スタッフブログ

2020.08.01更新

子宮頸がんを予防する9価HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが承認・認可されました。

日本製の9価HPVワクチンが接種できるようになるには、もう少し時間がかかると思われます。

 

 

統計によると、日本では毎年34000人の女性が子宮頸がんと診断され、約2800人が亡くなっており、この数は漸増しています。

HPVの感染経路は、「性行為」であり、性交経験がある女性の5〜8割の方は、生涯一度はHPVに感染すると考えられています。つまり女性であれば、決して他人事ではありません。

 

HPV感染では炎症をおこさず、無症状です。
多くは無症状のまま自然治癒をしますが、少数において増殖したり、潜伏したりして持続感染します。

 

当然性交経験がある男性も感染します。男性もHPV感染が原因で、肛門がん、陰茎がん、中咽頭がんや、尖圭コンジローマも発症することがあります。しかしながら、子宮頸がんに比べて頻度が少ないので、まず女子のみ接種が開始されたようです。
世界では、すでに男子にもHPVワクチン接種を開始している国があります。

 

現在、日本では小学生〜高校1年生までの女子が無料で接種できるHPVワクチンは、「サーバリックス」「ガーダシル」の2種類です。

「サーバリックス」は、HPVのうち2つの型(16,18型)に、「ガーダシル」は4つの型(6,11,16,18型)に対して効果があります。

しかしながら、子宮頸がんに関与するHPVは他にもあり、これらのワクチン接種による子宮頸がん発症抑制は60〜70%程度と言われております。

 

今回、承認・認可された9価HPVワクチンは、9つの型(6,11,16,18,31,33,45,52,58型)に対して効果があります。
普及すれば90%かそれ以上予防可能と期待されており、海外では9価HPVワクチンが主流となっています。

 

 

HPVワクチン

 


子宮頸がん対策は?

①HPVワクチン接種②定期的な子宮頸がん検診です。

一度感染したら潜伏する可能性があるので、早い段階でHPVワクチンを接種することがよいと考えられています。

 

 


定期的な子宮頸がん検診だけではだめですか?

子宮がん検診で細胞診を行いますが、この検査で子宮頸がんや前がん病変を有する人が陽性を 示す割合は、50%~70%と言われています。つまり、がんや前がん病変がある人でも、一定の割合で検診では異常なしと 判定されてしまう可能性があります。

また日本の検診受診率は 42%程度であり、そもそも検診を受けていない方が多いという現状です。

 

 


安全性は?

HPVワクチン接種後の多様な症状に関する報道により、ワクチンの見直す動きがありました。
厚生労働省による安全調査が行われ、HPVワクチン接種後の副反応(因果関係の有無を含まない)疑いは、被接種者約338万人のうち0.08%でありました。

また、名古屋市の調査では、非接種女子と比較して、ワクチン接種後に多様な症状が増えることはないということがわかりました。

 

 

まとめ

ようやく、日本でも9価HPVワクチンが接種できるようになります。
私たちは若い女性の方々には、HPVワクチンの接種を勧めます。

 

院長 今野 秀洋 

 


(参考資料)
1. 伊藤ゆり; 子宮がん;JACR Monograph (suppl-2): 85-97;2016

2. 子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新知識と正しい理解のために
https://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/HPV_Q%26A.pdf

3.厚生労働省 HPVワクチンに関する一般向けのリーフレット
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/pdf/leaflet_h25_6_01.pdf


4. 第15回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/chousa/index.html

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000097690.html

 

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2020.05.28更新

今年度の子宮がん検診が再開となります。

新型コロナウィルス感染症にて一時中止となっておりました、市川市、浦安市の子宮がん検診が再開となります。

子宮がん検診は、「不要」ではありません。

 


猶、浦安市内では、当院と舞浜クリニックでは、今まで通りに子宮がん検診は経腟超音波検査を併用しております。(受診者の負担は今まで通り変わりません。)

http://www.sanolc.com/blog/2020/03/post-205-727521.html

是非、受診して下さい。

 

院長

投稿者: 佐野産婦人科医院

2020.03.31更新

2020年4月1日より、浦安市の子宮がん検診が変更となります。

今までは、浦安市内のどの施設でも子宮がん検診の際は併せて経腟超音波検査を行っておりました。

しかしながら、今後は子宮頸がん検査のみとなりました。
超音波検査も希望される時は、別日に受診が必要となるか、あるいは別料金(自費)が必要となります。

 

子宮がん検診

 


色々と検討して、当院で今まで通りに子宮がん検診は経腟超音波検査を併用することとしました。(受診者の負担は今まで通り変わりません。)

 

調べ得た限り、市内の舞浜クリニック(http://mc-cl.com/でも今まで通りの対応とするとのことでした。

他施設さんをご利用の方は、直接お聞きになって下さい。

 


この変更内容に関して、ご不明な点がございましたら、

浦安市 健康増進課 成人保健係
047-381-9059
kenzo@city.urayasu.lg.jp

 

こちらへご連絡をして下さいとのことでした。

投稿者: 佐野産婦人科医院

2019.10.23更新

出産を最後に産婦人科受診をしなくなったという方を時々見かけます。

本当にそれでよいのでしょうか?

 

 


49927人の女性を調査した日本の研究があります。

 

色々な疾患の発症年齢のピークを調べた調査です。

 40代大事です。

 

産婦人科的良性疾患は、子宮内膜症は36歳をピークに、子宮筋腫は44-45歳をピークに発症しています。

子宮内膜症や子宮筋腫は、月経困難症や過多月経の原因だけでなく、不妊の原因にもなります。

また、悪性疾患では、子宮頸がんは44-45歳、子宮体がんは55-56歳と閉経前後をピークとしております。

卵巣がんはもう少し高齢の63-64歳を発症ピークとしています。

 

 

 

さらにこんな話があります。

「子宮内膜症から卵巣癌に発展することがある」

 

 

子宮内膜症は、生殖可能な年齢の女性の約10%にみられる決して珍しい疾患ではありません。


子宮内膜症は良性疾患でありますが、卵巣癌に発展することがあります(日本では、毎年約8000人が卵巣癌と診断されています)。

日本の研究では、子宮内膜症患者の0.72%が卵巣癌になっていることがわかっています。

 


子宮内膜症から卵巣癌が発症した33人を調査した別の日本の研究があります。
診断時期は31歳から74歳で、平均47.7±9.3歳でした。

 


子宮内膜症性卵巣嚢腫と診断された6398人を調べた別の研究では、子宮内膜症性卵巣嚢腫と診断された時期は38.4歳で、卵巣癌と診断された方は46人、診断時期は51.4歳でした。

 

子宮内膜症性卵巣嚢腫と診断された30歳より若い方の卵巣癌発症リスク(標準化罹患比)は3.88ですが、50歳以上の場合は、13.2と年齢が上がるとリスクも上がります。

50歳前後という時期は、女性では閉経の時期であり、体にとって大事な時期であります。

 

またこの年齢は、仕事をしている方であれば、それなりの重要なポジションにいたり、子供がいる方であれば、子育て真っ盛り時期でもあると思います。

 

そういう時期だからこそ、ご自身の健康管理はしっかりされることが大事ではないでしょうか。

 

子宮内膜症を指摘された方は、定期的に検査を受けることを強くお勧めします。

 


最後に
大人の女性の皆さんは、定期的に婦人科受診すべきと思います。

そして、特に閉経前後の方々そしてそれ以降の方に対して、よりいっそう受診をすることをお勧めします。

院長 今野 秀洋

 

(参考文献)
1. Nagai K,et al; Disease history and risk of comorbidity in women's life course: a comprehensive analysis of the Japan Nurses' Health Study baseline survey.; BMJ Open; 11;5(3):e006360.2015
2. Kobayashi H, et al.; Risk of developing ovarian cancer among women with ovarian endometrioma: a cohort ; Int J Gynecol Cancer. ;17(1):37-43;2007
3. Taniguchi F, et al.;Clinical characteristics of patients in Japan with ovarian cancer presumably arising from ovarian endometrioma.; Gynecol Obstet Invest.
;77(2):104-10; 2014

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2019.09.15更新

浦安市子宮がん検診において、来年度より経腟超音波検査が行うことができなくなりそうです。

 

以前より浦安市内のどこの施設でも、子宮がん検診において内診時に経腟超音波検査を全例行っておりました。

 

健康増進課によると来年度より、「浦安市では子宮がん検診とは子宮頸がん検診のことを指し、子宮頸がんの早期発見を目的とする検査であり、それ以外の子宮や卵巣の病気は、この検査で診断するものではありません。」とのお話しがありました。

 

しかしながら、健康増進課に確認したところ、今後は経腟超音波検査を削除するようにとのことでした。

私達、浦安市内の産婦人科医院、クリニックの産婦人科医は皆大変驚きました。

 

確かに経腟超音波検査は子宮頸がんのみの診断にはあまり役に立たないかもしれません。

 

しかしながら、多くの市民は、婦人科的に大丈夫かどうか心配されながら年に一度の検診に重い腰を上げていらっしゃいます。

子宮がん検診では、かつては内診(つまり触診)を行っておりました。

 

 

しかし、どこの施設にもある経腟超音波検査の方が、触診より受診される方の精神的苦痛が少ないのは明らかです。

また、検査する我々からも、触診より得られる情報はずっと多く、(超音波検査ですべてがわかるわけではありませんが)、より色々な疾患を見落とさないため、検査させていただいた方が安心であります。


東京都がん検診センターでは、子宮、卵巣の現状を確認するために経腟超音波検査を行いますと明記しています。(http://www.tokyo-cdc.jp/about/sikyuu.html

今まで通例で行われていた経腟超音波検査をどうしてあえて削除しなければいけないのでしょうか?

 


子宮がん検診で経腟超音波検査を行ったほうがよいという理由を浦安市に対して大変畏れ多いのですが、いくつかの研究結果を提示したいと思います。

 

 

①経腟超音波検査を用いた卵巣がん集団検診について

 

青森県からの12年間観察した報告です。

 

子宮がん検診で来られた226198人に同時に経腟超音波検査を行い、超音波検査にて「卵巣が30mm以上の大きさである」「嚢胞性成分と充実性成分が混ざった腫瘍を認める」、「異常な腹水を認める」といった異常所見を認めた場合、二次検診、精密検査をするという方針を施行しました。

経腟超音波検査にて異常所見を認めた方は、このうち6675人で、最終的に診断・治療目的に手術となった方が380人でした。

その中で、良性だった方が352人で、境界・悪性腫瘍が28人でした。

つまり、この検診システムで良悪問わずの疾患をみつけることができたのは、一次検査受診者総数に対して、1.6%であり、がん発見率は、0.12%でありました。

しかも初回検診受診者に対しては0.48%で、発見された原発性卵巣がんはその76.9%がI期であり、早期卵巣がん発見という検診の目的にかなうものでありました。

また所要時間は、子宮頸がん検診に30秒、経腟超音波検査に30秒と合計1分なので、決して時間もかからず、集団検診として十分成立可能な時間でありました。

 

 

 

②子宮頸がん検診に経腟超音波検査を併用し発見される子宮内膜疾患について

 

新潟県からの報告です。

 

 

無症状閉経後の4941人をこの研究の対象者とした。
一次検査で、子宮頸部細胞診を採取した後に、経腟超音波検査を行い、子宮内膜肥厚(≧5mm)を二次検診対象者とした。

経腟超音波検査で異常と判断され、二次検診対象者となったのは37人(0.74%)でした。
そのうち精密検査で結果判明したのは、子宮体がん1人、子宮内膜増殖症1人、子宮内膜ポリープ3人、子宮粘膜下筋腫2人、子宮留水腫1人でした。

子宮体がんは、IA期であり、手術を受けましたが、術後15ヶ月で再発はありませんでした。

 

 

 

 

 

 

元々行っていなかった検査ではなく、ずいぶん前から行っていた検査を減らすということは、予防的観点からも時代に逆行しているのではないでしょうか?

 

 

 

 

たまたま検診で来られた方に、経腟超音波検査を行って、初めて子宮筋腫を指摘することはめずらしくありません。
子宮筋腫は時として、将来の不妊の原因になることもあります。
今の時点でその方に助言を与えるチャンスがなくなることは、大げさに言えば、その方の人生を悪い方へ変えてしまうかもしれません。


「子宮がん検診では今後は経腟超音波検査を削除するように」という浦安市の方針に対して、産婦人科医師の私は残念でなりません。

 


詳細が分かり次第、ご連絡させていただきます。

 

 

院長 今野 秀洋

(参考文献)

1.佐藤重美ら:経腟超音波断層法による卵巣癌集団検診成績の検討;産婦人科の実際;52;7;1011-1013;2003
2. Sato S,et al;Usefulness of mass screening for ovarian carcinoma using transvaginal ultrasonography;Cancer;1;89;582-588;2000
3. Jacobs IJ, et al.;Ovarian cancer screening and mortality in the UK Collaborative Trial of Ovarian Cancer Screening (UKCTOCS): a randomised controlled trial;Lancet. ;5;387;945-956;2016
4. 石黒久美子ら;閉経後の子宮頸がん検診に併用した経腟超音波検査法から発見される子宮内膜疾患;人間ドック;30;65-70;2015
5.赤松 信雄;子宮体がんにおける超音波検査;臨婦産;63;9;1165-1173;2009

投稿者: 佐野産婦人科医院

2019.03.09更新

子宮頸がんの発症数は、全世界で年間50万人を超え、その死亡者数は27万人に上っています。

子宮頸がんは、ヒトパピローマウィルス(HPV)が関係します。HPVの持続感染により、子宮頸部上皮内病変(CIN1)が発生。その病変が持続することで悪化し(CIN2-3)、その後子宮頸がんに進展します。

 

HPVは性行為で感染します。性活動がある限り感染のリスクがあり、約8割の女性が一生涯に一度はHPV感染すると考えられます。

HPVは180種以上の型が報告されており、子宮頸がんと関係があるHPVは15種類あります。また、HPVには尖圭コンジローマ(http://www.sanolc.com/blog/2014/05/post-1-430664.html)と関係のあるものもあります。

アフリカや中央及び南アジアなど発展途上国で高い傾向にあり、先進国は少ない傾向が見られます。先進国で減少してきている理由は、HPV検査を含めた検診とHPVワクチン接種によると考えられています。

一方、日本では、日本では、毎年約10,000人もの女性が新たに子宮頸がんにかかっており、また、毎年約3,000人が子宮頸がんで亡くなっています。

 

その理由として、①検診率の低さ、②HPVワクチンの副作用報道の問題が考えられます。

 

子宮頸がんは20~40代の子育て世代にも多く、進行した子宮頸がんとなった場合、子宮を摘出することになります。そうなると子どもが産めなくなります。進行癌ですから命を失うこともあります。子宮頸がんは別名マザーキラーと呼ばれています。結婚や出産を考えている女性にとっては、その選択を失わざるをえなくなることはとてもつらいことになりかねません。

 

 

 

HPV感染したらすべて子宮頸がんになるということですか?

先述したとおり、HPVの持続感染により、子宮頸部上皮内病変(CIN1)が発生します。その一部が持続することで悪化し、その後子宮頸がんに進展します。

 


CIN1(軽度異形成)の場合、2年以内に11.1%がCIN2(中等度異形成)以上に、2.1%はCIN3(高度異形成)以上に移行しますが、一方8.7%は正常細胞になります。

 

within2

 


同様に、CIN2の場合、16.3%はCIN3以上になりますが、6.9%は正常細胞になります。

 

 within5

 

within10

 

 

 

 

子宮頸部上皮内病変は比較的ゆっくりと進行し、10年でCIN1の場合、9.9%がCIN3以上になりますが、6割強は正常細胞になります。

必ずしも悲観的になることはないと思います。

しかしながら、定期的な注意深い診察が必要となります。

 

まとめ
子宮頸がんは、HPV感染と関係があります。HPVは性行為で感染します。
性活動がある限り感染のリスクがあり、約8割の女性が一生涯に一度はHPV感染すると考えられます。つまり、ほとんどの方が感染します(他人事ではありません)。

もし放置していて進行し子宮頸がんとなった場合、子宮を摘出することになり、特に結婚や出産を考えている女性にとって生き方が大きく変わることでしょう。

 

子宮頸がん予防の対策は、HPVに対する予防接種と定期的な検診だと考えられています。

是非、子宮頸がんを受けることをお勧めします。

 

院長 今野 秀洋

 

 

 

(参考文献)
1. 松本光司 :我が国におけるHPV感染と子宮頸部発癌リスク:日産婦誌 63:2130-2138:2011
2. 産婦人科の実際:HPVワクチンを改めて考える-摂取勧奨の再開に向けて-:67:9:2018
3. Holowaty P, et al:Natural history of dysplasia of the uterine cervix.
:J Natl Cancer Inst:3:91:3:252-8:1999
4. Onuki M, et al:Human papillomavirus infections among Japanese women: age-related prevalence and type-specific risk for cervical cancer:Cancer Sci:100:7:1312-6:2009
5. Wright TC Jr, et al.:Interim guidance for the use of human papillomavirus DNA testing as an adjunct to cervical cytology for screening:Obstet Gynecol.:103(2):304-9.
6. Joura EA, et al.:A 9-valent HPV vaccine against infection and intraepithelial neoplasia in women:N Engl J Med. :19:372:8:711-23:2015
7. Mayrand MH, et al.:Human papillomavirus DNA versus Papanicolaou screening tests for cervical cancer:N Engl J Med. :18:357:16:1579-88:2007
8. Ogilvie GS, et al. :Effect of Screening With Primary Cervical HPV Testing vs Cytology Testing on High-grade Cervical Intraepithelial Neoplasia at 48 Months: The HPV FOCAL Randomized Clinical Trial.
:JAMA.:3:320:1:43-52:2018

 

 

 

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2019.02.16更新

便秘の女性は少なくありません。

よく便秘とは言いますが、排便回数が少ないから必ず便秘とは言えません。
慢性便秘症診療ガイドラインによると、「便秘」とは「排便回数や排便量が少ないため糞便が大腸に滞った状態」または「直腸内にある糞便を快適に排出できない状態」を表します。
要するに色々なタイプの便秘があり、快適に排便を促すに医師として単に下剤を処方すれば終了というものではありません。

 


閉経後の女性の便秘についてこんな報告がありました。

73047人の閉経後の女性を調べたところ、便秘の方が34.3%もいました。

そのうち内訳は、軽度便秘 25.7%、中等度 7.4%、重度 1.6%でした。

 

 

便秘と他の要素が関連がないか調べたところ、便秘と心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患と関係があることがわかりました。

 

中等度便秘症の方が虚血性心疾患を発症する頻度 14.3人/1000人
重度の便秘症の方が虚血性心疾患を発症する頻度 19.1人/1000人

便秘でない方が虚血性心疾患を発症する頻度 9.6人/1000人

 

つまり便秘が程度がひどければひどいほど、虚血性心疾患になる可能性があります。

これは便秘だと強くいきむことが多いことが心臓の影響を与えるのでしょうか。

 

また、それだけではなく便秘とうつ病の関連も指摘されております(<0.001)。


もはや「たかが便秘」とは言えないかもしれませんね。

便秘

 

院長 今野 秀洋


(参考文献)
1. Salmoirago-Blotcher E, et al; Constipation and risk of cardiovascular disease among postmenopausal women.
;124(8):714-23;2011
2. 慢性便秘症診療ガイドライン; 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会;2017

 

 

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2018.10.25更新

国立がん研究センターの統計から2018年のがん罹患数予測がでております。

 

2018年の全がん罹患予測総数は101万3600人です。
そのうち乳がんの方は86500人、卵巣がん10600人、子宮がん27500人です。

 

そして、がんで死亡する予測総数は37万9900人です。
そのうち乳がんでお亡くなりになる方は14800人、卵巣がん4800人、子宮がん6700人です。

 

 

乳がんの5〜10%は遺伝性と言われています。
乳がん患者の10〜20%は第1度から第3度近親者に乳がん患者を有する、家族性乳がんであるとも報告されています。

HBOCfig1


第一度近親者とは、父母、兄弟(姉妹)、こども(遺伝情報を 50%共有する関係)
第二度近親者とは、祖父母、おじ、おば、おい、めい、孫(遺伝情報を 25%共有する関係)
第三度近親者とは、曾祖父母、大おじ、大おば、いとこなど(遺伝情報を 12.5%共有する関係)

 

 

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(Hereditary breast and ovary cancer syndrome:HBOC)とは?

最も代表的な遺伝性乳がんです。
2013年の当時37歳のアンジェリーナ・ジョリーさんが、未発症時に両側乳房切除術を受け、2015年の卵管卵巣切除を施行されてたことが報じられてご存じの方も多いのではないかと思います。

BRCA1とBRCA2という遺伝子の変異が原因とされます。
BRCA遺伝子は、誰もが持っている遺伝子の1つで、DNAの傷を修復して、細胞ががん化することを抑える働きがあります。つまり、抑制が効きにくくなり癌化しやすいということです。

 

 

 

HBOCの特徴は?

 

①乳がんと卵巣がんの両方を発症する
②若年で発症する(がん研有明病院2014年データによると、乳がん発症平均年齢41.5歳vs卵巣がん発症平均年齢49.3歳)
③70歳までの累積発症リスクが高い

 

HBOCfig2

 


④トリプルネガティブである。
乳がん腫瘍細胞にエストロゲン受容体・プロゲステロン受容体・HER2の3つが発現していないため、乳癌治療に対して有効性の高いホルモン療法や、抗HER2療法の効果が期待できない。

⑤両側性に同時性、異時性に乳がんを発症する
⑥膵臓がんの発症もある

⑦男性でも乳がんをや前立腺がんを発症する
そのため男性だから大丈夫とは全く言えません。

 


その他に遺伝性乳がんとして、Li-Fraumeni症候群(乳がん、肉腫、脳腫瘍、白血病)Cowden症候群(乳がん、甲状腺がん、子宮体がん)、遺伝性びまん性胃がん症候群(胃がん、乳がん)、Peutz-Jeghers症候群(乳がん、消化器がん)などがあります。

 

 


家族に乳がん患者がいた場合どうすればよいのか?

遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き(2017年版)によると、アメリカのNCCNのガイドラインを参照しており、これによると遺伝的にがんリスクが高いと考えられる人々への対策は、①遺伝カウンセリングと②積極的な検診のようです。

 

HBOCfig3

 

欧米のガイドラインなので、そのまま日本に当てはめることは難しい点もありますが、遺伝的リスクがあると考えられる方は、自己検診を含めた定期的なこまめな検診が重要であると思います。


卵巣がん検診は、きちんとしたエビデンスがないとは言われていますが、一つの方法として
癌研有明病院からの報告では3ヶ月ごとの経腟超音波検査および腫瘍マーカー採血を提案をしています。


最後に
今までは、発症した乳がんや卵巣がんに対して治療を行ってきたのが現状です。
これからは今までの経験の元、サーベランスやリスク低減手術の実施などにより、もっと沢山の患者さんを救うことが出来るのではないかと考えられています。

私は、もっと沢山の方に検診を受けて欲しいと強く願っております。

(猶、当院では子宮がんを含めた婦人科検診のみとさせていただいております。乳がん検診は乳がんの専門医師による診察をお勧めします。)


院長 今野 秀洋

 

 

 

(参考文献)
1. 田辺 記子ら:【先制医療-予防医療の最前線-】 非内科疾患の先制医療 遺伝性腫瘍における乳がんへの先制医療 遺伝性乳がん卵巣がん症候群を中心に:診断と治療:106:1:98-105:2018
2. 野村 秀高ら:【ガイドラインのすき間を埋める!臨床医マエストロの技】 婦人科領域 HBOCを疑う卵巣がん症例への対応は?:産婦人科の実際:66:11:1497-1506:2017
3. 新井 正美:産婦人科臨床遺伝の最前線 腫瘍分野の臨床遺伝 HBOCとリンチ症候群:日本産科婦人科学会雑誌:69:10:1943-1949:2017
4. 越智 友洋:遺伝性乳がん:成人病と生活習慣病:47 : 7 :855-860:2017
5. 野村 秀高ら:当科におけるHBOC診療の実際:癌と化学療法:44:2:116-120:2017
6. 関根正幸:遺伝性乳がん卵巣がん(Hereditary Breast and Ovarian Cancer: HBOC):新潟医学会雑誌:130:3:2016
7. 遠山竜也 :第160回 名古屋市立大学医学会例会 特別講演 遺伝性乳がんについて:Nagoya Med. J:5:121―128:2017

8. Antoniou A et al. : Average Risks of Breast and Ovarian Cancer Associated with BRCA1 or BRCA2 Mutations Detected in Case Series Unselected for Family History: A Combined Analysis of 22 Studies:Am J Hum Genet.:72:117-1130:2003

9. McLaughlin JR et, al:Reproductive risk factors for ovarian cancer in carriers of BRCA1 or BRCA2 mutations: a case-control study.:Lancet:8:1:26-34:2007
10. 松山純子ら:183 個の同時多発性病変を認めた若年者胃癌症例 :日本消化器外科学会雑誌:50:5:357-363 :2017
11.特定非営利活動法人日本 HBOC コンソーシアム 広報委員会 編集 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)を ご理解いただくために(ver.3) (http://hboc.jp/downloads/pamphlet_ver3.pdf)
12.遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き 2017年版 金原出版社

 

 

 

 

投稿者: 佐野産婦人科医院

2018.08.28更新

閉経後のデリケートゾーンのトラブルを訴える方が時々います。

閉経するとエストロゲンホルモンレベルが低下して、腟や外陰部の粘膜の代謝や再生が緩慢になり、腟壁全体が萎縮傾向になります。(このような状況をかつては萎縮性腟炎と呼んでいました。)

 

これにより腟の違和感や疼痛や不正性器出血を来します。 このエストロゲンの低下により、同様に外陰部の違和感・疼痛や尿道付近の不具合が生じます。

 

これら全ての不具合を閉経後性器尿路症候群(Genitourinary syndrome of menopause(GSM))と言います。

 

GSMはエストロゲンホルモンレベルの低下によるものなので、閉経後の方に限らず、閉経前の40代の方においても自覚することはあり得ます。

また、閉経したばかりの時は軽微であっても、時間の経過とともに病態が進んでいきます。

残念ながらいずれよくなるというものではありません。

 

 

どういう症状がありますか?

①局所症状 外陰・腟部の乾燥感、灼熱感、痒み、おりものが増える、不正性器出血

②下部尿路部症状 排尿時痛、頻尿、残尿感、尿意切迫感   

③性生活に関連する症状 腟の潤いの減少により、性生活による違和感、疼痛、出血

 

閉経後の方で以上の症状があれば、GSMを考えますが、以下の病気の可能性もありますので注意が必要です。

① 子宮がん ② 尿路感染症(いわゆる膀胱炎) ③ 子宮脱などの骨盤臓器脱  など

 

 

GSMの治療方法はありますか?

① 保湿剤や潤滑剤

性生活の疼痛緩和や腟乾燥感に対して局所に塗布するジェルがあります。

 

② 局所エストロゲン製剤

エストロゲン腟剤の使用により、腟の症状緩和が期待されます。 また、エストロゲンの腟投与で、腟だけでなく下部尿路部症状にも効果が認められます。

 

③ CO2レーザー

腟へのCO2レーザー照射により、腟壁の修復が起こり、腟乾燥感や違和感や痛み、性生活の不具合を軽減するという報告があります。 (当院ではこの治療はできません。)

 

最後に

最近の女性はとても元気です。しかしながら年齢による体の変化が出る方もあり、GSMもその一つです。デリケートゾーンの不具合で悩んで、日常生活を不便に感じているのであれば、一度婦人科にご相談していただけたらと思います。

 

 

元気な中年

 

 

院長  今野 秀洋

 

 

参考文献)

1. Nappi RE et al. ; Women's voices in the menopause: results from an international survey on vaginal atrophy. : Maturitas : 67(3):233-82

2. Suckling J et al. ; ocal oestrogen for vaginal atrophy in postmenopausal women. : Cochrane Database Syst Rev : 18(4): 2006

3. Palacios S ; Managing urogenital atrophy. : Maturitas : 20:63(4):315-8:2009

4. Santen RJ et al. ; Postmenopausal hormone therapy: an Endocrine Society scientific statement. : J Clin Endocrinol Metab : 95(7Suppl 1):s1-s66:2010

5. Mitchell CM et al. ; Efficacy of Vaginal Estradiol or Vaginal Moisturizer vs Placebo for Treating Postmenopausal Vulvovaginal Symptoms: A Randomized Clinical Trial. : JAMA Intern Med : 1:178(5):681-690:2018

6. 中田 真木ら;骨盤臓器脱の診療における閉経後性器尿路症候群: 日本女性骨盤底医学会誌;14(1):107-111:2017

7. 中田 真木;閉経後のフェミニンゾーンの不具合について genitourinary syndrome of menopauseとは: 更年期と加齢のヘルスケア:16(1):130-135:2017

8. 産婦人科 診療ガイドライン 婦人科外来編 2017 日本産婦人科学会

投稿者: 佐野産婦人科医院

2018.04.24更新

お尻に優しい温水洗浄便座は、今や日本中のどこのトイレでみかけるようになり、多くの方々が使用されています。

 

 

温水洗浄便座 

 

 先述した細菌性腟症と温水洗浄便座の習慣的使用との関係についての研究論文があるので、今回はその内容についてお話したいと思います。


通常は腟内に常在する乳酸桿菌が、脱落した腟粘膜上皮のグリコーゲンを乳酸に変え、腟内をpH4.5以下の酸性に保つことで、雑菌の侵入や増殖を防いでいます。
「細菌性腟症」とは、なんらかの理由で正常細菌叢が乱れた状態に陥った状態をいいます。
そうするとオリモノがいつもと異なったり、においが変わったりします。

また細菌が上行して子宮内に感染すると、子宮内膜炎や卵管炎さらに上行して骨盤腹膜炎となり、発熱や腹痛を引き起こすこともあり注意が必要です。

 

 

 


荻野先生が19歳から40歳の計268人で腟内分泌物を調べた報告によると、「習慣的に温水洗浄便座の使用している方は、細菌性腟症になりやすい傾向がある」とのこと。


(1)温水洗浄便座使用と腟内の正常細菌叢の有無の関係について

温水洗浄便座fig1

 

習慣的に温水洗浄便座の使用している人のほうが、本来は腟内の雑菌の侵入や増殖を防いでいる乳酸桿菌が著しく減少あるいは消失していました。

 

 

(2)温水洗浄便座使用と腟内で見られた細菌との関係

 

温水洗浄便座fig2

 

腟内分泌物に大腸菌などの腸内細菌による汚染が認めた症例を調べたところ、92%が温水洗浄便座を習慣的に使用していました。

 

以上より、温水洗浄便座を習慣的な使用が、常在する乳酸桿菌を減少させあるいは消失させ、肛門周囲の雑菌を腟内で繁殖させている可能性があることがわかりました。

 

 

細菌性腟症の原因がこれだけではなく他にも色々ありますが、もし細菌性腟症を繰り返していて、よく考えてみたら温水洗浄便座を習慣的に使用していますというのであれば、しばらく温水洗浄便座の使用を避けてみても良いかもしれません。

 

院長 今野 秀洋

 

 

(参考文献)
1. Ogino M, et al: Habitual use of warm-water cleaning toilets is related to the aggravation of vaginal microflora.: J Obstet Gynaecol Res: 36: 5: 1071-4: 2010
2. 荻野 満春ら:習慣的温水洗浄便座使用と細菌性腟症 切迫早産・早産発症の潜在的リスク要因となる可能性:関東連合産科婦人科学会誌:52:4:799-803:2015

投稿者: 佐野産婦人科医院

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