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猛暑が、常位胎盤早期剥離の発症を早める可能性があります
暑い日が続きますね。
暑さと妊娠のリスクを検証した研究が先日発表されました。
この研究では、日本全国11地域で約10年間調査した妊婦さん6947人の情報を元に調べています。
報告によると、暑さ指数が95パーセンタイルを超えた日の翌日に常位胎盤早期剥離のリスクが上がる(risk比1.23 95%信頼区間:1.10-1.39)ことが明らかになりました。
※暑さ指数とは、気温、湿度、輻射熱の3つの要素を取り入れた、熱中症の危険度を判断するための指標です。
※常位胎盤早期剥離とは、何らかの原因で、妊娠中期以降にお腹の中に赤ちゃんがいる状態で胎盤が剥がれはじめてしまうことがあります。発症の確率は妊娠全体の約0.4~1.5%と低いのですが、発症すると母子の生命を危険にさらすことになります。
一方、その翌々日には常位胎盤早期剥離発症のリスクが有意に低下しており(risk比0.84 95%信頼区間:1.11-1.39)、1週間全体で見ると、そのリスクは相殺されており、もともと数日後に発症するはずだったケースが猛暑によって発症時期が前倒しになった可能性があります。

また、妊娠高血圧症候群の妊婦や胎児発育が不良の妊婦の場合、さらに猛暑の影響が強くみられることがわかりました(risk比1.57 信頼区間:1.31-1.88 /risk比1.47 信頼区間:1.26-1.73)。
まとめると
猛暑が、常位胎盤早期剥離の発症を早める可能性があります。
常位胎盤早期剥離は初期対応が早ければ母子の命を守れる可能性が高まります。
「妊婦さんは非常に暑い日の直後は注意が必要である」という情報が世の中に広まればと思います。
院長 今野 秀洋
( 参考文献)
Shuhei Terada et al.:Heat Stress and Placental Abruption: A Space-Time Stratified Case-Crossover Study :BJOG:2025(Online ahead of print)