スタッフブログ

2015.12.20更新

通院中の妊婦さんから、「腰が痛いです。」という悩みを時々お聞きします。







妊娠すると、お腹も大きくなり腰や骨盤に負担がかかってきます。
また、元々肩こりがひどく、以前から湿布や塗り薬を使用してる方もいっらっしゃるかと思います。

妊娠中の飲み薬は避けた方が良いと考えていますが、湿布などの外皮用剤は大丈夫だと思っている方、多いのではないかと思います。



しかし、実はこの外皮用剤も注意が必要です。
皮膚を通して薬の成分が体内に入り、胎盤を通過して、胎内の赤ちゃんに届きます。

過去の事例で、妊娠後期に湿布薬を用いたら、赤ちゃんの心臓近くの大事な血管(動脈管)を収縮させたケースがいくつかあります。

これは湿布薬に含まれている成分が影響したのではないかと考えらます。

湿布薬には、いわゆる飲み薬の「痛み止め」、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と分類される薬の成分が入っています。
NSAIDsには、アスピリン、アセチルサリチル酸、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウムなどがあります。

1日に湿布薬をたった2枚使用していただけなのに、動脈管を収縮を引き起こした例もあります。

市販薬だから大丈夫とか、以前から使っていたから問題ないというわけでもないようなので、肩こりや腰痛で困っている場合、特に妊娠後期は、注意が必要だと思います。

また、以前ホームページのblogで妊娠中の腰痛に関することを書いているので(http://www.sanolc.com/blog/2015/03/post-59-1118639.html)、参考にして頂けたらと思います。

是非、外来でご相談して下さい。


院長 今野 秀洋

(参考文献)
1.高山 幹子;【非ステロイド消炎・鎮痛剤の正しい使い方】妊婦と授乳婦(解説/特集);ENTONI ;23;49-57;2003
2. 中島 康雄ら;妊婦・授乳婦への薬剤投与ガイド オキサプロジン,インドメタシン;薬事新報 ;2084;25-28;1999.11
3. 医薬品・医療機器等安全性情報 No.312;ケトプロフェン(外皮用剤)の妊娠中における使用について;2014年4月;
http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/312_1.pdf

投稿者: 佐野産婦人科医院

2015.10.25更新

日本人の約2割が肥満症と言われています。
肥満症は、高血圧症・糖尿病などの全身に影響を与える病気の土台になります。



肥満症の評価の一つとして、Body Mass Index(BMI)があります。

BMIは以下の簡単な計算式でわかります。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

BMIが25以上が肥満症です。

おおよその目安として   身長 155cmの方は、60kg以上
                160cmの方は、64kg以上
                                          165cmの方は、68kg以上   

の方々が肥満となります。


肥満症は、メタボリックシンドロームだけではなく、妊娠に関してもいくつかの悪い影響を与えることがあるので、それについてお話したいと思います。

(1)妊娠前にでる影響(不妊

最近、不妊が重大な話題の一つになっておりますが、肥満と不妊症との間に関係があります。
標準的な体型の方と比較して、肥満の方は妊娠しずらいという報告があります。
軽度肥満(この場合BMI 24〜31)の方の不妊のrelative riskは、1.3(95%CI 1.2-1.6)、高度肥満(BMI 32以上)で2.7(95%CI 2.0-3.7)。
この理由として、月経不順や排卵障害が考えられます。

(2)妊娠中にでる影響

流産
24738人による統計によると、軽度肥満(この場合BMI 25〜29)で11.8%、高度肥満(BMI 28以上)で13.6%の流産率でありました(標準的な体型の方は10.7%)。
肥満になればなるほど流産率が高くなります。
又、流産再発率も肥満の方のほうが高いです(OR 1.71 95%CI 1.05)。

妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは、妊娠中にお母さんが高血糖になることです。それによりお腹の中の赤ちゃんも高血糖になりことにより、周産期に様々な合併症が起こり得ます。
BMIが1増加すると妊娠糖尿病発症率が0.92%あがります。
またBMI 30以上の場合、OR 3.76 (95%CI 3.31-4.28)となります。

妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群とは、妊娠を契機に血圧が上昇し、時として母子ともに生命の危機に陥る可能性がある合併症の一つです。
約1400万人のデータによると、BMIが5-7上昇すれば、妊娠高血圧症候群の発生頻度が2倍になります。





早産
100万人以上のデータから、早産のリスクが少し高くなることがわかりました(relative risk 1.30 95%CI 1.23-1.37)。

さらに
胎児奇形
いくらかでありますが、二分脊椎(OR 2.24 95%CI 1.86-2.69)、心臓血管奇形(OR 1.30 95%CI 1.12-1.51)、口唇口蓋裂(OR 1.20 95%CI 1.03-1.40)などの胎児奇形の発生率も増えるようです。

子宮内胎児死亡
これも若干ですが増えます(OR 1.24 95%CI 1.18-1.30)。


(3)出産時にでる影響
陣痛促進剤の使用
陣痛促進剤が必要となるケースが多く、その割合は初産婦で44.6%、経産婦で33.6%というデータがあります。
微弱陣痛と先述の妊娠高血圧症候群などがその使用理由となります。


帝王切開
肥満の程度が上がるにつれて、(緊急の)帝王切開率が増加することがわかっています。

標準的なBMIを基準として
BMI  25-30: OR 1.53 (95%CI 1.48-1.58)
        30-35: OR 2.26 (95%CI 2.04-2.51)
        >35   : OR 3.38(95%CI 2.49-4.57)        となります。


肩甲難産
日本では4000g以上の出産は1%前後ですが、分娩の時点で、巨大児となりやすく、頭はなんとかでても、肩が引っかかってでられず、大変なお産になることがあります。

産後出血
イギリスの約29万人のデータによると

BMI  25-30 : OR 1.16(95%CI 1.12-1.21)
           >30 : OR 1.39(95%CI 1.32-1.46)

             と産後の出血も多くなる傾向があります。


つまり、危ない妊娠・分娩になりやすく、大変な管理が必要ということになります。

(4)出産後の影響(母乳

母乳がでずらくなる傾向があります。

以上のように、妊娠にとっても肥満であることは、あまりよいことではないと思いわれます(今回は話しませんが、痩せすぎもまた問題となります。)。

そこで、これから妊娠を考えている考えている方で、肥満傾向のある方は、その準備として少し体重を減らすことをお勧めします。
そのためには、「食事」と「運動」だと思います。

肥満症治療ガイドラインによると、目標は、体重の5-10%を減量することとして

食事は、1日あたり500-1000kcal減らすようにする。
運動は、30分以上、少なくとも週3回すること。

一週間あたり400g減量するぐらいのペースであれば、無理なく、体を壊すことなくできるのではないかと思います。



また最近では、BMI35以上の肥満症の方に対する手術などもあるようです。

東邦大学佐倉病院 消化器外科
http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/sakura/gastro_surgery/bariatric/index.html
この病院の消化器外科では、肥満としっかり向き合って治療をしているようです。

肥満症は、妊娠だけではなく、メタボリックシンドロームとの関連もあり、しっかりと対応しておかないと、もしかしたら人生を大きく変えてしまうことかもしれません。

将来のことも考えて、ご自身の体と向き合うときっとよいのではないかと思っています。

院長 今野秀洋


(参考文献)
1. The Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine; Obesity and reproduction: an educational bulletin ; Fertility and Sterility;90;Suppl 3; S21-29;2008
2. Boots C, et al.;Does obesity increase the risk of miscarriage in spontaneous conception: a systematic review. ; Semin Reprod Med. ; 29(6):507-13.; 2011
3.Torloni MR, et al.; Prepregnancy BMI and the risk of gestational diabetes: a systematic review of the literature with meta-analysis.; Obes Rev.;10(2);194-203;2009
4. O'Brien TE,et al. ;Maternal body mass index and the risk of preeclampsia: a systematic overview.; Epidemiology.;14(3):368-74; 2003
5. McDonald SD, et al.; Overweight and obesity in mothers and risk of preterm birth and low birth weight infants: systematic review and meta- analyses;  BMJ; 20;341:c3428.;2010
6. Calandra C,et al. ; Maternal obesity in pregnancy.; Obstet Gynecol;57(1):8-12;1981
7. Robinson HE, et al.; Maternal outcomes in pregnancies complicated by obesity.; Obstet Gynecol.;106(6):1357-64;2005
8. Poobalan AS,et al. ; Obesity as an independent risk factor for elective and emergency caesarean delivery in nulliparous women--systematic review and meta-analysis of cohort studies.; Obes Rev.;10(1):28-35;2009
9. Sebire NJ,et al. ; Maternal obesity and pregnancy outcome: a study of 287,213 pregnancies in London.; Int J Obes Relat Metab Disord.;25(8):1175-82;2011
10. Aune D, et al; Maternal body mass index and the risk of fetal death, stillbirth, and infant death: a systematic review and meta-analysis.; JAMA; 16;311(15):1536-46.; 2014
11. Stothard KJ,et al; Maternal overweight and obesity and the risk of congenital anomalies: a systematic review and meta-analysis.; JAMA.;11;301(6):636-50;2009
12. Ip S,et al.; A summary of the Agency for Healthcare Research and Quality's evidence report on breastfeeding in developed countries.; Breastfeed Med;4 Suppl 1:S17-30;2009
13. Ehrenberg HM,et al. ;Prevalence of maternal obesity in an urban center.; Am J Obstet Gynecol;187(5):1189-93;2002
14. 平井 千裕ら;【最新肥満症学-基礎・臨床研究の最前線-】 ライフステージ別肥満症の病態と対処法肥満妊婦の管理;日本臨床 最新肥満症学;72増刊4;566-573;2014
15. 日本肥満学会編;肥満症ガイドラインダイジェスト版;2007

投稿者: 佐野産婦人科医院

2015.07.05更新

胆石とは?
肝臓で胆汁が作られ、胆嚢で濃縮されます。
胆汁が、十二指腸で膵液と一緒になることで、胆汁が膵液の持つ消化酵素を活発にして、脂肪やタンパク質を分解して腸から吸収しやすくします。

この胆汁の成分が、胆汁が通る道(胆嚢と胆管)で、何らかの原因で固まってしまったものが胆石です。

日本人において約1割の方が、胆石を保有していると言われています。
これは、食生活の欧米化と高齢化に関連しており、胆石症は増加傾向にあります。

実は、妊娠中に胆石症は生じやすいのです。
妊娠中の胆石発生率は、2%という報告があります。

妊娠中は、胆嚢の蠕動運動が減る傾向があり、胆汁が長期にわたり残留することで胆泥が発生します。胆泥は胆石になったり、胆道に移動して胆管に詰まったりすることがあります。
また、コレステロール値が増加するので、胆石(コレステロール結石)が生じやすいのです。


妊娠中に胆石発症した場合の症状は?
胆石発症だけでは特に症状がないことも多いですが、急性胆嚢炎を併発した場合は、右上腹部からみぞおちの持続する痛み(10%)が生じたり、発熱したり黄疸が生じる場合もあります。
むしろ悪心・嘔吐症状が32%と多いです。




妊娠中に胆石が起こりやすいリスクは?
多産婦、年齢が高い方、肥満の方です。
また、妊娠前に肥満だった方が、妊娠中に体重減少すると生じやすかったという報告もあります。


食事を気をつければ大丈夫かと思ったのですが、調べてみると、低脂肪食等に気をつけても、発症頻度は変わらなさそうです。

また、産後の胆石症に関しては、母乳をあげているお母さんの方が、発症リスクは減るという報告もあります。

治療方法について
原則、安静・禁食・補液です。
痛みが強い場合は、痛み止めを使用することもあります。
胆嚢炎を併発した場合は、抗生剤を投与します。

しかし、改善しない場合や繰り返す場合は、妊娠中でも手術となります。
妊娠中に手術を要するのは、10〜25%と言われています。
ケースによりますが、腹腔鏡用いて手術を行うこともあります。

まとめると
妊娠中に胆石症は生じやすいのです。
多産婦、年齢が高い方、太っている方は特にリスクがあります。

悪心・嘔吐や持続する右上腹部からみぞおちの痛みを生じた場合は、胆石、急性胆嚢炎の可能性がありますので、速やかに受診をお勧めします。

院長 今野 秀洋

(参考文献)
1. Mathew LK, et al.;Dietary fat and protein intake are not associated with incident biliary sludge and stones during pregnancy.; JPEN J Parenter Enteral Nutr; 39;124-8;2015
2. Maringhini A, et al.; Biliary sludge and gallstones in pregnancy: incidence, risk factors, and natural history; Ann Intern Med. 15;119;116-20;1993
3. Galyani Moghaddam T, et al.; The incidence and outcome of pregnancy-related biliary sludge/stones and potential risk factors; Arch Iran Med. ;16:12-6.2013
4. Liu B,et al.:Childbearing, breastfeeding, other reproductive factors and the subsequent risk of hospitalization for gallbladder disease; Int J Epidemiol;38;312-8; 2009
5. 竹越公美ら;妊娠中に症候性胆石を発症した2例;産科と婦人科;79;372-375;2012
6. 千々岩一男;急性胆嚢炎・急性胆管炎の病態・診断・治療;2010年度後期日本消化器外科学会教育集会
7. 友野絢子ら;妊娠20秀妊婦の胆石胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した1例;日本腹部救急医学会雑誌;30;835-838;2010
8.大谷泰雄ら;妊娠の胆嚢、胆管結石の治療方針;内科;95;305-307;2005

投稿者: 佐野産婦人科医院

2015.06.11更新

中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)は、2012年に新しく確認されたコロナウイルスの感染症です。

主に、中東地域で報告されていますが、最近、お隣の韓国で院内感染を中心とし、患者数が増加しているというニュースが入ってきました。

現在、妊娠されている方も心配だと思います。
妊婦さんに向けて、日本産婦人科医会から声明が早速出ておりました(http://www.jaog.or.jp/news/mers0610.pdf)。

現在 MERS による妊娠への影響は明らかではありませんが、妊娠5ヶ月で死産をきたした報告例がありました。


MERSの症状は、熱を伴う急性の呼吸器障害であり、その後急速に呼吸器不全、そして腎不全を呈するようです。

厚労省のホームページによると、ヒトコブラクダが、MERSウイルスの保有動物であるとされており、感染源の一つとして疑われています。(ただし日本国内のヒトコブラクダを調査した限りではMERSコロナウイルスを保有している個体は確認されていません)。

現在のところ、MERSに対するワクチンや特異的な治療法はありません。患者の症状に応じた対症療法のみになります。

対処方法として、飛沫感染・接触感染が主体と考えられているので、例えばインフルエンザなどを予防するのと同様な注意、つまり手洗い・マスクが基本となります。

詳しくは、以下のホームページを参照して下さい。

院長 今野 秀洋

(参考文献)
1. Payne DC, et al. Stillbirth during infection with Middle East respiratory syndrome coronavirus.;J Infect Dis.; 209; 1870-1872; 2014
2. 厚生労働省HP:中東呼吸器症候群(MERS)について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mers.html
3. 国立感染研究所HP:中東呼吸器症候群(MERS)に関する項目
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/alphabet/mers/2186-idsc/2686-mers.html

投稿者: 佐野産婦人科医院

2015.06.03更新

りんご病とは?
伝染性紅斑のことです。ヒトパルボウィルスB19の感染による感染症です。

4〜5年毎に流行すると言われておりますが、昨年秋頃から本邦では感染者が増えています。


ヒトパルボウィルスB19とは?
1975年に英国の血液センターで、供血者の血液中の肝炎ウィルスのスクリーニング中に、肝炎ウィルスとは異なる新たなウィルスが発見されました。この5年後に、このウィルスと伝染性紅斑関係が判明しました。
パルボウイルスは自然界に存在するウイルスの中でも最も小さい部類に入り、ラテン語で「小さい」を意味する「 parvus 」から命名されています。
B19とは実はその血液センターでのロット番号でした。それを名前につけています。つまりヒトパルボウイルスはB19しかありません。B18とかA12など他の番号のついたパルボウィルスはいません。

ちなみにイヌパルボウィルスというウィルスもいますが、パルボウイルスは特定の種の動物と関連性があるので、自身と関連性のある種の動物にしか感染しません。つまり、イヌパルボウィルスはヒトには感染しません。


ヒトパルボウィルスB19に感染した場合の症状は?
小児期に感染することが多いですが、感染したことがない方は、年齢や性別に関係なく感染する可能性があります。
はっきりした症状がない不顕性感染もあり、弱いと誤解されていますが、患者と接触すれば容易に感染します。

典型的な経過では、感染後約7〜10日の潜伏期間を経て軽度の発熱、関節痛(四肢や腰の軽度痛みなど)といったインフルエンザのような症状や、成人では皮膚のかゆみを自覚します。
そのあと約一週間後に発疹を認めます。発疹は、小児ではりんご病と言われるように特徴的でありますが、成人では40%程度であり、不定形なものが多いです。



抗体保有率は?
日本人のヒトパルボウィルスB19に対する抗体保有率は、55〜64%です。
感染歴がある人は、再感染しないと言われています。


妊娠中に感染したらどうなるの?
理論上、日本人成人でヒトパルボウィルスB19に感染する可能性がある方は約3〜4割にいます。
しかし、実際妊娠中感染するのは、1.5%(流行時期で13%程度)と言われています。
そのうち35%以下に経胎盤感染します。

妊娠初期に感染すると流産する可能性あります(自然流産のうち、2.4%がヒトパルボウィルスB19感染が原因という報告がありました。)
流産を免れても胎児水腫(4〜12%)を生じたり、子宮内胎児死亡(5〜10%)をきたすことがあります。
胎児奇形との関連はあまり言われていません。

胎児水腫とは何ですか?
腹水や胸水の貯留や皮下浮腫などを生じることを言います。
つまり、赤ちゃんが全身"むくむ"状態になることです。






胎児水腫は、ヒトパルボウィルスB19が①胎児赤血球に感染し、破壊することによる貧血、②心臓に感染し、心筋炎を生ずること、③肝臓に感染し、肝障害を引き起こすことにより生じます。

胎児水腫発症時期は、平均妊娠21週(妊娠16週1日~妊娠23週6日)です。
お母さんが感染してから胎児水腫が発生するまで、約2ヶ月(14〜90日)かかります。
つまり時間がたってから判明します。

お腹の中の赤ちゃんに感染した場合の治療は?
自然経過で済む場合もあります。2-3割程度と言われています。
重度の貧血の場合は、胎児輸血をする場合もあります。

胎児輸血に関して、日本胎児治療グループのホームページがあります(http://fetusjapan.jp/method/method-99)。

予後は?
ヒトパルボウィルスB19感染し胎児水腫を生じて、その後、程度は様々ですが精神発達遅滞が生じる可能性が少し(11〜21%)あるようです。


対策は?
残念ながら予防接種はありません。

ヒトパルボウィルスB19の感染力がもっとも強いのは紅斑出現時ではなく、その1週間以上前のウイルス血症の時期であり、つまり紅斑が出る前に既に他者へ感染している可能性があり、実際上感染対策はむずかしいと思われます。

お腹の中の赤ちゃんに関しては、注意深く、超音波検査を行っていき、変化がないか確認ししていきます。
ご心配であれば、お母さんのウィルスの抗体の有無を調べることもできます。
(急性期にみられる抗体は約2ヶ月間は高めになります。)

東京都健康安全研究センターから配布しているパンフレット(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/fifth-disease/hitokuchi-joho.pdf)もあります。

咳やくしゃみなどによって感染するので、手洗いやマスク着用が大切だと思います。
また周囲で患者発生がみられる場合、妊娠中の方は、できるだけ患者との接触を避けるよう注意してください。

院長 今野 秀洋

(参考文献)
1.布上董;母子感染の現状と予防 パルボウィルスB19;Neonatl Care ;8秋増刊;
118-123;1995
2. 布上董;パルボウィルスB19と母子感染;小児内科;27;1448-1452;1995;
3. 布上董;出世前診断と胎児新生児管理の実際 先天感染 5)パルボウィルス;
NEW MOOK 小児科;8,177-181;1995
4.布上董;伝染性紅斑(パルボウィルスB19感染症);総合臨床;52増刊;198-203;2003
5.布上董;パルボウィルスB19感染症(伝染性紅斑);小児科診療;68;11;2228-2233;2005
6.布上董;パルボウィルスB19胎児感染症 10年間の検索;臨床とウイルス;26;129-135;1998
7.松永泰子;伝染性紅斑とヒトパルボウィルスB19;臨床とウイルス;23;99-102;1995
8.永井洋子;当科で 2 年間に経験した成人ヒトパルボウイルス B19 感染症 15 症例の検討
;感染症学雑誌;83;45-51;2009.01
9. Dijkmans, et.al:Parvovirus B19 in pregnancy: prenatal diagnosis
and management of fetal complications;Prenat diag;95-101;24;2012
10. Lassen J, et al. ;Parvovirus B19 infection in the first trimester of pregnancy and risk of fetal loss: a population-based case-control study;Am J Epidemiol;176;803-807;2012
11. Giorgio E,et al.;Parvovirus B19 during pregnancy: a review.; J Prenat Med;4;63-66;2010
12. de Jong EP, et al.; Parvovirus B19 infection in pregnancy: new insights and management.;Prenat Diagn; 31; 419-425;2011
13.De Jong EP,et al.;Intrauterine transfusion for parvovirus B19 infection: long-term neurodevelopmental outcome.;Am J Obstet Gynecol;206;204.e1-5;2012
14. Lassen J,et al.;Parvovirus B19 infection in pregnancy and subsequent morbidity and mortality in offspring;Int J Epidemiol;42;1070-1076;2013
15. Lamont RF, et al.; Parvovirus B19 infection in human pregnancy; BJOG; 118;175-186;2011
16. Nagel HT,et al.;Long-term outcome after fetal transfusion for hydrops associated with parvovirus B19 infection;Obstet Gynecol;109;42-47;2007

投稿者: 佐野産婦人科医院

2015.05.13更新

トキソプラズマヘルペス風疹など、妊娠中に注意しなければいけない感染症がいくつかあります。
その中のひとつとしてサイトメガロウイルスがあります。

サイトメガロウイルスとは
ヘルペスウィルスの仲間です。主に幼少時に感染します。
感染した場合の特徴的な症状はなく、不顕性感染の形をとります。つまり気づかず感染していたという状態になります。

妊娠中に母体感染すると、胎児に感染することがあります。
実は、先天性感染症の中でもっとも頻度多いのがサイトメガロウイルス感染症です。
毎年およそ出生児の3000人以上が感染して、1000人程度に障害を発生させます。

データによると、1990年頃には、成人のサイトメガロウイルスの抗体保有率は、90%ぐらいでしたが、最近は70%くらいに減少しており、つまり妊婦さんの3割の方が感染する可能性があり(あくまでも可能性です)、注意が必要です。

しかも、抗体を保有していても再感染してするケースもあります。



また、妊娠の6ヶ月前の感染でも、妊娠後に胎内感染したという報告もあります。

どういう経路で感染するの?
接触感染します。
先に述べた通り、多くは幼少時に感染します。
2歳未満の子供が、いったん感染すると、平均2年間、唾液や尿中にウイルスを排出続けます。

しかも多くが不顕性感染なので、気づかぬうちに感染し、ウイルスを排出しているかもしれません。

そうすると、幼少期のお子さんがいらっしゃる方や幼稚園・保育園の先生をなさっている方は、特に注意が必要かと考えられます。

胎内感染した場合、胎児にみられる特徴は?
超音波検査でみられる徴候があります。
低出生体重児、脳室拡大、脳内石灰化、腹水、心嚢液貯留、胎盤肥厚などです。
しかし、これらはサイトメガロウイルス感染特有の所見ではなく、他の感染や疾患でもみられます。また、超音波検査では特に所見がないこともあります。

胎内感染した場合、出生児ににみられる症状や障害は?
図のような障害がでることがあります。


難聴は、少し大きくなってからわかる場合もあります。




妊娠中サイトメガロウイルス感染がわかったとき対処する方法は?
残念ながらありません。
妊婦や胎児に抗ウィルス薬やガンマグロブリンの投与を行った報告はありますが、現時点では確立された治療とは言えません。

お腹の中の赤ちゃんが感染しないようにするにはどうすればよいの?
予防することが大事だと思います。

以下のことに注意して生活していくとよいと思います。



上の子とのスキンシップも大事です。
しかしながら、これから生まれてくるお子さんのためにもしっかり予防法を行うのがよいと思います。

先天性サイトメガロウイルス感染症に関するNHKのブログをみつけました(http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/600/124738.html)。

                                  
まとめると
サイトメガロウイルスはいわばどこにでもいるウイルスです。むしろ約7割の方が感染しているウイルスであります。
不顕性感染(症状がないので気づかないうちに感染)します。                
唾液や尿に触れた手を介して感染します。
くしゃみや咳で(例えば、インフルエンザウイルスのように)感染をすることありません。
予防はきちんとした手洗いです。(感染者の隔離はあまり意味がないと思います。 )

これから生まれてくる子どものためにも、特に幼少期のお子さんがいる方は、サイトメガロウイルス感染を避けるために、先に述べた予防法を心がけましょう。 



院長 今野 秀洋

(参考文献)
1. Stagno S, et al.Herpesvirus infectios of pregnancy part1. Cytomegalovirus and Epstein-Barr virus infection;N Engl J Med 313;1270-1274;1985
2. Adler SP, et al. Recent advance in the prevention and treatment of congenital cytomegalovirus infections;Seminars in perinatology;10-18;2007         
3. La Torre R, et al.; Placental enlargement in women with primary maternal cytomegalovirus infection is associated with fetal and neonatal disease ;Clin Infect Dis ;43: 994-1000;2006
4. Kimberlin DW, et al.;Effect of ganciclovir therapy on hearing in
symptomatic congenital cytomegalovirus disease involving the central nervous system: a randomized, controlled trial;J Pediatr 143 ;16-25;2003
5.

投稿者: 佐野産婦人科医院

2015.03.28更新

外来で、「腰が痛いです」とか「足の付け根あたりが痛いです。」と訴える方が多いです。
妊娠に関連した腰痛や骨盤痛はよくみられる症状です。

妊婦さんの約半数にみられると言われています
(約1割の方は腰痛と骨盤痛の症状があります)。
しかも、そのうち約2割が産後数年間も痛みが続き悩まされているようです。


妊娠中の腰痛の原因は、妊娠子宮の拡大と腰部への負担で起こると考えられています。従って姿勢の改善や運動方法による腹部や背部の筋力強化が有効です。

一方、骨盤痛は骨盤部の筋骨格の問題で、骨盤部の結合部が妊娠経過に伴い拡大して動きが増えることであると考えられています。
この場合は、骨盤の動きを抑制する骨盤ベルトの使用や骨盤を支持する筋肉の機能強化目的の運動が良いです。



いくつかの文献があります。
①81人の妊娠中及び産後3週間以内の腰痛のある方に対して、マッサージやストレッチなどのみのコントロール群とエクササイズを加えた群にわけて調べたところ、エクササイズ群の方が、1年後の痛みの強さや生活レベルの改善がみられた。
②212人の妊娠17〜22週の腰痛のある方を2群にわけて経過観察群と週三回の60分のエクササイズを行った群に分けたところ、エクササイズ介入群の方が脊椎の柔軟性が改善し、有意差をもって腰痛が軽減した方が多かった。
③妊娠18週以前の方で腰痛もしくは骨盤痛がある407人を、経過観察群とトレーニングプログラムでの指導群とトレーニングプログラムでの指導+個別指導群で比較したところ、介入した2群で痛みに関連した問題や病休が減った。特に個別指導した群が産後8週間の時点で痛みがより減っていた。また骨盤ベルトを装着した人の82%がいくらか骨盤痛が軽減した。
④244人の妊婦を経過観察群と週一回の水中エクササイズ介入群とにわけた。介入群では、腰痛が減少し病休をとる人が少なくなった。特に妊娠後半になるにつれて両群間に差が出ていた。

どの程度のエクササイズがよいのか?
妊娠中はあまり激しい運動は勧めらません。
無理がなく、いわゆる体幹をきたえるような運動がよいのではないかと思われます。
妊婦さん向けのビクスやヨガやスイムがよいのではないでしょうか。

もちろん、腰椎椎間板ヘルニアなどがもともとある方や、切迫早産と診断されている方には運動は勧められませんので、主治医に一度確認をして下さい。

まとめると
妊娠中の腰痛や骨盤痛で困ってる人は多く、これは産後も続く可能性があります。
その改善方法として、ホットパックの使用やマッサージやストレッチもありますが、比較的積極的な手段として、妊婦さん向けの骨盤ベルトを使用や妊婦さん向けのエクササイズが有効ではないかと考えております。


佐野産婦人科医院院長 今野 秀洋

(参考文献)
1. 梶原 由布ら;妊娠に伴う腰背部から骨盤周囲の疼痛の実態調査:健康科学: 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻紀要 :7巻:29-35:2011
2. 安藤 布紀子ら;妊娠に関連した腰痛と骨盤痛への介入方法における国外文献の検討:甲南女子大学研究紀要:6:77-83:2012
3. Stuge B et,al;The efficacy of a treatment program focusing on specific stabilizing exercises for pelvic girdle pain after pregnancy: a two-year follow-up of a randomized clinical trial.:Spine:15;29:E197-203: 2004
4. Kihlstrand M et,al;Water-gymnastics reduced the intensity of back/low back pain in pregnant women.:Acta Obstet Gynecol Scand. :78(3):180-5:1999
5. Ostgaard HC et,al;Reduction of back and posterior pelvic pain in pregnancy.:Spine :15;19(8):894-900:1994
6. Garshasbi A et,al.:The effect of exercise on the intensity of low back pain in pregnant women.:Int J Gynaecol Obstet.:88(3):271-5:2005

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.11.28更新

「上の子が手足口病にかかりましたが、妊娠中の私は大丈夫ですか?」
というご質問を受けました。
上のお子さんのことも心配ですが、お腹の子のことも当然心配だと思います。
ご質問にお答えしたいと思います。

手足口病とは?
6月から9月に多い、いわゆる夏かぜの一つですが、年を越える流行もあります。



国立感染症研究所のデータによると、2011,2013年は大流行しましたが、今年は例年程度の流行のようです。ここ最近の感染数も多くはありませんが、0ではないようです。








主な原因ウィルスは、コクサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71、稀にコクサッキーウイルスA10であり、複数のウィルスが関与しています。
ちなみに、このコクサッキーウイルスA群の感染による疾患でヘルパンギーナという病気があります。


発症年齢ですが、6ヶ月から5歳以下に多く(ほとんどが2歳以下)、大人は少ないです。


症状は?
その名の通り、手・足・口に症状がでます。

①皮疹がでます。
手背、手掌、足背、足底に1〜10mm大の紅色の丘疹(ぶつぶつ)や水疱、膿疹が特徴的です。


Mayo Clinicのサイトに写真があります。
http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hand-foot-and-mouth-disease/multimedia/hand-foot-and-mouth-disease-on-the-hand/img-20006147
http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hand-foot-and-mouth-disease/multimedia/hand-foot-and-mouth-disease-on-the-foot/img-20006637

②口内炎ができます。
ほほの内側の粘膜や舌にできます。
痛くて食事を摂るのが難しいこともあります。

③発熱することがあります。
約3割の方に38度以下ですが、発熱を認めます。

④合併症
その他、髄膜炎や脳炎、あるいは心原性ショックなど重篤な合併症を引き起こす場合があります。


妊娠中の方が、感染した場合どうなりますか?
報告例が非常に少ないです。
これは、大人が手足口病に感染することが少ないので、報告するほどの重篤な状態になった方が少ないからではないかと推測されます。

その数少ない報告によると、子宮内胎児死亡や流産の報告例が数例のみあります。
胎児奇形の報告はありません。

また、妊婦さんが手足口病による髄膜炎を起こしたのではないかという報告例が一例ありました。

治療方法は?
治療薬や予防薬はありません。
補液などの対処療法のみとなります。


まとめると
妊娠中に手足口病を感染することは、多くなさそうであります。
もし感染した場合は、対処療法を行い、慎重に経過観察を行うことで対応できるのではないかと思われます。

副院長 今野 秀洋

(参考文献)
1. Ogilvie MM, et, al.; Spontaneous abortion after hand-foot-and-mouth disease caused  by Coxsackie virus A16.;Br Med J. ;6;281:1527-81980
2. Archibald E, et al.; Coxsackievirus type A16 infection in a neonate. Arch Dis Child. ;
    54:649;1979
3. Chow KC, et al. ;Congenital enterovirus 71 infection: a case study with virology and 
   immunohistochemistry.; Clin Infect Dis. ;31:509-12;2000
4. Zhu FC, et al.;Retrospective study of the incidence of HFMD and seroepidemiology of
  antibodies against EV71 and CoxA16 in prenatal women and their infants.;PLoS One. ; 
  7(5):e37206;2012
5.佐藤絢子ら;妊娠中に無菌性髄膜炎を発症した一例;仙台市立病院医誌;33;21-24;2013
6. 塩見正司;手足口病の疫学, 診断, 治療そして感染対策;INFECTION CONTROL ;22 ;11:
   85-89; 2013

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.11.12更新

そろそろインフルエンザが流行する季節となってきました。
当院では、妊婦さんに10月よりインフルエンザワクチン接種を開始しております。

ではなぜ、妊娠中の方に、インフルエンザワクチンを勧めるのでしょうか?
これにはいくつかの理由があります。

(お母さんにとってのメリット)

過去の調査では、妊娠中にインフルエンザに感染すると重症化しやすいことがわかりました。
心肺機能が悪化し、入院する相対的リスクは、産後の方と比較して、多いと4.67倍高くなります。



表に示すように、出産に近づくにつれて相対的リスクは上がります。
これは、出産の準備として循環血液量が増加するため(妊娠末期で、妊娠していない時から約45%くらい増量します)、もともと心臓や肺に負担がかかった状態となり、それにインフルエンザ感染がさらなる負担になるかではないかと考えられます。

また、340人の妊婦を調査した別の調査では、インフルエンザワクチンを接種することにより、呼吸障害が36%も減少することがわかりました。


(赤ちゃんにとってのメリット)

生後6ヶ月未満の赤ちゃんにはインフルエンザワクチンを接種することができません。赤ちゃんが感染することを防ぐには、まずお母さんがかからないようにすることが大事です(これは一緒に住む家族も同じだと思います。)。

また、妊娠中にインフルエンザワクチンを接種すると、お母さんの体に抗体が産生されますが、それが胎盤を通過して、胎児に移行することがわかっております。
つまり、妊娠中にインフルエンザワクチンを接種すると、生まれた赤ちゃんはインフルエンザにかかりにくくなると言えます。生後6ヶ月までに63%の感染を減らせるとのデータがあります。




別の調査でも赤ちゃんの血液中には、おおよそ移行抗体は半年くらいは存在することがわかっています。


以上より、特にワクチンに対するアレルギーがない妊娠中の方にはインフルエンザワクチンの接種をお勧めします。日本だけではなく、アメリカのガイドラインでも推奨されています。


(インフルエンザワクチンの接種の時期は?)

インフルエンザワクチンによる、妊娠への影響はないと思われますので、妊娠している場合、すべての週数で接種ができます。

ワクチンの接種から抗体ができるまで約2週間くらいかかります。
約半年の効果期間はあるようなので、接種の時期はまさに「今」だと思います。

当院では妊婦さん向けに、防腐剤の入っていないワクチンを用意しております。

副院長 今野 秀洋




(参考文献)
Madhi SA, et al. ;Influenza vaccination of pregnant women and protection of their infants.;N Engl J Med. ;2014; 4;371(10):918-31. 
Zaman K,et al. ; Effectiveness of maternal influenza immunization in mothers and infants.;N Engl J Med. ;2008;9;359(15):1555-64.
3.  Neuzil KM, et al.; Impact of influenza on acute cardiopulmonary hospitalizations in  
     pregnant women. ;1998 Dec 1;148(11):1094-102.
4. 二井 立恵ら;妊婦におけるインフルエンザワクチンの免疫原性・安全性;小児科;   
 2012;53;4;497-503
5. 二井 立恵ら;ワクチン歴による妊婦のインフルエンザ赤血球凝集抑制抗体の保有状況と児へ
   の抗体移行に関する検討;小児科臨床;2010;63;11;2329-2336
6. 日本産婦人科学会 産婦人科診療ガイドラインー産科編2014

投稿者: 佐野産婦人科医院

2014.10.22更新

トキソプラズマとは?
ネコを終宿主として、ヒトや家畜を中間宿主とする寄生虫です。

ヒトへの経路は2つあります。
①ネコの糞便に排出された、トキソプラズマのオーシストが、手やハエ・ゴキブリを介して食品に運ばれ、経口的に侵入する。
②ブタ、ヤギなどの加熱不十分な肉を摂取して侵入する。






感染した場合の症状は?
不顕性感染が多いですが、以下のような症状がみられることがあります。

①リンパ節腫脹(約7%)
②全身倦怠感
③発熱
④頭痛

健康な方であれば、重症化せずに自然治癒します。

採血で抗体価を調べればわかります。
感染から、おおよそ2週間で抗体価が上昇します。

しかしながら妊娠中にお母さんが感染すると、赤ちゃんに移行する場合があり注意が必要です。

子宮内感染した場合は?
お母さんが感染してからおおよそ数週間から数ヶ月で赤ちゃんに移行する場合があります。
この場合は定期的に超音波検査で確認していきます。
超音波検査上、赤ちゃんへの感染が疑われるような特徴的な所見が見られた場合は、精密検査を行い、お腹の中にいるときから治療を開始します。
日本では年間おおよそ10人の先天性トキソプラズマ感染症が発生しているようです。(海外ではもっと多いです。)






妊娠中の赤ちゃんへの感染率は週数によって異なり、妊娠後期になればなるほど高率に起こります。
しかし、妊娠初期に感染した場合は胎内死亡や流産を起こしやすく、生存したとしても重症例となります。後期の感染では無症状のこともあります。
特に妊娠24週から34週あたりの感染が、先天性トキソプラズマ感染症として後遺症を残す可能性があると思われます。


生まれてきた赤ちゃんの起こる症状は?
以前の論文で、未治療であった156人で調査したところ

死亡率           12% 
精神発達障害 93%
てんかん   70%
麻痺     70%
視力障害   60%
       
だったそうです。


一方、妊娠中に治療できた153人の先天性トキソプラズマ感染症の方の平均54ヶ月フォローアップできた調査では

死亡率 0.6%
眼の症状(網脈絡膜炎) 21.5%
水頭症 1.3% 

とのことでした。



先天性トキソプラズマ感染症を予防するには?
妊娠初期に抗体価を調べます。
抗体を持っていない方は約9割いるようです(ある調査では、抗体を持っている方は、東京近郊で7%、兵庫で6%、南九州で15%くらいでした。)

抗体を持っていない方は、以下のように注意して下さい。

①野菜や果物はよく洗って食べる。
②食肉は加熱(66℃以上)して、もしくは冷凍して(-12℃以下、24時間)食べる。
③調理器具をよく洗浄する。
④ガーデニングなど土などを触る時は、手袋をする。
⑤ネコと接触に注意する(糞便の処理をなるべく避ける)。  
                        (産科ガイドライン一部改変)


最近の事情では、どちらかというとネコとの接触より食べ物が問題となるようです。


もし妊娠前にトキソプラズマに感染してしまったら?
少なくとも3ヶ月から6ヶ月は妊娠を控えることをお勧めします。


トキソプラズマ感染症はお母さんが気をつけることで、後悔を避けることができるかもしれない病気です。
これから生まれてくる子供の為に、気をつけてあげてほしいと考えております。

副院長 今野 秀洋

(参考文献)
星野 達二ら;当院で2009~2011年に測定されたトキソプラズマ抗体検査とトキソプラズマ感染症例について; 産婦人科の実際;2014;63(4) ;569-576
2. 佐藤 孝洋ら【性感染症と母子感染-最新の診断と管理】 母子感染 最新の管理法 トキソプラ
 ズマ;臨床婦人科産科;2013;67(1); 93-98
3. 村林 督夫ら;【小児の治療指針】 感染症 先天性トキソプラズマ症;小児科診療;2014;77(増刊 );139-140
4. 仲村 将光ら;【母子感染up to date】 トキソプラズマ感染症;産婦人科の実際;2013;62(11) ;1443-1446 
5. 小島俊行ら;胎児・新 生児医療−'02年のトピックス 妊婦のトキソプラズマIgM抗体陽性と  
 出生児への感染. ;産婦人科の世界;2003;55(1); 73-83
6. Foulon, W, et al. ;Treatment of toxoplasmosis during pregnancy
 ;Am J Obstet Gynecol ;1999 ;180(2 Pt 1);410-5
7. Cook AJC, et.al.;Sources of toxoplasma infection in pregnant women:
 European multicentre case-control study. European Research Network on  
 Congenital Toxoplasmosis.;BMJ. 2000 ;15;321(7254)1;42-7
8. Gay-Andrieu , et al. ;Fetal toxoplasmosis and negative amniocentesis:
 necessity of an ultrasound follow-up.Prenat Diagn.; 2003 ;23(7);558-60
9. Berrébi A, et al.;Long-term outcome of children with congenital toxoplasmosis. ;Am J Obstet Gynecol.;2010 ;203(6);552.e1-6
10. 小島俊行ら;トキソプラズマの母子感染の診断・予防に関する研究. 周産期学シンポジウムNo.18;2000;9-19
11. ACOG practice bulletin. American College of Obstetrics and Gynecologists.
; Perinatal viral and parasitic infections. Number 20, September 2000. (Replaces educational bulletin number 177, February 1993).;Int J Gynaecol Obstet. 2002 Jan;76(1):95-107
12. 矢野明彦;先天性トキソプラズマ症 矢野明彦編 日本におけるトキソプラズマ症, 福岡;九州大学出版会;2007 ;25-67
13. Dunn D,et al.;Mother-to-child transmission of toxoplasmosis: risk estimates for clinical counselling.;Lancet. 1999 May 29;353:1829-1833
14. 丸山有子;妊婦のトキソプラズマ感染;周産期診療指針 2010 産科編;40(増刊);264-267
15. 日本産婦人科学会 産婦人科診療ガイドラインー産科編2014




投稿者: 佐野産婦人科医院

前へ 前へ