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院長ブログ
円錐切除術を受けた方の妊娠について
最近、子宮頚がんが増えています。特に20代、30代の発症が増えており、発症年齢のピークが39歳と比較的若いです。 若年層(20~40歳代)発症の場合は、がん克服の問題もありますが、進行がんであった場合、子宮全摘をします。そうすると今後妊娠することができないという問題点がでてきます。 若年者にて前がん病変ないし早期がんであった場合は、治療後にも妊娠が期待できるように、子宮頸部を図のように円錐状にくり抜いて、子宮を温存する手術(円錐切除術)を行います。 (早期発見の為に、子宮がん検診の受診をお勧めします。(http://www.sanolc.com/blog/blog/2013/10/) この治療で済む場合は、ほとんど方が治癒することができます。そして妊娠が可能です。 しかしながら妊娠をする観点から言うと、少し問題がでることがあります。問題点とは? 手術後に本来閉じてあるべき子宮口が開きやすくなることがあります。 つまり早産になりやすいのです。 その頻度は報告によると早産率8~23.7%で、1.7~4.4倍増えると言われています。 妊娠週数での発生頻度は変わりありません(いつでも起こります。) 円錐切除術の方法として、コールドナイフ、レーザー、LEEPなどいくつかあります。 レーザー蒸散法は早産率が比較的低いと言われていますが、その他どの手技でも発生率は変わらないようです。 ただし、深く、くり抜いた場合は早産率は高くなります。 (17mm以上の場合 40% vs 17mm未満 8.3%) また妊娠期間中に早産傾向を早めに発見するために、経腟超音波検査で頚管長を測定しています。 切迫早産の場合、子宮口開きかけるので、この部分が短くなります。 円錐切除術後も同様で、妊娠16~24週の時点で、25mm以下の場合(通常は40mmくらい)は早産になる可能性が高くなります。早産予防の方法は? 残念ながらこれといった予防方法はありません。 子宮口が開いている頚管無力症という状態に対して、頚管縫縮術という方法があります。 要するに、緩んでいる子宮口を縛ってしまおうという発想です。 以前は、よくこの手術を円錐切除後の妊娠の方に試みていましたが、以下のような報告があります。 頚管縫縮術施行した人 30人 vs 施行しなかった人 39人早産率はそれぞれ、23.3%、20.5%(p=0.78)と有意差はみられませんでした。むしろ頚管縫縮術施行した人の方が、切迫早産となり長期入院を要した(60.7% vs 33.3% (p=0.06))ようです。 もちろんこの手術が有効となるケースもありますので、一概には言えませんが、少なくとも全例に頚管縫縮術を行う必要はないと最近では考えられています。 副院長 今野 秀洋(参考文献) 1.関 典子ら;円錐切除後妊娠における円錐切除の高さと早産との関連性についての検討;産婦人科の実際;58;2191-2194;2009 2.楠木 総司ら;当院におけるcold knifeを用いた子宮頸部円錐切除術および術後妊娠の検討;日産婦千葉地会誌;4 ;28-31;2010 3.Kyrgiou M et al. ;Obstetric outcomes after conservative treatment for intraepithelial or early invasive cervical lesions: systematic review and meta-analysis. ;Lancet;11;489-498;2006 4. Masamoto H, et al.;Outcome of pregnancy after laser conization: implications for infection as a causal link with preterm birth.;J Obstet Gynaecol Res;34;838-842;2008 5. Berghella V,et al. ; Prior cone biopsy: prediction of preterm birth by cervical ultrasound. ;Am J Obstet Gynecol;191;1393-1397;2004 6. Zeisler H, et al.;Prophylactic cerclage in pregnancy. Effect in women with a history of conization.;J Reprod Med;42;390-392;1997 7. Albrechtsen S, et al.;Pregnancy outcome in women before and after cervical conisation: population based cohort study.;BMJ;337;a1343;2008 8. Bevis K, et al.;Cervical conization and the risk of preterm delivery.;Am J Obstet Gynecol. 205;19-27;2011 9.日本産婦人科学会 産婦人科診療ガイドラインー産科編2014