反映するものです)≧5.6%
③分娩時年齢35歳未満

などです。

(3) 産後3年から15年経過した方を調査したところ、GDMと診断した方の47%が糖尿病もしくは糖代謝異常と診断されていた。

こちらも日本のデータで、GDMと診断された202人を調査したところ、 産後3年から15年経過した時点で、47%が糖尿病もしくは糖代謝異常と診断されていました(GDMでなかった60人のうち糖代謝異常となっていた方は0人)。

(4)胎児期の子宮内環境が子供に影響を与える可能性がある。

GDMから生まれた児の方が、9歳で肥満度も腹囲も大きい傾向があったという報告があります。


まとめると
GDM既往の方は、将来糖尿病発症予備軍であります。また、お母さんだけの問題ではなく、お子さんにも影響が出るかもしれません。

GDMと診断された方は、妊娠中だけでなく産後の生活も気をつけるようにしてください。

院長 今野 秀洋

(参考文献)
1.荒田 尚子ら;糖尿病女性とウィメンズヘルスケア 妊娠を起点とした将来の女性および次世代の糖尿病発症予防のために;糖尿病と妊娠 ;15;1;56-64;2015
2. 荒田 尚子;妊娠を起点とした将来の女性及び次世代の糖尿病・メタボリック症候群発症予防のための研究;平成26年度厚生労働科学研究費補助金
3. 和栗雅子:新診断基準によって診断された妊娠糖尿病合併女性の糖代謝 予後に関する研究:平成26年度厚生労働科学研究費補助金
4. Bellamy L,et al. ;Type 2 diabetes mellitus after gestational diabetes: a systematic review and meta-analysis.;Lancet;23;3731773-9 ;2009
5. 難波光義ら;「妊娠と糖尿病」母児管理のエッセンス;金芳堂
6. 日本産婦人科学会ホームページ:http://www.jsog.or.jp/public/knowledge/ninshintonyobyo.html

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2017.09.30更新

10月2日から妊婦さん向けにインフルエンザワクチン接種を開始します。

すべての妊婦さんに対して、日本、米国におけるガイドラインでは、インフルエンザワクチン接種を推奨しております。

それには理由があります。

お母さんにとってのメリットとは?

過去の調査では、妊娠中にインフルエンザに感染すると重症化しやすいことがわかりました。
こじらせて心肺機能が悪化し、入院治療を要する、リスクが上がります。
このリスクは出産に近づくほどに高くなり、最大4.67倍まで上昇します。

出産後、生後6ヶ月未満の赤ちゃんにはインフルエンザワクチンを接種することができません。
赤ちゃんが感染することを防ぐには、まずお母さんがかからないようにすることがまず大事だと思います。そのために、お母さんに接種を勧めます。これは一緒に住むご家族も同じですね。是非ご家族の方も予防してください。


赤ちゃんにとってのメリットとは?

胎児への影響が心配だというご質問がよくありますが、現在使用されているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンであるので、胎児に対する影響や問題はないです。

さらに、妊娠中にインフルエンザワクチンを接種すると、お母さんの体に抗体が産生されますが、それが胎盤を通過して、胎児に移行することがわかっております。
つまり、妊娠中にインフルエンザワクチンを接種すると、生まれた赤ちゃんはインフルエンザにかかりにくくなる、重症化を避けやすくなるであろうと考えられます。
実際のところ生後6ヶ月までに63%のインフルエンザ感染を減らせたとのデータがあります。

インフルベビー


もちろん、アレルギー等の副作用には注意しないといけません。
特にワクチン等に対するアレルギーがない妊娠中の方とその家族、それから近いうちに妊娠を希望している方には、私は接種することをお勧めしています。

当院では、妊婦さんがより安心して頂けるように防腐剤の入っていないワクチンも用意しております。

院長 今野 秀洋

(参考文献)
1. Madhi SA, et al. ;Influenza vaccination of pregnant women and protection of their infants.;N Engl J Med. ;2014; 4;371(10):918-31.
2. Zaman K,et al. ; Effectiveness of maternal influenza immunization in mothers and infants.;N Engl J Med. ;2008;9;359(15):1555-64.
3. Neuzil KM, et al.; Impact of influenza on acute cardiopulmonary hospitalizations in
pregnant women. ;1998 Dec 1;148(11):1094-102.
4. 二井 立恵ら;妊婦におけるインフルエンザワクチンの免疫原性・安全性;小児科;   
 2012;53;4;497-503
5. 二井 立恵ら;ワクチン歴による妊婦のインフルエンザ赤血球凝集抑制抗体の保有状況と児へ
の抗体移行に関する検討;小児科臨床;2010;63;11;2329-2336
6. 日本産婦人科学会 産婦人科診療ガイドラインー産科編2014

(2016のブログを一部修正して掲載しています。)

投稿者: 佐野産婦人科医院

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