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温水洗浄便座の習慣的使用はもしかしたら細菌性腟症と関連がある可能性があり、 注意が必要かもしれません
お尻に優しい温水洗浄便座は、今や日本中のどこのトイレでみかけるようになり、多くの方々が使用されています。
先述した細菌性腟症と温水洗浄便座の習慣的使用との関係についての研究論文があるので、今回はその内容についてお話したいと思います。
通常は腟内に常在する乳酸桿菌が、脱落した腟粘膜上皮のグリコーゲンを乳酸に変え、腟内をpH4.5以下の酸性に保つことで、雑菌の侵入や増殖を防いでいます。「細菌性腟症」とは、なんらかの理由で正常細菌叢が乱れた状態に陥った状態をいいます。そうするとオリモノがいつもと異なったり、においが変わったりします。
また細菌が上行して子宮内に感染すると、子宮内膜炎や卵管炎さらに上行して骨盤腹膜炎となり、発熱や腹痛を引き起こすこともあり注意が必要です。
荻野先生が19歳から40歳の計268人で腟内分泌物を調べた報告によると、「習慣的に温水洗浄便座の使用している方は、細菌性腟症になりやすい傾向がある」とのこと。
(1)温水洗浄便座使用と腟内の正常細菌叢の有無の関係について
習慣的に温水洗浄便座の使用している人のほうが、本来は腟内の雑菌の侵入や増殖を防いでいる乳酸桿菌が著しく減少あるいは消失していました。
(2)温水洗浄便座使用と腟内で見られた細菌との関係
腟内分泌物に大腸菌などの腸内細菌による汚染が認めた症例を調べたところ、92%が温水洗浄便座を習慣的に使用していました。
以上より、温水洗浄便座を習慣的な使用が、常在する乳酸桿菌を減少させあるいは消失させ、肛門周囲の雑菌を腟内で繁殖させている可能性があることがわかりました。
細菌性腟症の原因がこれだけではなく他にも色々ありますが、もし細菌性腟症を繰り返していて、よく考えてみたら温水洗浄便座を習慣的に使用していますというのであれば、しばらく温水洗浄便座の使用を避けてみても良いかもしれません。
院長 今野 秀洋
(参考文献)1. Ogino M, et al: Habitual use of warm-water cleaning toilets is related to the aggravation of vaginal microflora.: J Obstet Gynaecol Res: 36: 5: 1071-4: 2010 2. 荻野 満春ら:習慣的温水洗浄便座使用と細菌性腟症 切迫早産・早産発症の潜在的リスク要因となる可能性:関東連合産科婦人科学会誌:52:4:799-803:2015