スタッフブログ

2014年6月23日 月曜日

ハイリスク妊娠の一つである前置胎盤について

前置胎盤とは、図のように胎盤が子宮口にかかっている状態のことです。

頻度は全妊娠のうち0.3〜0.5%にみられます。当院でも年に数人おり、その場合は高次施設にご紹介しております。

リスクファクターは?
既往前置胎盤、既往帝王切開、多胎妊娠、多産婦、高齢妊娠、不妊治療、流産後、子宮内手術後、喫煙歴などです。

どうしてハイリスク妊娠なのか?
胎盤の位置が低いと、何が問題となるのでしょうか?

(1)不正出血の原因となります。
妊娠後半になると、子宮の収縮が増えてきます。その収縮に伴い、(痛みが伴わない)不正出血することがあります。前置胎盤と診断された方の場合、おおよそ妊娠29週以降に不正出血が生じることがあり、そのまま早産とせざるを得ない場合が少なくないです。
以前、順天堂大学浦安病院での前置胎盤症例36例で検討しましたが、その1/3が出血が止まらず、緊急帝王切開となっておりました。

(2)分娩方法は帝王切開となります。
もし陣痛が始まった場合、子宮口が開くのに伴い、胎盤が赤ちゃんが出るより前に剥がれると考えれます。そのため、大量出血したり、あるいは胎盤から赤ちゃんへの酸素供給が途絶え、大変なことになります。そこで、陣痛が始まる前に、計画的に帝王切開とします。だいたい、少し早い妊娠35〜36週に帝王切開としているようです。

(3)帝王切開でも出血が多いです。
胎盤付着部位が子宮口に近ければ近いほど、分娩時の出血が多くなる傾向があります。
非常に似た病態で、図のような低置胎盤というものがありますが、この場合も前置胎盤と同様の対応が望ましいと考えられます。


前置胎盤症例とそれ以外の帝王切開症例で比較してみたところ、術中の出血量が多い傾向(1275g vs 700g, p=0.0001)がみられました。

輸血を必要とすることも多く(15〜80%)、時には4リットル以上の輸血を要する場合もあります。(ちなみに50kgの女性の血液総量はだいたい3.75リットルなので、血液を総入れ替えする量です。)

さらに子宮からの出血を止められず、子宮全摘をせざるを得ないケースも 3.5〜4.5%もみられます。

(4)癒着胎盤の合併があります。
前置胎盤の場合、一部が子宮と癒着している場合があります(1〜9.9%)。一部は剥離しているが、一部が癒着しているままだと、やはり出血が多くなる可能性があり、前述のように輸血や子宮全摘を要する場合があります。


「前置胎盤かも」と言われましたが?
前置胎盤が疑われても、その後変わることがあります。

妊娠初期に前置胎盤もしくは低置胎盤が疑われても、子宮が大きくなるのに伴い、後半になって付着部位が変わる場合があります。妊娠30週ぐらいに最終診断します。



前置胎盤と診断した場合は、施設によりますが、予め自己血貯血を1リットルくらい準備しておくこともあります。
もちろん、問題なく順調に経過することもありますが、比較的高頻度で、大量出血が起こり、緊急帝王切開での早産となる場合があり、時として、輸血や子宮全摘を要するわけですから、事前から色々と十分な準備が必要です。


ちなみに成育医療センターでお世話になった先生がお作りになった、わかりやすい漫画がありますので、こちらもご紹介させて頂きます。

前置胎盤(http://www.ncchd.go.jp/hospital/section/perinatal/images/zenchi.pdf
癒着胎盤(http://www.ncchd.go.jp/hospital/section/perinatal/images/yuchaku.pdf

佐野産婦人科医院 副院長 今野 秀洋



参考文献
1.Taylor VM, et al.:Increase risk of placenta Previa among of asian origin. Obstet Gynecol 1995;86:805-808
2. Oyelese Y, Smulian JC.:Placenta previa, placenta accrete, and Vasa previa.  Obstet Gynecol 2006;107:924-41
3. Bhide, et al.:Placental edge to internal os distance in the late third trimester and mode of delivery in placenta praevia. BJOG 2003;110:860-864
4. Vergani P, et al.:Placenta previa:distance to internal os and mode of delivery. Am J Obstet Gynecol 2009;201:227-229
5. Clark SL, et al. :Placenta previa/accreta and prior cesarean section. Obstet Gynecol. 1985;66:89-92
6. Grobman WA, et al.:Pregnancy outcomes for women with placenta previa in relation to the number of prior cesarean deliveries. Obstet Gynecol. 2007;110:1249-55.
7. Takayama. et al.:Risks associated with cesarean section in women with placenta previa. : J Obstet Gynaecol Res 1997;23:375-379
8. Zelop CM.et al.:Emergency peripartum hysterectomy. Am J Obstet Gynecol 1993;168:1443-1448
9. ClarkSL.et al.:Placenta previa/accreta and prior cesarean section. Obstet Gynecol 1985;66:89-92
10. 今野 秀洋, 田嶋 敦, 吉田 幸洋ら:自己血貯血・輸血を含む前置胎盤症例の管理法に関する検討 日本産婦人科学会 千葉地方部会誌 2010;3:102-

投稿者 佐野産婦人科医院

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