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院長ブログ
思春期のダイエットが卵巣機能を停止させる。
先日、月経不順を訴えて受診した中高校生の方々がいました。 二人とも以前は月経順調だったのですが、一人は高校に入学後に運動系の部活に入り、体重が急激に減少(-3kg/6ヶ月)し、もう一人の方はダイエットにチャレンジし、身長が伸びているのも関わらず体重が減少(-4kg/1年)していました。 若い女性の方々の間で、ダイエットは広まっています。 「太ったから」とか「理想的な体型に憧れて」とか「服を美しく着たい」などの理由でダイエットを経験する人は、中学生で30数%、高校生で40数%、大学生で50数%と言われています。 日本では、雑誌等の広告や特集でダイエットを勧める内容が過剰にあるような気がします。 確かに太り過ぎは健康とは言えません。肥満の方のダイエットは有効だと思います。 しかしながら、元々太っていない方が、特に、若い女性がやせようとすることが問題となります。私は「やせ」ではありません。とおっしゃる若い女性の方多いです。 しかし本当にそうでしょうか? 「やせ」の評価方法として、「Body Mass Index(BMI)」と「体脂肪率」があります。 ①BMI BMIは以下の方法で簡単に計算できます。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)BMI19以下が「やせ」に該当します。 「やせ」てる方は、実は結構いらっしゃると思います。現在、日本で「やせてる」に該当する方は20%くらいもいます。 ②体脂肪率 体重の中の「脂肪の割合」を指します。 女性では、14歳~17歳は標準が18-35%、18~39歳は標準が21-34%となります。14歳~17歳の場合、体脂肪率17%以下で、18~39歳の場合、体脂肪率20%以下でやせていることになります。どうしてやせてはいけないのか? 女性がやせすぎることにより、体の不調をきたすことがあります。(1)不調その1:月経不順 体重及び体脂肪と卵巣機能には密接な関係があります。 BMI19ぐらいから、卵巣機能障害が生じ月経不順となる方がいます。さらにやせてBMI16ぐらいになると無月経になります。 また、体脂肪において、体脂肪率15%を下回ると卵巣機能障害が生じ、10%以下では卵巣機能が停止します。 やせて、月経不順になったということは、女性ホルモンが十分に出ていなかったり、排卵しずらい状態になったということになります。(2)不調その2:骨が折れやすくなる 女性ホルモンが、骨の形成に関わっています。骨では13-15歳が人生最大の骨量獲得の時期です。そして骨量の増加は20歳でとまります。 つまり思春期にダイエットし月経不順になると、その後には骨形成するチャンスを取り返すことができず、まるでお年寄りのように骨折しやすくなります。(3)不調その3:妊娠しづらくなる 先の説明のように、やせすぎることにより、月経不順、無月経を来し、排卵しずらくなるので、妊娠のタイミングを取ることが難しかったり、不妊治療が必要となることがあります。(4)不調その4:やせた方の妊娠は赤ちゃんに影響がでる 無月経をきたすような「やせ」では、そもそも妊娠が難しいのですが、 仮に妊娠しても、妊娠前の低栄養状態が胎児に悪い影響を与え、その子を将来の成人病予備軍にしてしまうと言われています。 つまり次の世代にまで影響がおよぶとういうことです。 産婦人科医からみれば、若い女性が流行りで、やせすぎることにメリットはないと考えています。 諸外国ではこのことをとても重要な問題ではないか、と考えています。 イギリスでは思春期やせ症の専門家が、ロンドンの15歳女子の15人に1人が思春期やせ症と報告し、英国政府に国をあげて、思春期やせ症に対する取り組みを喚起し、それを受けて英国の厚生省は、ファッション業界やテレビ局にやせすぎモデルや女優を登場させることを自粛するように強く勧告しました。 またフランスでも、やせ過ぎモデルを規制する法律が公布されました。 (YOMIURI ONLINEより http://www.yomiuri.co.jp/komachi/collection/cnews/20160316-OYT8T50042.html#csidx3168cf59acdf0018083e8c2d713563e )体重減少後に月経不順や無月経になってしまった場合、どうすればよいのでしょうか? ①まずは体重を増やす、元に戻すことです。目標はBMIでいうと20ぐらいだと考えています。 ②次に、必要に応じてホルモン補充療法を行います。 実際はみなさんが思っているほど、太っていないのです。 まずは、自分が肥満であるかかどうか正確に評価し、本当にダイエットが必要あるようであれば行ってください。 しかし、本当は太っていないのに、なんとなく友達がダイエットしているから私もダイエットするというのは、ご自身のこれからの人生を大きく変えてしまう可能性があります。 安易なダイエットはオススメしません。やせすぎにならないようにしてください。 院長 今野 秀洋(参考文献) 1. 思春期やせ症の診断と治療ガイド;文光堂;2005 2. 中村幸雄ら;やせ(減食)のデメリット;産科と婦人科;4(29);477-481;1996 3. 岡野浩哉;低エストロゲン性無月経と薬物選択;骨粗鬆症治療;11(2);45-51;2012 4. 半藤保ら;ダイエットによる性機能障害;新潟青陵大学紀要;6;1-8;2006 5. 福岡秀興ら;10代の過度のダイエットに警告を;母性衛生;45(1);3-7;2004 6. 丸山史ら;摂食障害患者と無月経 BMIを指標とした予後調査より;思春期学;18(2);177-181;2000 7. 甲村 弘子;【オフィス ギネコロジー 女性のプライマリ・ケア】 思春期 肥満とやせ;臨床婦人科産科 ;66(5);20-24;2012 8. 徳村光昭ら;思春期やせ症の長期予後;慶應保健研究 ;29(1);19-23;2011 9. 岡垣竜吾;【月経異常・不妊症の診断力を磨く】 月経異常 体重減少性無月経および神経性食欲不振症;臨床婦人科産科 ;69(5);394-398;2015 10. Theintz G, et al.;Longitudinal monitoring of bone mass accumulation in healthy adolescents: evidence for a marked reduction after 16 years of age at the levels of lumbar spine and femoral neck in female subjects;J Clin Endocrinol Metab. ;75(4):1060-1065;1992