スタッフブログ

2014.09.25更新

Rh式血液型とは?
以前、赤血球上にたくさんの種類の糖鎖があることを説明しました。
(不規則抗体について;http://www.sanolc.com/blog/2014/08/post-44-961617.html

Rh式血液型とは、C,c,D,E,eの5つの糖鎖(抗原)について識別した血液型です。
この中で特に抗原性が高い、D抗原の有無でRhプラス(陽性)、Rhマイナス(陰性)と分けております。

つまりRh陰性とは、D抗原を持たない赤血球を有することを意味します。


Rh陰性の頻度は?
日本人では0.5%、アメリカ・ヨーロッパの白人では15%、アフリカ人では4-6%みられ、日本人では稀であります。


どのタイミングが危ないか?
Rh陰性の女性が、Rh陽性の赤ちゃんを妊娠した場合、Rh不適合妊娠となり注意が必要となります。

第一子の妊娠時、分娩時に赤ちゃんの血液がお母さんの血液に混じる可能性があります。
この時にRh陽性赤血球に対する抗体(抗D抗体)を産生します。16%くらいに生じるのではないかと言われています。






この時点では、赤ちゃんに影響はありません。

次の妊娠時に、この抗体が胎盤を通して移行し、赤ちゃんに影響を与えます。






赤ちゃんへの影響は?
胎児の赤血球が溶血すると、胎児貧血がおこり、胎児水腫(全身のむくみ)、心不全が生じる可能性があります。
また、出生後に新生児貧血や黄疸を生じることもあります

胎児水腫 25%
出生後の赤ちゃんの貧血や高ビリルビン血症(いわゆる黄疸) 25〜30%

不規則抗体についてのblogの中でも述べましたが、Rh不適合妊娠の場合は重症化しやすく治療が必要になる事が多くなります。


どのような対応をとるのですか?
最初の妊娠時に(もしくはRh陰性の女性が、抗D抗体を有さない場合)抗D抗体を、作らないように予防します。

①分娩後に抗D免疫グロブリンを母親に注射します。
分娩時の出血の際に、赤ちゃん-母親間で血液が交わる可能性があります。この時に抗D免疫グロブリンを母親に投与して、感作を防ぎます。

分娩後72時間以内の抗D免疫グロブリン投与によって、産後6ヶ月時の感作率は、risk ratio 0.04, 95% CI 0.02〜0.12)と低くなります。
また次回妊娠時の抗D抗体陽性率は、risk ratio 0.14, 95% CI 0.06〜0.38)と著明に低下します。

②妊娠28週頃に抗D免疫グロブリンを母親に注射します。
妊娠28週以降に体内での赤ちゃん-母親間で血液が交わる可能性が増えると言われており、このタイミングで抗D免疫グロブリンを投与することによりさらに、感作する機会を減らせると言われております。

いずれも保険適応の予防方法です。

また、理論上は妊娠8週以降に赤ちゃん-母親間で血液が交わる可能性があります。
日本の産科ガイドラインでは、妊娠7週以降まで児の生存が確認できた自然流産後、人工流産後、異所性妊娠(子宮外妊娠など)、腹部打撲後、羊水検査、外回転術後などにも抗D免疫グロブリンを投与することも勧められています。



副院長 今野 秀洋



(参考文献)
宮崎 亮一郎;Rh不適合妊娠の管理およびその治療. 日本産科婦人科學會雜誌  日本産科婦人科學會雜誌, 1999; 51(2) N-43 (http://www.jsog.or.jp/PDF/51/5102-43.pdf)
2. 大戸斉;新生児溶血性疾患と母児免疫. 輸血学(改訂第3版);中外医学社 2004:512-521
3. American College of Obstetricians and Gynecologists: ACOG Practice Bulletin No.75: 
management of alloimunization.; Obstet Gynecol 2006;108: 457-464
4. Crowther CA, et al.; Anti-D adminition after childbirth for preventing Rhesus alloimunization.; Cochrane database syst Rev2000:(2)
5. American College of Obstetricians and Gynecologists: ACOG Practice Buletin No.4: prevention of Rh D alloimunization (May1999). ; Int J Gynaecol Obstet 1999;66:63-
6. Statement from the consensus conference on anti-D prophylaxis. 7 and 8 April1997.; The Royal College of Physicians of Edinburgh. ; The Royal College of Obstetricians and Gynaecologists, UK. Vox Sang1998:74:127-128                                                           7. Bowman JM. Chown, et al.; Rh isoimunization during pregnancy:antenatal prophylaxis. ;Can Med Assoc J ; 1978:118:623-627                                                                        8. Jabara S, et al.; Is Rh immune globulin neede in early first trimester abortion? ;A review.; Am J Obstet Gynecol ;2003:188:623-627                                                        9.日本産婦人科学会 産婦人科診療ガイドラインー産科編2014

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.09.06更新

最近、デング熱がニュースで話題となっております。

デング熱とは?
デングウィルスによって感染します。
蚊が媒介となり、吸血する際に感染を生じさせます。

必ずしも症状があるわけではなく、不顕性感染も50〜70%あると言われています。

病態は、比較的軽症なデング熱と血小板減少が生じるデング出血熱があります。
さらにデング出血熱には、ショック状態を伴わない病態ショック状態を伴う病態があります。

2〜7日の潜伏期間のあとに発症します。

症状は?
ほぼ全例で発熱します。一度下がっても再び熱が上がるようです。

発熱        99.1%
血小板減少 66.4%
頭痛            57.6%
発疹            52.7% 
関節痛   31.1%
筋肉痛          29.1%

治療方法は?
現時点では、抗ウィルス薬はありません。
水分補給や解熱剤による対処療法となります。


妊娠中に感染するとどうなるの?
スリランカで妊娠中にデングウィルスに感染した15人の報告がありました。

(感染時期)
妊娠中期  3人
妊娠後期  12人

(病態)
デング熱           3人
デング出血熱(grade 1)   3人
デング出血熱(grade 2)   7人
デングショック症候群   2人

(母親の症状)
筋肉痛       8人
胸水貯留      3人
腹水貯留      1人
肝機能障害 14人  
妊娠高血圧症候群 1人  (重複あり)

(母親の予後)
集中治療室での管理 8人
血小板輸血               7人    
分娩周期の出血       1人    (重複あり)

死亡 2人

(胎児の予後)
胎児死亡 2人


症例数が少ない事と、日本と外国との医療の違いや人種の違いがありますので、そのまま評価できる内容ではないと思います。
しかしながら、妊娠中のデングウィルスの感染は、重症化しやすいの可能性はありますので注意が必要と思います。

私の先輩が書いたデング熱に関するblogもありますので、併せて参考にしてみて下さい。(http://www.shikyubijin.com/medical/dengue-ninshin/

副院長 今野 秀洋

(参考文献)

1.World Health Organization: Dengue and severe dengue. WHO Fact sheet No117 (Updated September 2014)
2.Kariyawasam S et al. ; Dengue infections during pregnancy: case series from a tertiary care hospital in Sri Lanka. :J Infect  
   Dev Ctries. 2010 Nov 24;4(11):767-75.
3.   デング熱診療マニュアル (第 1 版) (http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20140903-09.pdf)

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.08.14更新

妊娠初期に採血を行いますが、その検査項目の一つに血液型や不規則抗体というものがあります。

血液型についてご説明します。
有名なものにABO式があります。

これは赤血球表面などから出ている「糖鎖」というものの構造の違いで分類されています。


ABO式ではこのように分類されます。




例えばA型の血液には、A型の糖鎖をもつ赤血球とB型の血球の糖鎖にくっつく抗体(抗B抗体)があります。
B型の血液には、B型の糖鎖をもつ赤血球とA型の血球の糖鎖にくっつく抗体(抗A抗体)があります。

もしA型の人にB型の血液を輸血した場合、A型の血液に含まれる抗B抗体と輸血したB型赤血球
が結合してしまい、赤血球が壊れてしまいます(溶血といいます)。
(この際の輸血した抗A抗体は数が少ないのであまり問題となりません。)

輸血量が多いと、溶血からさらに腎不全、ショックと進行してしまいますが、これは他稿に譲ります。


実は赤血球には、このABOだけでなく、非常にたくさんの糖鎖があります。
(たくさんの血液型があると言えます。)




この糖鎖に対する抗体が不規則抗体です。
不規則抗体には、前述のABO式の様に自然にもともと持っているものと、輸血や妊娠をきっかけに抗体ができたものとがあります。

不規則抗体の頻度は?
全妊婦さんで2〜3%くらいです。

妊娠中に不規則抗体が問題になる理由は?
(お母さん側の問題)
先程述べたように、溶血しないように輸血をせざるを得ない場合は、持っている不規則抗体が反応しないような赤血球を探さなくていけません。

(胎児側の問題)
胎盤を通してお母さんの不規則抗体が胎児にいってしまうことがあります。
つまり胎児に輸血したような状態になるのです。

胎児の赤血球が溶血すると、胎児貧血がおこり、胎児水腫(全身のむくみ)、心不全が生じる可能性があります。

また、出生後に新生児貧血黄疸を生じることもあります。
溶血の結果生じる間接ビリルビンというものを妊娠中は胎盤を通して母親の肝臓で分解します。
生まれたばかりの赤ちゃんは間接ビリルビンの処理する能力が弱いので蓄積されやすいです。
この結果非常にまれですが、脳神経に障害をきたす場合もあります。

ただし、すべての不規則抗体が問題になるわけではありません。
分子量が大きくて胎盤を通過しずらいものや常温では反応しない抗体もあるからです。
特に図の中の「重要」と「可能性あり」が胎児に影響がある場合があります。





妊娠中の管理は?
溶血・黄疸で治療を要するのは、文献によると約25%くらいです。
(重症化しやすいRh不適合妊娠をのぞくと11.5%程度です。)

残念ながら予防方法はありません。
定期的に間接クームス検査や抗体価検査を行い評価して、また胎児超音波検査で、胎児水腫や胎児貧血のチェックをして早期発見をします。

そして生まれた後は毎日黄疸の検査を行います。


次回は、お母さんがRh陰性であった場合のお話をしようと思います。

副院長 今野 秀洋

(参考文献)
1. ACOG Practice Bulletin No. 75: Management of alloimmunization during pregnancy.
Obstet Gynecol. 2006;108(2):457-64.
2. 大戸斉;新生児溶血性疾患と母児免疫. 輸血学(改訂第3版);中外医学社 2004:512-521
3. 稲岡 千佳子ら;当センターにおける不規則抗体陽性妊婦と出生児溶血性疾患についての考察;Jpn J Trans Cell Therapy. 2013;59(3):86-491
4. 内川 誠;不規則抗体をもつ患者の輸血について;CLINICIAN 1994;432:699-701
5.日本産婦人科学会 産婦人科診療ガイドラインー産科編2014

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.08.02更新

最近、子宮頚がんが増えています。特に20代、30代の発症が増えており、発症年齢のピークが39歳と比較的若いです。

若年層(20〜40歳代)発症の場合は、がん克服の問題もありますが、進行がんであった場合、子宮全摘をします。そうすると今後妊娠することができないという問題点がでてきます。

若年者にて前がん病変ないし早期がんであった場合は、治療後にも妊娠が期待できるように、子宮頸部を図のように円錐状にくり抜いて、子宮を温存する手術(円錐切除術)を行います。
(早期発見の為に、子宮がん検診の受診をお勧めします。(http://www.sanolc.com/blog/blog/2013/10/



この治療で済む場合は、ほとんど方が治癒することができます。そして妊娠が可能です。
しかしながら妊娠をする観点から言うと、少し問題がでることがあります。

問題点とは?

手術後に本来閉じてあるべき子宮口が開きやすくなることがあります。
つまり早産になりやすいのです。

その頻度は報告によると早産率8〜23.7%で、1.7〜4.4倍増えると言われています。
妊娠週数での発生頻度は変わりありません(いつでも起こります。)

円錐切除術の方法として、コールドナイフ、レーザー、LEEPなどいくつかあります。
レーザー蒸散法は早産率が比較的低いと言われていますが、その他どの手技でも発生率は変わらないようです。

ただし、深く、くり抜いた場合は早産率は高くなります。
               (17mm以上の場合 40% vs 17mm未満 8.3%)

また妊娠期間中に早産傾向を早めに発見するために、経腟超音波検査で頚管長を測定しています。


切迫早産の場合、子宮口開きかけるので、この部分が短くなります。
円錐切除術後も同様で、妊娠16〜24週の時点で、25mm以下の場合(通常は40mmくらい)は早産になる可能性が高くなります。

早産予防の方法は?
残念ながらこれといった予防方法はありません。

子宮口が開いている頚管無力症という状態に対して、頚管縫縮術という方法があります。
要するに、緩んでいる子宮口を縛ってしまおうという発想です。


以前は、よくこの手術を円錐切除後の妊娠の方に試みていましたが、以下のような報告があります。

頚管縫縮術施行した人 30人 vs 施行しなかった人 39人
早産率はそれぞれ、23.3%、20.5%(p=0.78)と有意差はみられませんでした。

むしろ頚管縫縮術施行した人の方が、切迫早産となり長期入院を要した(60.7% vs 33.3% (p=0.06))ようです。

もちろんこの手術が有効となるケースもありますので、一概には言えませんが、少なくとも全例に頚管縫縮術を行う必要はないと最近では考えられています。

副院長 今野 秀洋

(参考文献)
1.関 典子ら;円錐切除後妊娠における円錐切除の高さと早産との関連性についての検討;産婦人科の実際;58;2191-2194;2009
2.楠木 総司ら;当院におけるcold knifeを用いた子宮頸部円錐切除術および術後妊娠の検討;日産婦千葉地会誌;4 ;28-31;2010
3.Kyrgiou M et al. ;Obstetric outcomes after conservative treatment for intraepithelial or early invasive cervical lesions: systematic review and meta-analysis.
;Lancet;11;489-498;2006
4. Masamoto H, et al.;Outcome of pregnancy after laser conization: implications for infection as a causal link with preterm birth.;J Obstet Gynaecol Res;34;838-842;2008
5. Berghella V,et al. ; Prior cone biopsy: prediction of preterm birth by cervical ultrasound. ;Am J Obstet Gynecol;191;1393-1397;2004
6. Zeisler H, et al.;Prophylactic cerclage in pregnancy. Effect in women with a history of conization.;J Reprod Med;42;390-392;1997
7. Albrechtsen S, et al.;Pregnancy outcome in women before and after cervical conisation: population based cohort study.;BMJ;337;a1343;2008
8. Bevis K, et al.;Cervical conization and the risk of preterm delivery.;Am J Obstet Gynecol. 205;19-27;2011
9.日本産婦人科学会 産婦人科診療ガイドラインー産科編201
4

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.07.16更新

GBSとは?
腟内、外陰部、肛門付近に常在する菌の一つで、妊婦さんの15〜40%でみられると言われています。
常在菌であるため、自覚症状はありませんが、安全な出産のために、妊娠経過中この菌には特に注意が必要です。

なぜ注意が必要なのか?
出産の際に、経産道的に赤ちゃんに感染する可能性があります。

感染症発生頻度は、予防方法を行わない場合、0.48人/1000出生(英国のデータ、早発型のみ)とのことです。
日本では0.1人/1000出生(早発型のみ、2000〜2004年)と言われています。

赤ちゃんに感染した場合は?
発生時期により、早発型(日齢0-6日)、遅発型(日齢7-89日)とわけています。
早発型が全体の83%であり、特に日齢0日発症がほとんどです。




早発型の場合:
敗血症、髄膜炎、肺炎など致死的な状態になります。日本のあるデータでは、死亡率が14.9%、後遺症を残す例が5.7%と比較的高いです。

遅発型の場合:
やはり敗血症、髄膜炎、肺炎、その他に関節炎、骨髄炎などがみられます。
死亡率が11.1%、後遺症を残す例が18.5%と早発型同様に高い頻度です。








我々ができることは、赤ちゃんへの感染をなるべく回避するようにすることです。
現在、日本では米国で行っている感染予防法を主に採用して行っております。

(1)腟周辺培養でGBSが検出された
(2)前児がGBS感染症であった
(3)尿培養でGBS陽性だった
(4)GBS保菌が不明だが、早産分娩、破水後18時間以上経過、38℃以上の発熱いずれかの場合

陣痛発来時もしくは破水時から分娩終了まで、抗生剤を点滴で定期的に投与します。

GBS感染と言われて心配だが、なぜ発見時に抗生剤を投与しないのか?
抗生剤投与により減少するが、常在菌のため、菌量0までにはならず、投与中止すると再び繁殖するようです。                  それ故、分娩進行時にのみ投与します。





この予防方法を採用した米国では、早発型が1.7人/1000出生から、0.32/1000出生まで減っています。

もちろんこの方法が100%の予防法とは言えませんが、少しでも赤ちゃんのGBS感染症が減るように、当院でもこの推奨されている方法に準拠して、GBS感染の予防に努めております。

副院長 今野 秀洋

(参考文献)
1.保科清ら;最近6年間のB群レンサ球菌感染症についてのアンケート調査 周産期・新生児学会誌;42;7-11; 2006
2.松原康策ら;早発型・遅発型B群溶連菌感染症の特徴と垂直感染予防方法の考察 日本小児科学誌;114;1681-1691; 2010 
3.三橋直樹ら;GBSの薬剤に対するtoleranceとその産科管理での問題点
日産婦感染症研究学術講演会記録集;16;12-13; 1999
4.久保田武美ら;B群溶血性連鎖球菌感染症 産婦人科の実際;50;563-570;2001
5.菊田香織ら;妊婦のGBSスクリーニング検査についての検討 周産期・新生児学会誌;49;244-247; 2013
5.Lewin EB, et al. ; Natural history of group B streptococcus colonization and its therapy during pregnancy. Am J Obstet Gynecol 139;512-515; 1981
6.Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. The prevention of early-onset neonatal Group B streptococcus disease. Green-top guideline no.36. 2nd. edition, 2012
7.Van Dyke MK et,al. ;Evaluation of Universal Antenatal Screening for Group B Streptococcus N Engl J Med.18;360:2626-36; 2009
8.Matsubara K,et al. ;Early-onset and late-onset group B streptococcal disease in Japan: a nationwide surveillance study, 2004-2010. ;Int J Infect Dis 17;e379-84; 2010
9.Lewin EB et,al. ;Natural history of group B streptococcus colonization and its therapy during pregnancy. Am J Obstet Gynecol. 1;139;512-515; 1981
11. Tim Colbourn et,al. ;An overview of the natural history of early onset group B streptococcal disease in the UK.  Early Human Development. 83;149-156; 2007
12.印出佑介,山口暁ら;B群レンサ球菌(GBS) 周産期医学 41, 235-244, 2011
13.日本産婦人科学会 産婦人科診療ガイドラインー産科編2014

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.06.23更新

前置胎盤とは、図のように胎盤が子宮口にかかっている状態のことです。

頻度は全妊娠のうち0.3〜0.5%にみられます。当院でも年に数人おり、その場合は高次施設にご紹介しております。

リスクファクターは?
既往前置胎盤、既往帝王切開、多胎妊娠、多産婦、高齢妊娠、不妊治療、流産後、子宮内手術後、喫煙歴などです。

どうしてハイリスク妊娠なのか?
胎盤の位置が低いと、何が問題となるのでしょうか?

(1)不正出血の原因となります。
妊娠後半になると、子宮の収縮が増えてきます。その収縮に伴い、(痛みが伴わない)不正出血することがあります。前置胎盤と診断された方の場合、おおよそ妊娠29週以降に不正出血が生じることがあり、そのまま早産とせざるを得ない場合が少なくないです。
以前、順天堂大学浦安病院での前置胎盤症例36例で検討しましたが、その1/3が出血が止まらず、緊急帝王切開となっておりました。

(2)分娩方法は帝王切開となります。
もし陣痛が始まった場合、子宮口が開くのに伴い、胎盤が赤ちゃんが出るより前に剥がれると考えれます。そのため、大量出血したり、あるいは胎盤から赤ちゃんへの酸素供給が途絶え、大変なことになります。そこで、陣痛が始まる前に、計画的に帝王切開とします。だいたい、少し早い妊娠35〜36週に帝王切開としているようです。

(3)帝王切開でも出血が多いです。
胎盤付着部位が子宮口に近ければ近いほど、分娩時の出血が多くなる傾向があります。
非常に似た病態で、図のような低置胎盤というものがありますが、この場合も前置胎盤と同様の対応が望ましいと考えられます。


前置胎盤症例とそれ以外の帝王切開症例で比較してみたところ、術中の出血量が多い傾向(1275g vs 700g, p=0.0001)がみられました。

輸血を必要とすることも多く(15〜80%)、時には4リットル以上の輸血を要する場合もあります。(ちなみに50kgの女性の血液総量はだいたい3.75リットルなので、血液を総入れ替えする量です。)

さらに子宮からの出血を止められず、子宮全摘をせざるを得ないケースも 3.5〜4.5%もみられます。

(4)癒着胎盤の合併があります。
前置胎盤の場合、一部が子宮と癒着している場合があります(1〜9.9%)。一部は剥離しているが、一部が癒着しているままだと、やはり出血が多くなる可能性があり、前述のように輸血や子宮全摘を要する場合があります。


「前置胎盤かも」と言われましたが?
前置胎盤が疑われても、その後変わることがあります。

妊娠初期に前置胎盤もしくは低置胎盤が疑われても、子宮が大きくなるのに伴い、後半になって付着部位が変わる場合があります。妊娠30週ぐらいに最終診断します。



前置胎盤と診断した場合は、施設によりますが、予め自己血貯血を1リットルくらい準備しておくこともあります。
もちろん、問題なく順調に経過することもありますが、比較的高頻度で、大量出血が起こり、緊急帝王切開での早産となる場合があり、時として、輸血や子宮全摘を要するわけですから、事前から色々と十分な準備が必要です。


ちなみに成育医療センターでお世話になった先生がお作りになった、わかりやすい漫画がありますので、こちらもご紹介させて頂きます。

前置胎盤(http://www.ncchd.go.jp/hospital/section/perinatal/images/zenchi.pdf
癒着胎盤(http://www.ncchd.go.jp/hospital/section/perinatal/images/yuchaku.pdf

佐野産婦人科医院 副院長 今野 秀洋



参考文献
1.Taylor VM, et al.:Increase risk of placenta Previa among of asian origin. Obstet Gynecol 1995;86:805-808
2. Oyelese Y, Smulian JC.:Placenta previa, placenta accrete, and Vasa previa.  Obstet Gynecol 2006;107:924-41
3. Bhide, et al.:Placental edge to internal os distance in the late third trimester and mode of delivery in placenta praevia. BJOG 2003;110:860-864
4. Vergani P, et al.:Placenta previa:distance to internal os and mode of delivery. Am J Obstet Gynecol 2009;201:227-229
5. Clark SL, et al. :Placenta previa/accreta and prior cesarean section. Obstet Gynecol. 1985;66:89-92
6. Grobman WA, et al.:Pregnancy outcomes for women with placenta previa in relation to the number of prior cesarean deliveries. Obstet Gynecol. 2007;110:1249-55.
7. Takayama. et al.:Risks associated with cesarean section in women with placenta previa. : J Obstet Gynaecol Res 1997;23:375-379
8. Zelop CM.et al.:Emergency peripartum hysterectomy. Am J Obstet Gynecol 1993;168:1443-1448
9. ClarkSL.et al.:Placenta previa/accreta and prior cesarean section. Obstet Gynecol 1985;66:89-92
10. 今野 秀洋, 田嶋 敦, 吉田 幸洋ら:自己血貯血・輸血を含む前置胎盤症例の管理法に関する検討 日本産婦人科学会 千葉地方部会誌 2010;3:102-

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.06.07更新

妊娠中に尖圭コンジローマが発症することがあります。

問題点は主に2つあります。
①妊娠中は薬物療法ができません。
 そのため、外科的方法を選択することになります。少し痛みを伴います。

②産道感染することがあります。
陣痛時に産道に病変があると、赤ちゃんに感染する場合があります。

赤ちゃんに感染すると、やがて若年性再発性呼吸乳頭腫症(juvenile-onset recurrent respiratory papillomatosis :JORRP)が 発症することがあります。
JORRPとは、小児の良性咽頭・喉頭腫瘍の中で、一番多い疾患です。
悪性ではないですが、場所や大きさによっては、気道が狭くなり、気管切開を要する場合があります。

その他、早産との関連を示唆する報告もあるようです。

分娩時に発症した際は?
以前は、帝王切開を勧められていました。その後色々な報告がでて、最近では帝王切開の絶対的適応でなく、ケースバイケースで対応するように変わってきました。

①帝王切開を勧める報告
Tsengtらが、経腟分娩での赤ちゃんへのパピローマウィルス感染率が51.4%に対して帝王切開での感染率が27.3%であったと報告している。

ただし、ここでの注意点は、あくまでもウィルス感染率であり、JORRPの発生率ではないことと帝王切開でも100%感染を防ぐ訳ではないというところです。

②どちらかと言うと帝王切開を積極的に勧めなくてもよいのではないかという報告
Cohenらの後方視的研究(現在行っている医療の有効性・安全性の評価を行う研究)によると、尖圭コンジローマが発症した際は(特に病変が大きいと)帝王切開で分娩となる傾向があるが、実は経腟分娩でも帝王切開でも出生時の予後(例えば、生まれて元気にすぐ泣くとか死亡率)は変わらないようです。

また、Silverbergらはデンマークの120万人の分娩統計を調べているが、妊娠中に尖圭コンジローマが認められた3033人の妊婦から生まれた新生児のうち21人(0.69%)にJORRPが発症したと報告しております。

経腟分娩であろうと帝王切開であろうと分娩様式の違いに感染率の差がないようです。

一方、妊娠中に尖圭コンジローマが認められなかった120万人の妊婦から生まれた新生児のうち36人(0.003%)にJORRPが発症しています。

つまり、肉眼的に病変が認められなくても、ウィルスを保因する妊婦が少しいるが、肉眼的に病変認められる場合の方が、JORRPの発生率が231倍と高いことがわかりました。


以上より、悩ましい時もあるのですが、個別対応することになります。
私見でありますが、妊娠中に尖圭コンジローマが認められたとしても、JORRPの発生頻度はとても高いわけではないので、分娩間際に「小さい」もしくは「減ってきている」病変ならば、経腟分娩でもよいのでないかと考えられますが、一方、帝王切開の方が赤ちゃんへの感染頻度を減らせるわけですから、「大きい」もしく「多い」病変があるときは帝王切開をどちらかというと勧めるのではないかなと思っております。

副院長 今野 秀洋


参考文献
1.Tseng CJ et.al. Perinatal transmission of human papillomavirus in infants: relationship between infection rate and mode of delivery. Obstet Gynecol. 1998 Jan;91(1):92-6.
2.Gomez LM et al. Placental infection with human papillomavirus is associated with spontaneous preterm delivery. Hum Reprod. 2008 Mar;23(3):709-15.
3.Cohen E et al. Perinatal outcomes in condyloma acuminata pregnancies. Arch Gynecol Obstet. 2011 Jun;283(6):1269-73.
4.Silverberg MJ et al. Condyloma in pregnancy is strongly predictive of juvenile-onset recurrent respiratory papillomatosis. Obstet Gynecol. 2003 Apr;101(4):645-52.
5.Hamouda T et al. Management of genital warts in pregnancy. Clin Exp Obstet Gynecol. 2012;39(2):242-4.
6.川名 敬;HPVとその疾患 モダンメディア 58巻 12号 2012

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.05.06更新

麻疹とは
最近、麻疹が流行しているようです。
麻疹とは、麻疹ウィルスよって引き起こされる感染であり、主に小児期に多い感染症です。
その感染力は、非常に強く、免疫がない方が感染するとおおよそ100%発症すると言われています。
感染すると、39℃以上の高熱が続き、口腔内に白い粟粒のようなKoplik斑が生じ、赤く発疹し、時に肺炎(約60/1000人)や脳炎(約1/1000人)を合併し重症化します。



妊娠中にかかるとどうなるの?
計算すると日本で1000人/年の麻疹に感染した妊婦がいることになるようです。

麻疹を発症した場合、重症化することが多いです。
文献によると6割が入院を要し(相対危険度 1.8)、26%が肺炎(同 2.6)となり、3%(同 6.4)が死亡しています。

胎児へも影響があります。
流産や早産を引き起こすと言われています。

別の文献によると、妊娠24週以前の感染すると流産もしくは死産する可能性が高いようです。
一方、妊娠25週以降の感染では、正期産となるが、生まれた時に麻疹を発症することがあるようです。


治療方法は?
特別な治療方法はなく、対症療法となります。


現在妊娠中ですが、私は大丈夫ですか?
一度かかると一生免疫が持続すると言われており、2歳以上の日本人の麻疹抗体陽性率はおおよそ8割から9割以上のようなので、多くの人はかからないとは思います。
しかしながら100%ではないので、人混みにでるときはマスクをするなどの注意が必要だと思います。

予防するにはワクチン接種をお勧めします。
(現在、1歳と小学生就学前の時点の2回で風疹との混合接種を行っております。)

ただし妊娠中には接種することができません。
妊娠を考えている方で、麻疹にかかったことがないもしくはワクチン接種を行っていない可能性がある方(特に昭和54年4月2日〜昭和62年10月1日生まれの方)は、ワクチンに対するアレルギーがなければ、あらかじめ接種することを勧めます。

副院長 今野 秀洋


参考文献
1.福岡県保健環境研究所年報 2011第38号,57-61
福岡県における麻疹ウイルス流行状況と住民の麻疹抗体保有状況調査について 
吉冨 秀亮 石橋 哲也 前田 詠里子 田上 四郎 世良 暢之
2.Obstet Gynecol. 1993 Nov;82(5):797-801.
Measles in pregnancy: a descriptive study of 58 cases.
Eberhart-Phillips JE1, Frederick PD, Baron RC, Mascola L.
3.J Infect. 2003 Jul;47(1):40-4.
Measles infection in pregnancy.
Chiba ME1, Saito M, Suzuki N, Honda Y, Yaegashi N.

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.04.14更新

妊娠を契機に受診したところ、子宮筋腫を指摘されることがあります。あるいは不妊の相談で受診の際に指摘されることもあります。

子宮筋腫とは、子宮にできる良性の平滑筋腫です。
全女性の約1/4にみられ、また、妊娠中の方では、2.7%〜10.7%ぐらいの頻度で子宮筋腫を認めます。

子宮筋腫を有する妊婦さんの多くは、問題なく経過しますが、妊娠経過中に(特に初期〜中期にかけて)増大することがあり、そうするといくつかの問題を起こすことがあります。

妊婦自身の症状
・痛み
大きさが5cm以上に増大すると、痛みのでる頻度は増えます。急激に増大することにより、虚血性変化やそれに伴う壊死が生じる為と言われています。

・血栓症
妊娠に伴い大きくなった子宮に増大した子宮筋腫によってさらに子宮の容積が増すことにより、子宮の後方を流れている血管を圧迫し、血液の流れが滞り、血管内に血栓ができることがあります。下肢静脈血栓に始まり、肺梗塞という重症な病態になる場合もあります。

妊娠経過に関わる問題
・流産
妊娠し、着床に至るものの、子宮筋腫が子宮ー胎盤の血流障害を引き起こし、流産する場合があります。繰り返す流産の7%くらいの原因ではないかと言われています。

・早産
同様に早産となる場合があります(オッズ比1.5)。特に5cm以上の大きさだったり、胎盤付着部位に一致した部位に子宮筋腫が存在したりすると頻度は増えるようです。

・子宮内胎児発育遅延
赤ちゃんが大きく育ちにくい場合があります(オッズ比1.4)。

・胎位異常
通常は30週前半頃より頭が下を向いてくるものですが、いわゆる逆子などの胎位異常が発生する頻度が増えます(オッズ比2.9)。

分娩に関わる問題
・微弱陣痛
子宮筋腫が子宮収縮力を弱める可能性があります。

・帝王切開率
前述した、胎位異常や微弱陣痛などにより、帝王切開となる頻度が増えます(オッズ比3.7)。

産後に起こりうる問題
・産後出血
無事に出産に至っても、子宮筋腫が子宮復古不全をおこし、出血量が多くなる傾向があります(オッズ比1.8)。


先にも述べたように、子宮筋腫を有する妊婦さんすべてが以上のことを起こす訳ではないのですが、子宮筋腫を有さない方と比べて、いくらかの妊娠に伴うリスクがあると考え、我々はいつも気をつけて拝見しております。

また、妊娠希望があるが、なかなか生産に至らず、子宮筋腫が原因の一つの可能性である方がいます。
そのような方に対し、適応があれば、妊娠前に手術(子宮筋腫核出術)を行う場合があります。
現在のところ、比較的大きくお腹を切開する従来法と腹腔鏡を用いた方法があります。
術後の妊娠率は、大体5割くらいとの報告がありましたが、いずれの方法を選択しても妊娠率は変わらないようです。
この場合は切除部位がしっかりと治るのを待つ為に、術後は半年の避妊が必要がとなることと、分娩方法が帝王切開となる場合が多くなります。

参考文献

1. Qidwai GI, Caughey AB, Jacoby AF. Obstetric outcomes in women with sonographically identified uterine leiomyomata. Obstet Gynecol 2006; 107:376.
2. Laughlin SK, Baird DD, Savitz DA, et al. Prevalence of uterine leiomyomas in the first trimester of pregnancy: an ultrasound-screening study. Obstet Gynecol 2009; 113:630.
3. Exacoustòs C, Rosati P. Ultrasound diagnosis of uterine myomas and complications in pregnancy. Obstet Gynecol 1993; 82:97.
4. De Carolis S, Fatigante G, Ferrazzani S, et al. Uterine myomectomy in pregnant women. Fetal Diagn Ther 2001; 16:116.
5. Klatsky PC, Tran ND, Caughey AB, Fujimoto VY. Fibroids and reproductive outcomes: a systematic literature review from conception to delivery. Am J Obstet Gynecol 2008; 198:357.
6. Lev-Toaff AS, Coleman BG, Arger PH, et al. Leiomyomas in pregnancy: sonographic study. Radiology 1987; 164:375.
7. Shavell VI, Thakur M, Sawant A, et al. Adverse obstetric outcomes associated with sonographically identified large uterine fibroids. Fertil Steril 2012; 97:107.
8. Ying Zhang and Ke Qin Hua Patients' Age, Myoma Size, Myoma Location, and Interval Between Myomectomy and Pregnancy May Influence the Pregnancy Rate
and Live Birth Rate After Myomectomy J Laparoendosc Adv Surg Tech A. 2014;24:2:95.






副院長 今野 秀洋

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.03.31更新

妊娠中に性器ヘルペスが発症した場合は?

初感染では約50%, 再発では0〜3%に新生児ヘルペスが発症すると言われています。
新生児ヘルペスの場合、抗ウィルス薬の投薬を行っても約30%が死亡し、生存しても重度の障害を残す可能性があります。
そこで、性器ヘルペスが発症した場合は妊婦への抗ウィルス薬の投薬を行い、罹病期間の短縮を行います。
抗ウィルス薬(アシクロビル)における胎児障害の報告はありません。

ちなみに母体感染の時期は
妊娠初期 30%
妊娠中期 30%
妊娠後期 40%

であり、どのタイミングでも起こりえます。


また、児への感染はほとんどが経産道感染であるので、分娩時期の児への感染を予防することが大事であります。

日本産婦人科学会のガイドラインに記載されていますが

①分娩時にヘルペス病変が外陰部にある
②初感染発症から一ヶ月以内に分娩となる可能性が高い
③再発または初発非初感染発症から、一週間以内に分娩となる可能性が高い

以上の場合は、児への感染の可能性があるので、帝王切開を勧められます

新生児ヘルペスについて

感染するタイミングは?
子宮内感染は1/250000分娩なので、ほとんどなく、産道からの感染が9割、産後感染が1割くらいです。

発症形式で(1)皮膚、眼、口限局型、(2)中枢神経型、(3)全身型3つのタイプに分けています。
特に(2),(3)では生存しても重度の障害を残す可能性が高いです。





妊娠中のヘルペス発症は重大な問題となります。
性器ヘルペス感染症(http://www.sanolc.com/blog/2014/03/post-25-781191.html)を妊娠中に疑ったときは、速やかにお伝えください。

副院長 今野 秀洋

投稿者: 佐野産婦人科医院

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