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院長ブログ
もっとも頻度多いサイトメガロウイルスの感染にご注意を。
トキソプラズマ、ヘルペス、風疹など、妊娠中に注意しなければいけない感染症がいくつかあります。 その中のひとつとしてサイトメガロウイルスがあります。サイトメガロウイルスとは ヘルペスウィルスの仲間です。主に幼少時に感染します。 感染した場合の特徴的な症状はなく、不顕性感染の形をとります。つまり気づかず感染していたという状態になります。 妊娠中に母体感染すると、胎児に感染することがあります。 実は、先天性感染症の中でもっとも頻度多いのがサイトメガロウイルス感染症です。毎年およそ出生児の3000人以上が感染して、1000人程度に障害を発生させます。 データによると、1990年頃には、成人のサイトメガロウイルスの抗体保有率は、90%ぐらいでしたが、最近は70%くらいに減少しており、つまり妊婦さんの3割の方が感染する可能性があり(あくまでも可能性です)、注意が必要です。 しかも、抗体を保有していても再感染してするケースもあります。 また、妊娠の6ヶ月前の感染でも、妊娠後に胎内感染したという報告もあります。どういう経路で感染するの? 接触感染します。 先に述べた通り、多くは幼少時に感染します。 2歳未満の子供が、いったん感染すると、平均2年間、唾液や尿中にウイルスを排出続けます。 しかも多くが不顕性感染なので、気づかぬうちに感染し、ウイルスを排出しているかもしれません。 そうすると、幼少期のお子さんがいらっしゃる方や幼稚園・保育園の先生をなさっている方は、特に注意が必要かと考えられます。胎内感染した場合、胎児にみられる特徴は? 超音波検査でみられる徴候があります。 低出生体重児、脳室拡大、脳内石灰化、腹水、心嚢液貯留、胎盤肥厚などです。 しかし、これらはサイトメガロウイルス感染特有の所見ではなく、他の感染や疾患でもみられます。また、超音波検査では特に所見がないこともあります。胎内感染した場合、出生児ににみられる症状や障害は? 図のような障害がでることがあります。 難聴は、少し大きくなってからわかる場合もあります。妊娠中サイトメガロウイルス感染がわかったとき対処する方法は? 残念ながらありません。 妊婦や胎児に抗ウィルス薬やガンマグロブリンの投与を行った報告はありますが、現時点では確立された治療とは言えません。お腹の中の赤ちゃんが感染しないようにするにはどうすればよいの? 予防することが大事だと思います。 以下のことに注意して生活していくとよいと思います。 上の子とのスキンシップも大事です。 しかしながら、これから生まれてくるお子さんのためにもしっかり予防法を行うのがよいと思います。 先天性サイトメガロウイルス感染症に関するNHKのブログをみつけました(http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/600/124738.html)。 まとめると サイトメガロウイルスはいわばどこにでもいるウイルスです。むしろ約7割の方が感染しているウイルスであります。 不顕性感染(症状がないので気づかないうちに感染)します。 唾液や尿に触れた手を介して感染します。 くしゃみや咳で(例えば、インフルエンザウイルスのように)感染をすることありません。予防はきちんとした手洗いです。(感染者の隔離はあまり意味がないと思います。 ) これから生まれてくる子どものためにも、特に幼少期のお子さんがいる方は、サイトメガロウイルス感染を避けるために、先に述べた予防法を心がけましょう。 院長 今野 秀洋(参考文献)1. Stagno S, et al.Herpesvirus infectios of pregnancy part1. Cytomegalovirus and Epstein-Barr virus infection;N Engl J Med 313;1270-1274;1985 2. Adler SP, et al. Recent advance in the prevention and treatment of congenital cytomegalovirus infections;Seminars in perinatology;10-18;2007 3. La Torre R, et al.; Placental enlargement in women with primary maternal cytomegalovirus infection is associated with fetal and neonatal disease ;Clin Infect Dis ;43: 994-1000;2006 4. Kimberlin DW, et al.;Effect of ganciclovir therapy on hearing in symptomatic congenital cytomegalovirus disease involving the central nervous system: a randomized, controlled trial;J Pediatr 143 ;16-25;2003 5.