ブログ
院長ブログ
妊娠中ですが、わき腹から背中にかけて間欠的に痛みがあります。
先日、尿路結石をおこした妊婦さんがいました。
尿路結石とは、腎臓から尿道までの尿路に結石が生じる疾患です。
尿路結石の頻度は?尿路結石は、特に壮年男性と閉経後女性に高頻度にみられます。妊娠中の頻度は、700人から3000人に1人と言われています。
いつの時期が多いですか?妊娠中期から後期に多くみられます。
どのような症状がありますか?①痛み9割ぐらいの方が、わき腹から背中にかけて間欠的にまたは持続的に強い痛みを感じます。時に下腹部痛もあります。痛みに伴い、嘔吐する場合もあります。
②血尿(約9割)
③発熱④膿尿(約4割)感染を伴うと高熱が出て、濁った尿がでます。
私、妊娠前に尿路結石に罹ったことがないのですが?妊娠中に尿路結石になった方は、尿路結石の既往がない方がほとんどです。
妊娠中の尿路結石の原因は、①妊娠によって尿中カルシウム濃度が上昇し、②尿中クエン酸濃度やマグネシウム濃度が低下することと、③だんだんと大きくなる子宮が尿管の圧迫することにより、尿の停滞が生じることと言われています。
尿路結石が疑われる場合は?
①尿検査で血尿や膿尿の有無を確認する②超音波検査で結石の有無や、結石による尿路拡張の有無を確認する
場合により、レントゲンも行うこともあります。
どういう治療を行いますか?75−85%のケースで、結石が自然排出するので、排出することを期待します。排出を促すように、水分をとることを促したり、補液することもあります。
また痛みがひどい場合は、妊婦さんが使用できる痛み止めを処方します。
しかしながら、症状がひどい場合や、感染を併発している場合、中々改善しない場合などは、産科と泌尿器科がある大きな病院での対応となります。
泌尿器科での治療は、尿管ステント留置や経皮的腎瘻増設、尿管鏡による処置などがあります。
稲城市立病院での妊婦の尿路結石をまとめた報告がありました。
2000年1月1日から2009年5月31日までの分娩総数1039件のうち14名の妊婦が尿路結石で入院となりました。
初産婦が8名、経産婦が6名でした。
年齢は23-41歳、平均が32歳。
妊娠初期が2名、妊娠中期が9名、後期が3名でした。
入院期間が2-12日で平均6.4日でした。
妊娠中の治療は、保存的治療が13名、外科的治療が1名でした。分娩後に外科的治療を必要とした方が3名いました。
まとめると時々、妊娠中に尿路結石を発症する方がいます。わき腹から背中にかけて痛みが生じる場合は、尿路結石の可能性があります。母子ともに状況を確認する必要がありますので、かかりつけの先生にご相談して下さい。
お問い合わせ
院長 今野 秀洋
(参考文献)
1. Stothers L,et al.:Renal colic in pregnancy.:J Urol.:48(5):1383-7:19922. Butler EL, et al.: Symptomatic nephrolithiasis complicating pregnancy.:Obstet Gynecol. :96(5 Pt 1):753-6: 20003. Hendricks SK, et al.:An algorithm for diagnosis and therapy of management and complications of urolithiasis during pregnancy.:Surg Gynecol Obstet. :172(1):49-54:19914.:松崎 章二ら:妊婦の尿路結石:日本尿路結石症学会誌 :8:2:86-91:20115.尿路結石症診療ガイドライン 第2版 2013年版 日本泌尿器科学会、日本泌尿器内視鏡学会、日本尿路結石症学会編