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流産について

妊娠の兆しがみられ、うれしく思っていたのに、時として「流産」という悲しい出来事に直面することがあります。
今回は流産についてお話しします。

流産ってよくあることですか?
流産は、報告によりますが、約15%(8-20%)、決して低くはない頻度で起こります。
ごく初期の流産だと、月経と勘違いする可能性もありますので、本当の流産頻度はもっと多いのかもしれません。

流産しやすい人は、どういう人ですか?リスク因子は?
①35歳以上の高齢妊娠年齢別の流産率です。

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年齢が上がるにつれて、流産率は上昇します。

②流産の既往がある以前一度流産経験がある方が、次に流産する可能性は、20%ぐらいです。  (反対の言い方をすれば、次の妊娠がうまくいく可能性は、80%もあります。)

③極端に太っている、もしくは痩せている。
BMI 25以上もしくは18.5以下の女性は流産しやすいです。
肥満であればあるほど、流産しやすいです。 肥満と妊娠についてhttp://www.sanolc.com/blog/2015/10/post-67-430712.html
24738人による統計によると、軽度肥満(BMI 25~29)で11.8%、高度肥満(BMI 28以上)で13.6%の流産率でありました。
反対に、痩せすぎていても流産しやすいようです。(relative risk 1.08, 95%CI 1.05-1.11)
④妊娠中に喫煙している1日あたり10本以上喫煙している方は、1.7倍流産する可能性が増えます。 妊娠中の喫煙について(http://www.sanolc.com/blog/2016/08/post-91-430740.html

⑤よく飲酒している週3回以上飲酒機会がある女性のほうが、流産しやすいという報告があります(odds rate 2.3 95%CI 1.1-4.5)。

⑥妊娠中にカフェインをよく摂取している
毎日8杯以上コーヒーを摂取していると、流産するリスクが約2倍以上に増えます。

⑦妊娠中に運動をしすぎている毎週1~2時間の運動をしている人は1.83倍、5時間以上の方は3.29倍も流産のリスクがあります。

⑧妊娠中の重い荷物を持ち上げている毎日20kg以上の重い荷物を持ち上げている方は、1.31倍の流産のリスクがあります。

⑨子宮筋腫がある特に粘膜下筋腫と言って、子宮内腔に突出しているタイプの子宮筋腫の場合は流産しやすいですし、繰り返す可能性があります。妊娠と子宮筋腫について(http://www.sanolc.com/blog/2014/04/post-29-430658.html)

流産の原因は何ですか?
①胎児染色体異常おおよそ流産の6割ぐらいの原因は、胎児の染色体異常だと言われています。

②先天性奇形先天性奇形により、これ以上は育つことのできないような厳しい状態であったということではないかと思われます。

③感染症妊娠中に感染すると流産することがあります。例えば、リステリア、トキソプラズマ、パルボウィルス、風疹、サイトメガロウィルスなどが、代表的です。
リステリアhttp://www.sanolc.com/blog/2017/08/post-130-506296.htmlトキソプラズマhttp://www.sanolc.com/blog/2014/10/post-1-430685.htmlパルボウィルスhttp://www.sanolc.com/blog/2015/06/post-61-430702.html風疹http://www.sanolc.com/blog/2016/11/post-97-430748.htmlサイトメガロウィルスhttp://www.sanolc.com/blog/2015/05/post-1-430701.html

④母体疾患(甲状腺機能異常、副腎機能異常、抗リン脂質抗体症候群など)もし母体疾患がある場合は、ちゃんと受診し治療をうけておくことをお勧めします。

流産したらどういう症状がありますか?
一般的な流産の場合に起こり得る症状は、不正性器出血、下腹部痛です。
子宮内で胎児死亡したものの、そのまま留まってしまうことがあります。こういったケースを、稽留流産と言います。稽留流産の場合は、ほとんど症状はないでしょう。

流産を予防する方法はありますか?
切迫早産と診断した場合は、自宅安静を勧めております。また、ケースにより入院治療を勧める場合もあります。
また切迫早産の際、プロゲステロンというホルモンを補充する方法にて予防することもありますが、残念ながら完璧な予防方法はありません。
しかしながら、先に述べた体重や飲酒・喫煙など生活習慣はご自身で気をつけることができると思います。

流産の診断となったらどうなりますか?
月経が再来し、排卵をしないと、次の妊娠を期待できません。つまりこの妊娠を終わらせなければなりません。
速やかに自然流産となった場合は、特に処置する必要はないと思います。
しかし、稽留流産や一部子宮内に妊娠組織が残ってしまう不完全流産などの場合は、対処が必要となります。
治療方法は、2つあります。(1)自然に排出を待つ待機療法か、(2)流産手術(子宮内掻爬術)です。
(1)を選択することのメリットは、①手術を受けなくて済む、②手術費用はかからないという点です。一方、デメリットは、①自然排出まで定期的受診が必要となること、②自然排出までの日数が予測困難であり、突然の出血が始まったが、コントロール不能にて緊急手術になる場合があることです。
ある研究では、診断から2週間待機した場合の排出率は、不完全流産は71%、稽留流産は35%でした。また別の研究で、21日目までに大部分の症例で排出されており(80%)、さらに21日待機した場合と28日待機した場合の排出率はほとんど変わらないという報告がありました。
そうすると診断してから、14~21日目ぐらいまでは待機療法で自然排出が期待できるのではないかと思います。
しかしながら、私の経験において3週間待機した方が高熱を出し、子宮内感染合併を考え急いで緊急手術としたケースがありました。
色々なご意見やご希望があるとは思いますが、今のところ、予測困難な突然の大量出血を避けたり、子宮内感染なども考慮し、待機治療のタイムリミットは2週間程度ではないかと私は考えています。
まとめ
残念ながら流産は、医療が進歩した現在でも決して珍しくはない現象であります。幾らかの方法で未然に防ぐこともできますが、多くは自然に起こりうるものであると思います。
もし流産が判明した場合は、個々で対応が異なりますので、主治医とよく相談していただくと良いと思います。

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院長 今野 秀洋

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7. 深見 武彦:【周産期管理がぐっとうまくなる!ハイリスク妊娠の外来診療パーフェクトブック】 産科合併症の管理 切迫前期流産・絨毛膜下血腫:産婦人科の実際:65:10:1225-1232:2016
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