スタッフブログ

2016.08.08更新

今年は流行性耳下腺炎の感染数が、ここ数年で一番多いようです。



以前のブログでもお話ししましたが(http://www.sanolc.com/blog/2015/12/post-71-1237172.html)、妊娠初期に流行性耳下腺炎に罹患すると、自然流産が増加するという報告があります。(流産や早産率は変わらないという報告もあります。)

流行性耳下腺炎に対する抗体を持たない妊婦は、2割以上いると言われています。

おたふく風邪感染者との濃厚な接触はなるべく避け、手洗い・うがいに心がけるようにしてください。

院長 今野 秀洋

投稿者: 佐野産婦人科医院

2016.07.23更新

妊娠おめでとうございます。
最近は30代の出産が多いのですが(ここ最近の当院における出産年齢は、中央値32歳です。)、中には19歳以下の方の妊娠・出産も時々見られます。

日本では、平成27年には、19歳以下の方のうち11927人(全出産数のうち約1.2%)が出産をしていました。

若ければ問題はないのか?
実は、そうとも言い切れません。

外国のデータですが、早産(9.3%)低出生体重児(17.2%)妊娠高血圧症候群(9.9%)などのリスクが上がると言われています。

アジア人のデータでも早産のリスクが上がるようです。
         (19歳以下 vs 20歳以上:13.0% vs 7.0%)


また、死産や早期新生児死亡も高齢妊娠も多くなりますが、19歳以下の妊娠も20−30代の妊娠と比べて増加する傾向があります。







しかし、悪いことばかりではありません。

まず、何と言っても体力があります。
出産、育児は体力勝負です。
先日も、当院で出産された10代の方、入院中の授乳の合間に、なんと勉強をしている方もいました。


また、帝王切開率も低くなります。 
(19歳以下 vs 20歳以上:4.1% vs 12.6%)


無条件で10代の妊娠や出産を勧めているわけではありません。
若いから大丈夫とは言えませんが、若さゆえのメリットも少なからずあります。
人生経験が少ない面は、家族や我々医療スタッフのサポートで補うようすれば良いのかもしれませんね。

院長 今野 秀洋

(参考文献)
1. Bozkaya H et,al.;a retorospective analysis of adolescent pregnancies; Gynecol Obstet Invest. ;42(3):146-50;1996
2. Lao TT et,al;The obstetric implications of teenage pregnacy ;Hum Reprod. ;12(10):2303-5;1997
3. 桑原 慶充ら;【高年妊娠・若年妊娠】 若年妊娠 若年妊婦における妊婦健診・分娩時の留意点;周産期医学;43巻7号 ;895-898;2013
4. 望月 善子;10代妊娠の現状と問題点;産婦人科治療;91(5):496-501;2005
5. 日本妊娠高血圧学会:妊娠高血圧症候群管理ガイドライン2009;2009

投稿者: 佐野産婦人科医院

2016.06.14更新

「私、痔になりました・・。」という相談がよくあります。

痔(=痔核)は、肛門外側に突出する外痔核と、排便時に出血をする内側にできる内痔核がありますが、痔核の合併は、妊婦さんの85%くらいにあるという報告もあるくらい、多いと思います。



どうして妊娠中に痔になってしまうの?

幾つかの理由があります。
1. 妊娠に伴い増大する子宮が、骨盤の静脈や下大静脈を圧迫することにより、静脈が拡張し、肛門の静脈が怒張して痔核になる。
2. 出産に備えて血液量が増えるので、それに伴い静脈が拡張して、肛門の静脈が怒張する。
3. 妊娠中に増えるホルモンのプロゲステロンが、静脈拡張を促す。また、腸の動きを弱くして、便秘になりやすくなり、痔核が生じやすい。


また、妊娠中は貧血をきたしやすく(http://www.sanolc.com/blog/2013/10/post-5-644018.html)、その際は鉄剤を内服しますが、鉄剤により便秘になりやすく、これにより痔核を生じることがあります。

調べてみると、痔核からの出血が多くてひどい貧血となり、妊娠中に手術を行ったという報告もありました。


さらに出産でいきむと痔核になりやすくなります。
長引く陣痛の場合や、大きなお子さんの分娩の際も、痔核が生じやすいです。

また、出産回数が多い方は、痔核のある方が多いです。

しかし、だいたいの方は、出産後に妊娠・出産の影響がとれてきて、しばらくすると治るようです。


まとめると

妊娠によって、多くの方は痔になります。

なるべく便秘しないように、朝・昼・晩の3食をしっかりとることにより食事リズムを整え、食物繊維や水分を十分にとり、腸内環境を整える食品を摂るように心がけましょう。

院長 今野 秀洋

(参考文献)

Lim Soo Soo,et al.;妊娠中の症候性痔核の管理における局所hydrocortisoneクリームとHai's Perianal Supportとの比較 予備的試験(Comparing topical hydrocortisone cream with Hai's Perianal Support in managing symptomatic hemorrhoids in pregnancy: A preliminary trial);J Obstet Gynecol Res ;41;2 ;238-247;2015
2. Gojnic M,et al.;The significance of detailed examination of hemorrhoids during pregnancy.; Clin Exp Obstet Gynecol;32;183-184;2005
3. 加藤 一朗;【妊婦・褥婦が一般外来に来たら エマージェンシー&コモンプロブレム】 よくある外来プロブレムとその対応 妊婦・褥婦と便秘・肛門疾患; 総合診療;26;1号;46-47;2016
4. 松浦 玲;【周産期の電話相談~テレフォントリアージ~】 産科編 妊娠12週から36週まで 痔が痛むのですが;周産期医学;45;11;1547-1548;2015
5. 中島 義之ら;妊婦健診のすべて-週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント】 妊娠週数ごとの健診の実際 妊娠22から36週まで 診断と外来対応 妊婦のマイナートラブル;臨床婦人科産科 ;69;4;233-238;2015
6. 高久 秀哉ら;妊娠中に高度の貧血をきたした内痔核の1例;外科;76;5;571-573;2014
7. 松田 秀雄;産婦人科処方のすべて-すぐに使える実践ガイド 産科編 妊娠中のマイナートラブル 痔/便秘/下痢/胃腸炎;臨床婦人科産科;68;4;320-322;2014
8. 渡辺 比呂子ら;経腟分娩後の初回排便時期 初産婦と経産婦の比較;周産期医学;43;1;111-115;2013
9. 山崎 峰夫;【「なぜ起こる?」を知って上手に乗り切る 産前・産後のマイナートラブル解決法33】 産前編 痔;ペリネイタルケア;29;5;451-452;2010

投稿者: 佐野産婦人科医院

2016.05.12更新

よく高齢妊娠・高齢出産という言葉を聞いたことがあると思います。

日本では、35歳以上の方の妊娠・出産を指すのではないかと思います。
外国では、35歳以上の初産婦、40歳以上の経産婦を指すこともあるようです。
        (個人的には、どちらかというとこちらの方が合っているような気がします。)

昭和60年の35歳以上の方の出産数は、101970人でこれは全体の7.1%にあたりましたが、平成26年には277399人で26.9%と増えています。





当院においてもここ最近の35歳以上の出産は、約3割です。

「私、42歳初産ですが、別に問題ないですよね。最近の医療も進歩しているから。」という方がいらっしゃいました。

また、40歳の方から「今まで二人生んでいるから、今回も大丈夫ですよね。」という声がありました。

一方、「高齢妊娠ですが、赤ちゃんに異常ありますか?」という質問もよくあります。

今回は、高齢妊娠・高齢出産についてお話ししようと思います。

高齢妊娠での問題は何ですか?
主に以下のリスクが増えると言われています。






35歳の初産ですが、問題ありますか?
35歳初産のグループ(1054人)と25歳〜29歳のグループ(890人)のグループで比較した海外の研究があります。

35歳初産のグループの方が、
子宮筋腫合併(http://www.sanolc.com/blog/2014/04/post-29-824083.html)が多く(OR 2.25 95%CI 1.52-3.33)、妊娠高血圧症候群の合併が多く(OR 1.27 95%CI 1.09-1.48)、
産後出血が多くなる(OR 2.52 95%CI 1.18-5.42)傾向がみられました。

また、帝王切開も半数近くになります(43.7% vs 27.5%)。

今回は43歳での妊娠ですが、問題ありますか?
海外の研究ですが、20歳〜29歳のグループと40歳〜44歳のグループ及び45歳以上のグループで比較検討を行っています。






20歳〜29歳のグループと比較すると、妊娠糖尿病妊娠高血圧症候群前置胎盤http://www.sanolc.com/blog/2014/06/post-39-914941.html)の発症リスクが、増加しています。

また、陣痛促進剤が必要となることや重度の会陰裂傷帝王切開も年齢を重ねることに増えます。
周産期死亡胎児・新生児死亡も同様に増えています。

別の研究によると、先天性の重度な奇形による胎児死亡は、母親の年齢とともに増加しますが、原因不明の胎児死亡も同様に母親の年齢とともに増えています。

また、40歳以上に限定したデータによると、
妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群・前置胎盤・器械分娩率・帝王切開率・陣痛促進率は、経産婦であっても増加する傾向があります。

染色体異常が心配です。
染色体異常の発生率は、母親が15歳以下の場合、1/1000ですが、35〜39歳の場合6.3/1000、40歳以上の場合23.7/1000です。
(確かに、母親の年齢が上がるにつれて増えています。しかしながら、この数字は高いとも取れますが、多くの人は、例えば40歳以上でも1000人中976人は正常であるわけですから、大丈夫という解釈もできると思います。)

流産・早産のリスクが増えますか?
年齢とともに流産のリスクは増えます。35歳未満と比べて、35-39歳で1.8倍、40歳以上だと2.8倍くらい増えます。

早産に関しては、増えるという報告と変わらないという報告があります。

子宮外妊娠が増えるって本当ですか?
外国のデータで、子宮外妊娠は15歳〜29歳で11.8人/1000妊娠とすると、35〜44歳のグループでは、41.0人/1000妊娠と3.5倍近く増えます。

日本のデータありますか?
242715人を集積したデータより、20歳以下、35〜39歳、40歳以上のグループを抽出して検討したところ、以下の結果が得られました。

妊娠高血圧症候群  (順番にRR 0.68、1.66、2.55)
37週前の破水       (RR 0.96、1、1.14)
前置胎盤              (RR 0.36、1.76、2.19)
常位胎盤早期剥離  (RR 0.67、19.9、4.1)

高齢妊娠だとリスクがいくらか上がります。


結論です。
現在、3人に一人が35歳以上での出産であり、高齢出産は決して珍しくありません。

だからと言って、高齢妊娠が危なくないということにもなりませんし、また、出産経験があるからといって今回も順調にいくとは必ずしも言えません。

一方、(誤解を招かぬようお伝えしたいと思いますが、)冷静にこれら結果を検討してみると、いずれのリスクも数倍上がるということであり、数十倍上がるというわけでもないので、とても危なすぎる出産とも言えないと思います。

大切なのは、いくらかのリスクはあるんだと自覚して、慎重に、大事に大事に妊娠期間を過ごすように気をつけていくことではないかなと思います。

院長 今野 秀洋




(参考文献)
1. Jacobsson B, et al:Advanced maternal age and adverse perinatal outcome.
:Obstet Gynecol:104(4):727-33:2004
2. Fretts RC,et al:Causes of fetal death in women of advanced maternal age.
:Obstet Gynecol:89(1):40-5:1997
3. Bianco A, et al:Pregnancy outcome at age 40 and older:Obstet Gynecol. 87(6):917-22:1996
4. Prysak M, et al.:Pregnancy outcome in nulliparous women 35 years and older.
Obstet Gynecol.:85(1):65-70:1995
5. Cleary-Goldman J, et al.:Impact of maternal age on obstetric outcome.
:Obstet Gynecol.:105(5 Pt 1):983-90:2005
6. Hollier LM,et al.:Maternal age and malformations in singleton births.
:Obstet Gynecol:96(5 Pt 1):701-6:.2000
7. Storeide O, et al.:The incidence of ectopic pregnancy in Hordaland County, Norway 1976-1993:Acta Obstet Gynecol Scand:76(4):345-9:1997
8. Matsuda Y,et al.:Impact of maternal age on the incidence of obstetrical complications in Japan:J Obstet Gynaecol Res:37(10):1409-14:2011
9. Eriksen HL,et al.:Predictors of intelligence at the age of 5: family, pregnancy and birth characteristics, postnatal influences, and postnatal growth:PLoS One:13;8(11):e79200:2013
10. 青木 弘子ら:高齢出産と早産:産婦人科治療:103(4):355-361:2011

投稿者: 佐野産婦人科医院

2016.04.12更新

なんか、私の赤ちゃん、黄色いですけど・・。と心配な声が時々あります。




黄疸とは、何らかの原因により、血中ビリルビンの上昇により皮膚や眼瞼結膜が黄染する状態のことです。

ビリルビンの多くは赤血球が壊れる際にヘモグロビンから出てきます。成人では、肝臓で代謝して胆道を通って、糞便中に排泄されますが、生まれたての赤ちゃんの場合、肝臓での処理が十分ではなく、また腸内に排泄しても再吸収を比して行いやすく、ある程度の黄疸は必然的に起こりやすいです(新生児生理的黄疸)。

新生児の生理的黄疸は生後1〜2日から出現し、生後5〜6日にピークに達して、その後自然消失します。

つまり、どんな子でも退院間際までに、黄疸が生じてもおかしくはありません。多くの子はその後自然によくなっていきますが、時々黄疸が遷延する子もいます。

我々、日本人、アジア人はビリルビン値が高くなる傾向はあるようです。



遷延黄疸の主な原因
①母乳栄養が主体
②体重増加不良
③感染症
④早産児
⑤血液型不適合
⑥頭血腫




など、色々原因はあります。

ちなみに、母乳性黄疸は、成熟児の場合、母乳を続けていても3ヶ月以内の自然消失し、予後良好です。

黄疸になると何が困るの?

稀ですが、ビリルビン毒性による神経障害をきたすことが報告されています(ビリルビン脳症(核黄疸))。

臨床症状として、筋緊張低下、嗜眠、哺乳力減弱、痙攣、難聴などです。
I、II、III期と分かれているが、II期に至ると不可逆性であり、後遺症を残す可能性があります。



赤ちゃんは、生まれてから毎日、ビリルビン値の確認をします。




図の基準値を超える場合は、光線療法の適応となり、治療を開始します。

光線療法とは、紫外線を除いた青白色光を24時間皮膚に照射する方法です。
光線がビリルビン値を下げるメカニズムは、①ビリルビンを分解すること、②ビリルビンを水に溶けやすい形に変えること、③肝臓でのビリルビン排出を促進させる、④皮膚の血流を増加させると考えられています。

なぜ、新生児生理的黄疸はあるのでしょうか?

最近はこんな考えがあります。
分娩時や新生児早期では低酸素状態に対応する過程で過酸化酸素やラジカルと呼ばれる不安定な酸素が発生し、それを除去する役割をビリルビンが担っているようです。

そうすると、ある程度の黄疸はむしろ赤ちゃんにとっては、必要な体の変化なのかもしれませんね。

院長 今野 秀洋

(参考文献)
1.黒川大輔;黄疸;周産期医学;46;1;7-9;2016
2.新生児の管理と治療;日産婦誌;60;10;N-445-447;2008
3.山内芳忠;遷延性黄疸;小児診療;4;37;557-561;2011
4.仁志田博司;黄疸の基礎と臨床;新生児学入門;301-315;2012
5.村田文也ら;新生児高ビリルビン血症の光線療法;小児外科・内科;5;301-11;1973
6.井村総一;新生児黄疸の治療:光線療法の適応基準と副作用防止;日本臨床;43;1741-1748;1985
7.神戸大学医学部小児科編."高ビリルビン血症の管理".新版 未 熟児新生児の管理;日本小児医事出版社;225-240;2000
8.李容桂;核黄疸(ビリルビン脳症)の発祥予知と予防;母子保険情報;62;9-16;2010

投稿者: 佐野産婦人科医院

2016.04.01更新

妊婦健診で超音波検査を行っていると赤ちゃんにへその緒(臍帯)がからまっているのかもしれない(=臍帯巻絡)と思える時が時々あります。

臍帯を通して赤ちゃんはお母さんから酸素や栄養ももらっているものですから、臍帯巻絡していると言われるとなんだか不安になりますね。






実は、臍帯巻絡は、全分娩の4人に一人は見られます。

臍帯巻絡している場合は、危ないのでしょうか?

①2000年のアメリカのオクラホマからの13757人の分娩のデータによる報告によると、臍帯巻絡を認めた場合の死産する可能性は、OR 1.029(CI 0.64-1.604)でした。
つまり、非常にわずかにですが死産率が上がっています。

②2013年日本の昭和大学の4152人の分娩データによると、27%が臍帯巻絡しており、そのうち96%が首に臍帯巻絡していました。



しかしながら、帝王切開率や鉗子・吸引分娩率(急いで分娩にしなくてはならないケースということだと思いますが)で比較してみると、初産においては頸部臍帯巻絡があっても巻絡なくても、帝王切開率や鉗子・吸引分娩率はあまり差がありませんでした。

一方、頸部以外の臍帯巻絡が認められた場合は、帝王切開率や鉗子・吸引分娩率が上がることがわかりました。

経産婦では、どの群でも帝王切開率や鉗子・吸引分娩率はあまり変わりはありませんでした。

また、初産では2回以上巻絡、経産婦では3回以上巻絡を認めると胎児機能不全(わかりやすく言うと分娩進行中に赤ちゃんが苦しいサインを出す)の頻度が増えることもわかりました。

③2011年のカメルーンの9275人の分娩をまとめた報告によると、16.2%に臍帯巻絡を認め、そのうちゆるく巻いているのが75.81%、きつく巻いているのが24.18%。

確かにきつく巻いている場合は、アプガースコアが7点より低い(簡単に言うと、生まれた直後の赤ちゃん元気さの点数がやや低い)傾向があるものの、帝王切開率や新生児集中治療室に入院する率は、巻絡なしの群とあまり変わらないとのことでした。

まとめると、
初産の場合は帝王切開率や鉗子・吸引分娩率が上がるかもしれません。
頸部以外に巻いていたり、回数多く巻かれたり、きつく巻かれていると、胎児機能不全となったり、アプガースコアが7点より低くなることはあります。
しかしながら、新生児集中治療室に入院する率は、増えるわけではないようです。



治療や予防方法はありますか?
妊娠経過中に超音波検査で臍帯巻絡と診断されても、治すことはできません。

我々産婦人科医は、妊娠経過中は、超音波検査やノンストレステストなどを用いて元気さを評価し、分娩進行中は、胎児心拍モニターで、異常な波形が出ていないか注意していきます。
また赤ちゃんの状態により、吸引・鉗子分娩を行います。

しかしながら、臍帯巻絡を起こしているケースは比較的多く、先にまとめたように注意をしてみていく必要はありますが、すごく心配しすぎることもないのではないかと思います。

院長 今野 秀洋


(参考文献)
1. Carey JC et,al. ; Nuchal cord encirclements and risk of stillbirth.;
Int J Gynaecol Obstet. ;69(2):173-4;2000 May;
2. 大瀬 寛子ら;臍帯巻絡の分娩経過に与える影響の部位・回数別検討;日本周産期・新生児学会誌;49:1;256-259;2013
3. JD Kemfang Ngowa et al.; Nuchal Cord and Perinatal Outcome at the Yaounde General Hospital, Cameroon;Clinics in Mother and Child Health; 8;1-4;2011
4. 山出 一郎ら;臍帯巻絡の正期単胎出生児に及ぼす影響に関する検討ー児の出生体重を中心としてー;京都医学会雑誌;62(1);105-109;2015
5. 鈴木 信孝ら;臍帯巻絡と難産ー新しい概念:臍帯難産(cord dystocia)-;産婦人科の実際;48(6);887-891

投稿者: 佐野産婦人科医院

2016.03.17更新

妊娠がわかって喜ばしく思われてると思います。
一方、妊娠が進んでいくにつれて、色々心配なことも出てくることがあります。

実はその妊娠中のストレスが、早産と関連することがあります。


アメリカのノースカロライナで、1962人の妊婦さんで調べたところ、妊娠に関して不安が生じてストレスとなった場合、不安がなかった方に比べて約2倍早産になっているようです。

妊娠とは関係のない出来事に関連したストレスでも、早産になりやすくなるようです。

また、うつ状態も早産のリスクになるという別の報告もあります。





この世の中で生きていて、ストレスフリーで生きていくことは難しいかもしれません。しかしながら、自分自身で工夫して気分転換したり、周囲の人に相談してみたりして、上手にストレスを溜めないようにしていきましょう。

院長 今野 秀洋


(参考文献)
1. Dole N et, al.;Maternal stress and preterm birth.;Am J Epidemiol;1;157(1):14-24;2003
2. Straub H et, al.;Antenatal depressive symptoms increase the likelihood of preterm birth.;Am J Obstet Gynecol;207(4):329.e1-4 2012

投稿者: 佐野産婦人科医院

2016.02.25更新

以前、妊娠中の旅行についてblogで紹介しました。
http://www.sanolc.com/blog/2013/09/post-3-633787.html

また昨年は飛行機の機内で分娩となり、成田空港に緊急着陸となったケースがありニュースとなりました。
(この件に関しては、花岡先生が論文にしており公表されております。)


飛行機に乗ってもよいですか?

American Congress of Obstetricians and Gynecologists (ACOG)は、合併症の無い空の旅はおおむね安全であると言っています。

合併症って、例えば何ですか?
Centers for Disease Control and Presentation (CDC)は、以下の状況にあるときは妊娠中に旅行すべきではないとしています。






特に、直前に子宮収縮感を感じていたり、不正性器出血がある場合はお勧めできないと思います。

時期はいつでも大丈夫?
後半は、陣痛や破水などが起こりうるので控えた方がよいと思います。
また、多くの航空会社では35・36週までは搭乗が許可されますが、それ以降は医師の診断書が必要となるようです。
そうすると、妊娠中期までがよいと思われます。


飛行機に乗る際、気をつけることは?
妊娠中は、深部静脈血栓症やエコノミークラス症候群のリスクが上がるので、こまめの水分補給や足を動かすことようにした方が良いと思います。


まとめると

妊娠に合併症の無い場合に、空の旅はおおむね安全ではあります。

しかしながら、以前にもお話したように、もし旅先にて子宮収縮や出血などが生じた場合、現地での長期入院が必要となる場合もあり、妊婦さん自身やその家族に精神的、身体的負担を強いられることとなるので、私達産婦人科医師の立場としては、単なるレジャー目的の旅行は積極的には勧めるべきではないと考えております。


旅行を計画立てた際は、必ずしも良い返事をしてもらえないかもしれませんが、是非とも事前に主治医に相談して下さい。


院長 今野 秀洋

(参考文献)
1.花岡正智、戸石悟司;Air Travel and Pregnancy 空の旅と妊娠;日本周産期・新生児医学会雑誌;51(4);1135-1141;2015
2.ACOG Committee on Obstetric Practice:ACOG Committee Opinion No.443:Air travel during pregnancy. Obstet Gynecol ;114;2009
3. CDC homepage; http://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2014/chapter-8-advising-travelers-with-specific-needs/pregnant-travelers; 2014
4. 今野秀洋ら;妊娠中の旅行に関する危険性 : 東京近郊にある巨大テーマパークからの産科緊急受診に関する検討より;日本周産期・新生児医学会雑誌;48(3);595-600;2012

投稿者: 佐野産婦人科医院

2016.02.19更新

妊婦健診では、毎回尿検査があります。
調べている項目は、尿糖と尿タンパクです。
尿糖は、糖尿病の確認(妊娠に伴い、糖尿病になるケースがあります)というのはわかると思います。





では、尿タンパクとは何を見るための検査なのでしょうか?


腎臓には、血液中の老廃物をろ過する役割があります。
通常、タンパク質などの大きな物質はほとんどろ過されません。
しかし、腎障害が起こるとタンパク質がしみ出ることがあります。

つまり尿タンパクは、腎障害の指標になります。

妊娠中に起こりうる腎障害とは、妊娠高血圧腎症(昔でいう妊娠中毒症)のことを指します(正確に言うと、他の疾患もあります)。

つまり尿タンパク検査は、妊娠高血圧腎症かどうかを調べる検査となります。


ちなみに妊娠中毒症には、血圧が上がる(妊娠高血圧症候群)場合と高血圧+タンパク尿(妊娠高血圧腎症)場合があり、妊娠高血圧腎症の方が予後不良です。

タンパク尿が陽性と言われました。私は妊娠高血圧腎症ですか?
現在の妊娠高血圧腎症の定義では、高血圧が先行していることが必須となります。
つまり、タンパク尿が陽性のみでは、妊娠高血圧腎症ではありません。

また多くの病院では、dipstick test(簡易の尿テスト)で検査していると思います。


尿タンパクが30mg/dl以上の場合、dipstick testでは検出率はほぼ100%ですが、陽性的中率が50〜60%と高くはありません。
要するに偽陽性も少なくないのです。

それゆえ尿タンパク陽性のみでは、すごく心配する必要はないと思います。

しかしながら、尿タンパク(1+)が二回以上検出された場合、のちに妊娠高血圧腎症に移行する場合があります(感度33%)。
つまり、現行の基準では妊娠高血圧症候群とは診断されないが、のちに妊娠高血圧腎症に移行する可能性があります。

別の話ですが、
まず血圧上昇して、その後尿タンパク検出されるケースは、15.2%.
一方、まず尿タンパク検出のみであったが、その後血圧上昇するケースは51.4% でした。

つまり、尿タンパク検出先行型の方が、予後の良くない妊娠高血圧腎症に移行する可能性が高いようです。


まとめると
尿タンパク陽性と言われても、偽陽性の可能性もあり、すごく心配する必要はないが、のちに妊娠高血圧腎症に移行する場合もあるので、注意した方が良いと思います。


尿タンパクが指摘されていた方が、急にむくみが出てきて、体重が急に増えた場合は、気になる変化かもしれません。

院長 今野 秀洋

(参考文献)
1.平嶋周子ら;妊娠高血圧と妊娠高血圧腎症;産婦人科治療;102(5);846-850;2011
2.森川守ら;蛋白尿, 浮腫の評価のポイント;産科と婦人科;1(21);21-26;2015
3.Morikawa Met al.;Pregnancy outcome of women who developed proteinuria in the absence of hypertension after midgestation;J Ternat Med;36:419-424; 2008
4.日本妊娠高血圧学会編;妊娠高血圧症候群の診療指針2015
5. 日本産婦人科学会;産婦人科診療ガイドライン産科編2014

投稿者: 佐野産婦人科医院

2016.01.07更新

よく、「今日は満月だから生まれるわよ」という話を聞きます。
その他、潮の満ち引きとか気圧も分娩と関連があるのではないかという話もあります。

実際のところ、このような自然現象と分娩との間に関係があるのでしょうか?
いくつかの研究があるので調べてみました。

①分娩が多い時間帯は?
135人の自然分娩を調べた研究によると、陣痛発来は夜中の1〜3時が27人(約2割)と多いようです。また分娩も21時〜2時の間が多く、この間で約1/3の方が生まれていました。

②月の満ち欠けと分娩との関係は?
564039人を調べた研究があります。月の満ち欠けを8つのフェーズに分けて解析しましたが、どのフェーズでも有意差なく、ほぼ均等に生まれていました。




③気圧と分娩との関係は?
2142人の自然分娩を調べた研究によると、1000hpa以下(つまり低気圧時)に破水が増加する傾向がありました(p<0.01)。
また、1日の気圧の変動が大きくなる(±10.2hpa)と分娩が増える傾向がありました(p<0.01)。





一方、両者には関係がないというデータもあります。

④潮の満ち引きと分娩の関係は?
313人を調べた研究によると、潮の満ち引きと前期破水との関連は見出せませんでした。


まとめると
(1) 分娩は夜間が比較的多いです。
(2) 気圧と破水は関係があるかもしれません。


(1)に関しては、なるべく外敵が少ない時間帯に産もうという自然の摂理なのかもしれませんね。

分娩には、胎盤や胎児からのいくつかのホルモンが関連していると言われています。
単一因子だけではなく、いくつかの機序が組み合わさって分娩になるのではないかと思われます。

分娩と月の満ち欠けとは関係ないようでしたが、どちらも神秘的なものであり、それに関連付けようとしたことは、いくらかロマンのある話ではないかなあと思いました。

院長 今野 秀洋

(参考文献)
1. 芥川 修;自然分娩と気圧との関連性;産婦人科の実際;55巻3号 Page543-548;2006
2. 灘 久代ら;陣痛発来と気圧の変化との関連性;日本看護学会論文集: 母性看護;33号 Page92-93;2002
3. 星川 由美子;自然現象と陣痛開始時刻・分娩時刻との関連について;茨城県母性衛生学会誌 19号 Page39-42;1999
4. 菊地 美帆ら;自然現象が分娩開始に及ぼす影響;新潟県立看護大学紀要;2巻 Page23-27;2013
5. 境原 三津夫ら;陣痛発来および前期破水と潮位の関連性;日温気物医誌;77巻2号 Page120-126;2014
5. Arliss JM, et al.;The effect of the lunar cycle on frequency of births and birth complications.;American Journal of Obstetrics & Gynecology. ;192(5):1462-4;2005

投稿者: 佐野産婦人科医院

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